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刀剣短歌俳句備忘録-2022

順不同 ネプリ初出を含む(殆ど)全てのまとめ

短歌

愛された記憶をとおく片づけて天罰かくあれかしと瞬く
愛された記憶をとおく片づけて死ぬには理由が足りないのです
日々なんて何も大したことはなく昨日の夜の冷や飯の味
たましいはイスカリオテのユダであり償い方を忘れたくない

明石国行

よく揺れる私鉄のやわらかめの座面 何を吐き出しても許されそう
吊革に手首まるごと落されてブラックホールで溺れられたら
音割れの発車ベル もう置いてくよ 金切り声 ないはずのトラウマ
夕景に鋏入りて蜃気楼 巡視ヘリのするどさは針
皺のないモデルルームのカーテンがあこがれであり自画像である
SFのまばゆいはなしを冷静な自己投影をもって読了
飴玉が継ぎ目のところで割れるかを試した 継ぎ目が見つからなかった
朝飯を食べているかは知らないが味噌汁の具でも思い出して死ね
海のレプリカには惹きつけられなくて色々なところが痛くなる
還る先に水だけがあり心拍も置いて泳ぐ夢をみる 今でも

山姥切長義

平坦な坂の果てでなら救われていいらしいから崖から飛ぶよ
遮つて居ぬことにして謳ふのの何がそんなにたいせつだらう
冷凍のハッシュポテトをぼろぼろにしてしまい食えずじまい火葬場
あれこれを考えながら赤信号の無機質に憧れている
かみさまのかみさまがいるなら僕を歪んだ××なんて呼んでくれるな

一文字則宗

緑青に毒がないこと知っており騙されるのを待ってすらいる
メリーゴーランドの白馬を撫でたよと追い出された遊園地の話
モノクロの世界の隅で咳をしてごまかしながら生きてゆく春
真似事を半分信じているうちに空中浮遊だってできたから
追い焚きの温度はいつも同じとかやっぱりぜんぶ僕のエゴだね

南海太郎朝尊

海鳴りを海鳴りだね、とだけ云うので怖がらずにいていいのだと知る
薄紙の包みをひらく気もなくて もう満足したんだよ 断崖
鈍色は何も憶えていないからこの食器だけしまって帰ろう

にっかり青江

朽ち果てた在来線の車窓より精神世界を見つめてねむる
いつまでも俺のままではいないからお前を捨てるよなめらかプリン
知らないがあの頃の緑だろうか 新約聖書の表紙に草原
質量を伴っていて空箱のフチぐんにゃりと押し流される
散骨を輪廻で受け止めてないから墓場になれないんだろうおまえ
いつかした約束をまだ思い出す いなくなったのだろうか魚
風船を透明にするやり方を見破られたし水槽は割る
ふよふよと水を抱きかかえて寝るどこにでも連れてゆきたいぬくさ
なんとなく勿体つけて剥がすチョコミントのアイスの皮捨てるのに

鶯丸

雑草を屠るその手で火をつけて実は線香花火だという
贖罪が楽しくてつい夏蝉の羽音でボックスステップを踏む
鶴だけど頭のいいギャルでもあるのでギャルピをする流れで羽ばたいた
自販機にもたれるはずが踏み外し奈落へ突き飛ばされた気がする
聖水を浴びて不老不死ごっこ ではなく昨日の残り湯だった
きみらには関係ないらしいラクトアイスと乳製品の違いよ
行ってみようと思ってずっと忘れてる遠くのコンビニみたいな隠り世
「夕飯はなんでもいいさ」の「なんでも」に煽りを交えてわらう咬筋

鶴丸国永

いつからか廊下の電気が消えていて光と小窓に気づけていたら
しんがりで左手落とした俺をよぶ苦しいまなざし 夢だと思う
初めから笑顔と僅かな残り香の真白な空蝉を知らなかった
段々と老衰してゆく 直し方教わらないまま障子は死んだ
もう何処もあてをなくした魂の器、こころはみなしごである
人差し指の押型を取りながら指紋の歪みを数える悪夢
落雁の懐かしさこそが朝日だよ道標だよと天の声する

膝丸

鮫型の浮輪に乗って最悪を呼ぶ白昼夢 波、波、圧死
クロールでいちばん遠くに手を入れる抗い方うまく飲み込めない
島からの便りの届くことはなく割れた小瓶で足首を切る
囁きがやがて強迫観念になるこの場所で溺れてしまう
この水は鏡 忘られぬ夜にまたひとり彷徨い立ち尽くすなら
箱庭は箱庭なりに応えると解りひかりにうたを挟んだ

千代金丸

背浮してタイルを数えているうちに一切の火は消えるのだろう
息吐けば沈み水面に影が降りからだもろとも溶け出している
塩水でなくてよかった傷跡も汚いままで突っ立っていて
消し炭と耳につまった寂寞と押し込まれゆく脱水機あり
朧げに水の向こうに見えるので嗅覚と痛覚を間違えた
薄布のうねりが怖い拍動に合わせてなにか呟くようだ

薬研藤四郎

裸足でもひとりで歩いてゆけるのに波打ち際で何もできない
そういえば融けあっていた 振り出しに戻る以前のやすらかな僕
この空を苦し紛れにゆうくれと呼ばない 罪だと自覚している

鯰尾藤四郎

芝生にてパンケーキ食む終末を過ごしてゐたり ぼくたちの朝
夏其処に渚に打ち上げられてをり動き出さぬと謂へ水死体

浦島虎徹

番付に対がいるのが惜しいほど大包平は美しいので
朝露も浮き足立って風になる 大包平は美しいので

大包平

はみだせば大気圏への理とそれすら知らずひかる(ひかる)星

七星剣

ただ一文に※諸説ありの回顧録抱えていまそれきりの熱量
本当は破けて血濡れた手が嫌いだからよかった(全然良くない)
戻ったよ おかえり、お餅食べる?ううん 桜の香りの戦争をします
つちくれに愛こめこねたかたちだよ火にかけ薄まる味、思い出も
つちくれに愛こめこねたかたちだよ名前を呼んでよつちくれの名を
かみさまのかみさまがいるなら僕らはさ、きっと許されてなんかないんだ
かみさまのかみさまがいるならみのがしてたとえあしたがきのうになっても
かみさまのかみさまがいるならどうやって迎えに来るんだろうか折れたら
かみさまのかみさまがいるなら重傷の手入れできれいな夢を見させて

刀剣男士

風はらむ光のひとつひとつ見て伏さる枝葉のいとなほなりを
時満つも散らなば無粋と云ふでせう 花ひとひらの祈りとさだめ
花だった 消えそうな灯と微笑んで風に吹かれて散る花だった
あすこにも桔梗の業火(はらいそ)燃ゆ さあ手を引いて戻らぬ愛憎劇の日々まで
提灯はもういらないと歩き出す「厠はこちら」の浮かぶ暗り

舞台『刀剣乱舞』綺伝 いくさ世の徒花

あすからの曇りも僕らはたくましくゴミ処理班となって立ちます
青空に血盟 自食の身なれどとのぞむ紗綾の背のいりぎわよ
冷や汗を声には出さないようにして門は開けておくから 微笑み
瓦礫から何も知らない鯉を掬う ちょっとイラついたから捌いた
スプーンでオムレツの端切り取ってみんなの分を作ってあるよ

大侵寇

俳句

オリオンや霞むまなこに降り頻る
枝打のおとに紛れた刺殺哉
水洟に薄紙ひとつのみの報ひ
山眠る俺も案件のちねむる
足先に初霜踏んだ痕消えず
回廊の手摺崩れて崩れてく
うわごとを放送す此処ターミナル
俺の目と蕎麦のサンプルの輝き
浮雲も踏み外す足ありてこそ
碇星は終わらない朝に凍結
紙漉いてこなごなになる宇宙かな
陽光の透ける空気とセロリ食む
枯茨掻き分けられて目醒めたり

山姥切長義

金魚売前で体温はぐれたり
夕凪や心有るやうなざわめき
ほか暗くあかせうびんの赤い夏

明石国行

心拍をとく、と零して麦茶注ぐ
遠景に群れる羊の頭落つ
てのひらで内骨格のおとをきく

薬研藤四郎


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