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【検証】SaaS企業の業績は読めるのか?

上場SaaS企業の業績予想データを用いて検証


「SaaSビジネスは、将来の業績が見通しやすい」

これはSaaSが、

・ BtoBサブスクリプションモデルであり、ストックビジネス
・ 売上(ARR)をブレイクダウンしたメトリクスで予測・計測が可能
・ 営業見込み顧客獲得から成約までのフローを数値管理しやすい

などの性質をもち業績変動のブレが比較的少ないことから、一般化されつつある見方かと思います。

この半ば常識になりつつある「業績の見通しやすさ」をファクトベースで確認するべく、SaaS企業の過去5年に渡る業績予想・決算着地を対比し、検証していきます。

国内IT企業の期初時点の業績予想

国内上場企業は、その年の事業年度に対し、原則、売上高や営業利益など主要なPL項目の予想を出す必要があります。

これは東証によって開示を求められるもので、予想を行わない場合は、「開示を行わない合理的な理由」を事前説明する必要があるなど、一定の強制力を伴っています。

そのため、SaaS企業を含む大半の企業が通期決算短信公表時に当期決算の予想開示を行い、現状、国内上場企業3,800社に対し、3,000社程度の企業で開示が行われている状況です(レンジでの開示も含む)。

以下は、FY2020の期初時点における代表的なIT各社の予想状況です。(3月決算企業であれば、5月半ばの決算短信に公表される2021/03期の予想数値です。)

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* 各社開示資料より「企業データが使えるノート」集計

今年度は、新型コロナウイルスの影響で多くのBtoC IT企業が業績予想の開示を控える一方で(楽天のように以前から開示をしない企業もありますが、、)、BtoBを主戦場とするSaaS企業においては、期初時点においても多くの企業が予想開示を行いました。

ラクスなどの企業は一定期間経過後に開示をするなど保守的な面も見られましたが、イレギュラーな外部環境においてもSaaS企業が一定の見通しを持って事業を進められるビジネスであることが現れていると思います。

それでは、実際に過去5年間のSaaS企業の「期初業績予想」に対する「通期実績」の差異を検証していきます。

SaaS上場企業の期初予想に対する平均着地は103%

国内SaaS企業の多くはこの5年間で上場を行っているため、サンプル数はやや限られ27件となります。

ここでは、2015年度以降に公表されたSaaS企業の「期初予想売上高」に対して、「売上高の実績」の差異にて、業績の「読みやすさ」を確認していきます。

対象企業:
マネーフォワード、Sansan、フリー、ラクス、チームスピリット、ユーザベース、サイボウズ、インフォマート、Chatwork、カオナビ、スマレジ、ウォンテッドリー
決算期: FY2015 - FY2019で予想・実績の取得可能な決算期
(フリー、Chatworkは2019年中のIPOのため上場時点の予想値を採用)
サンプル数:27
ソース: 決算短信、各開示資料
差異算出:分子 実績 / 分母 予想 にて算出

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