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SaaSハードシングス - フルカイテン編 -

■ SaaS起業家のハードシングスを聞く

3度の倒産危機をデータ分析で乗り越えた ―――。

そんな圧倒的に原体験の強いSaaSスタートアップがある。

小売・卸売・製造小売業の在庫問題を解決するSaaSプロダクト『FULL KAITEN』を提供するフルカイテンだ。

自身がアパレルECビジネスを営んでいた際の倒産危機から生み出されたシステムによって、「必要な商品が必要な量だけ流通する社会を創る」と、大阪発SaaSスタートアップの視座は高い。

いかにしてハードシングスを乗り越え、SaaSスタートアップへの進化を遂げたか。

代表取締役社長の瀬川さんに貴重なお話を伺いました。

               ***

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↑ 3度の倒産危機という十分過ぎるハードシングス経験を持つ瀬川さん

瀬川 直寛 /  株式会社フルカイテン 代表取締役
1976年、奈良県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、外資系IT企業、ITベンチャーを経て、ベビー服のECビジネスを起業。2017年11月に、自社で活用していたシステムをクラウド事業化しSaaS型クラウドサービス『FULL KAITEN』を販売開始。2018年9月より社名をフルカイテン株式会社に変更し、SaaS専業化。

小売業界の在庫問題に取り組むフルカイテン

早船:御社が取り組まれている「在庫問題」について、ピンとこない方も多いと思いますが、まずは概観から教えていただけますでしょうか。

瀬川さん:現在、衣料品については国内向けに約40億着の生産がなされていると言われています。ただ、この半分程度は、購入されず、処分されます。

日本の人口は1億2,000万人ですから、そもそも製造枚数は多すぎるということが前提としてあります。

私は、大量生産自体は悪いとは思っていません。ただ、企業が自身の販売力を超える大量生産をするのは良くないなと。それ故に、多くのアパレル企業の営業利益率が5%以下になっている現実があります。

あわせて、BSの棚卸資産に在庫が積みあがって評価減が発生、PLの売上原価を悪化させて、低い営業利益率に繋がっている。これが実態なんです。

2025年に向けて九州くらいの人口(約1400万人)が減る中で、今の状況が続けば、大手資本しか生き残ることは出来ません。「値引きを減らし、余計な在庫を持たない」という状況に小売り業界を変えねば、という危機感がフルカイテンにはあります。

FULL KAITENの独自性とは?

早船:そのような在庫問題に関する課題が解決されてこなかったのはなぜでしょうか?

瀬川さん:在庫問題を解決するために、先進的なAIを提供する企業も、老舗のSIerも「需要予測の精度をあげる」アプローチを行ってきました。ただ、この方法で解決した試しがなかった。

ユニクロとGoogleが協業して、在庫適正に関するシステムを構築しているが、3年かかったが未だ道半ばという報道が今年の2月にも日経新聞によって報じられました。


競合の動向、新型コロナウイルスなど、予測できない要因がたくさんあるので、「抜群の予測ができれば在庫問題は発生しない」というのは理屈としては、正しくても、その理屈が成り立たないのが現実です。

それに対して弊社は、需要予測ではなく、「在庫リスクがどのように変化していったか」に着目をしています。

需要予測が当たろうが外れようが、在庫リスクをタイムリーに把握することで、売り残し、値引きをなくしていく、というアプローチを行っています。

このアプローチの方が需要予測の一辺倒よりも現実的だと、多くの企業に評価をいただいています。

早船 : FULL KAITENでは、アプローチを変えることでより実態に即した在庫適正化システムが提供できつつあると思いますが、その独自性を追随される可能性はないのでしょうか。

瀬川さん :あるかも知れません。ただ、私自身の倒産間際の経験も含め、自分たちのドメイン知識の深さにより構築されたシステムであるので、単純な模倣はされづらいと思っています。

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↑ なぜ模倣されづらいか、という大事な点をアツく教えていただく

瀬川さん: 小売業で重要とされている指標の一つに「消化率」があります。この数値単体を見るだけでは、意味がないのですが、「なぜ意味がないのか」ということを理解できれなければ、適切な在庫管理が出来ません。

数学的なアプローチ、在庫管理を多面的にとらえる視点、現場で死ぬ程悩み考えた、そういった複合的な要素を突き詰めなければならず、そこまで達せられる人は、多くはないのでは、と正直思っています。

小売企業の経営者にとって「なくてはならないSaaS」


早船
:FULL KAITENのSaaSとしての観点を伺っていきたいのですが、顧客からどのような評価を受けているでしょうか?

瀬川さん:SaaSは世の中にたくさんありますけど、案外、ここまで経営のど真ん中に入っていってるものってないんじゃないかなと思っています。

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↑ ど真ん中SaaSの覇気がポーズに出てしまう瀬川さん

アパレル業を営んでいて、会社が小さければ、「この商品はよく出荷されてるな」とか「この商品はイマイチ動いてないな」とか、目で見て、肌感覚でリスクは分かります。

ただ、年商10億を超えてきたら、遠くの倉庫を借り、在庫が数字でしか見えない。

FULL KAITENを見れば、「この在庫は安心していいけど、この在庫はやばいですよ」とか「この辺は実は良い商品なので早めの販促でさらに売れる」などが分かります。

ある会社の方からは、「FULL KAITENがなくなったら日本の小売業界にとって損失だ」と言われますし、こういう経営インパクトのあるツールは、あまりないかと思います。

早船:取り組まれている課題に対して、SaaSとしてアプローチしていくことが非常にモデルとして相性が良い印象があります。継続率などの状況はいかがでしょうか?

瀬川さん:まだ分母がそこまで多くないというのもあるかもしれませんが、解約率はかなり低いです。

早船:他の記事で「FULL KAITENの契約が決まるまでの訪問回数は平均1.4回。導入は、ほぼ即決で決まることが多かった」とのコメントもありましたが、根本的な課題に対し、有用性を出せているということですね。

山積みの在庫に囲まれながらも、「俺は絶対に勝つ」と言い聞かせた


早船
:FULL KAITEN開発きっかけとなった倒産危機のストーリー自体は、他に素晴らしい記事があるので、そちらにお譲りするとして、私からは、その苦しい局面をどのように乗り越えて来られたかをお伺いできればと思います。

↑ 必読の倒産危機ストーリー

↑ Forbes JAPAN CAREER「苦境を乗り越えた」ストーリーにもノミネート

早船:起業当初のEC事業では倒産危機になるなど、タフな場面をたくさんご経験されてると思いますが、そのような状況下でメンタルコントロールはどのようになさっていたのでしょうか?

瀬川さん:起業家にとってメンタルコントロールはとても大事だとは思うのですが、私は正直言ってコントロールできなかったと思います。

よくこうやればメンタルコントロールできるという話もありますが、自分の場合はしんどい時ほど、「俺は絶対に勝つ」と声に出してました。

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↑ そろそろ「俺は絶対に勝つ」と言う直前の瀬川さん

早船:なるほど。。それはもう自己暗示みたいな世界ですね。

瀬川さん:「こんなところで負ける男じゃない、絶対に勝つ」っていうのをひたすら言いながら、どうやったら勝てるのかを考えるための脳の隙間を作っていくというか。

早船:究極的な領域ですね。

瀬川さん:妻帯者で子どもが生まれて当時まだ0歳ですから、単に会社を潰すというのとは訳が違いました。自宅を事務所にって言ってましたけど、実際は妻の実家の2階ですよ。寝室まで在庫の段ボールが入って、リアルに歩けないんです。この山積みになった在庫に囲まれて親子3人寝てました。

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↑ 当時の「寝室」の写真を提供していただきました。「寝室」です。

瀬川さん:いくらでも弱音は吐けたし、実際吐きまくってました。でも、自分がメンタル負けたらすべてが終わってしまうじゃないですか。だから「絶対俺は勝つ」って言い聞かせて、頭の中に隙間を作って勝ち方を考えられるようにしていったんだと思います。

早船:今、当時のご自身にアドバイスをするとしたら、何を伝えたいですか?

瀬川さん:「お前はやれるから心配するな、苦しいやろうけど絶対やれるから諦めんな」って言ってあげたいですね。勝ち方とかいわゆるフレームワーク的なものだってあそこまで追い込まれたら何の役にも立たないです。

自分は大阪でやっていたから、東京のようなスタートアップ界隈にいれば、何かアドバイスをもらえたのに、と羨ましく思ったこともあります。ただ、今振り返ってみると、こんな経験をしているのは自分しかいないから、周りや環境は何も関係がないと分かりました。

プロダクトリリース後のハードシングス

瀬川さん:ハードシングスは、FULL KAITENを始めてからもありました。

早船:(まだあるの!?)

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↑ またしてもハードシングスを迎えてしまった瀬川さん

瀬川さん:2017年にFULL KAITEN ver1.0を出したんですが、この時は月商300~400万くらいの小さい会社をターゲットに作ったんです。ところがローンチしてみると「嘘やろ」って感じの大企業からリードが取れていきました。

でも、ver1.0の設計では到底データの規模感に対応できない。大規模対応のver2.0開発をすぐに始めたんですが、その間もリードは来続ける。

だから、ある程度契約取れた時点で、マーケティングから営業活動まで全て止めて、ver2.0開発に集中する決断をしました。しかも、顧客からの改善要望もどんどん入ってきます。とは言え、当時はエンジニアは3名体制でした。

もちろん、お金は入ってきません。でも、自分たちの事業だけを重視して、色々なことが後回しになるというのは違うなと思ったんです。

早船:やはり、実際やってみないと分からないことは多いですね。

瀬川さん:スタートアップではよくある話ですが、プロダクトを出してみてターゲットがはっきりする、次のターゲットに合わせた規模感のプロダクトを出してみてようやくこんな機能が必要だとか、後から分かりました。

その中で、これ以上、自分たちの都合で走ったらお客さんに迷惑かけるというタイミングがありました。

いくら先行投資型のビジネスモデルは言え、新規契約を獲得せず、開発に集中するというブレーキを踏んでしまったら、キャッシュアウトし、苦しいんです。でも、これまで3回も倒産危機を乗り切ってるんで、その時と比べれば全然マシというメンタルになっていましたね。

当時、VCの方は、事業転換や営業活動を止めて、開発に専念する際も理解をいただき、応援していただきました。今後も入っていただくような投資家の方を含めて、私たちが大事にしていることを共感いただけるようなお付き合いができればと思っています。

早船: なるほど。ハードシングスだけではなく、フルカイテンの取り組まれていることや、ストーリーをお伺いして、私も応援したい気持ちがますます湧いてきました(笑)

貴重なお話ありがとうございました!

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↑フルカイテンのみなさん。「シュッとした写真は撮らない」という信条

フルカイテンからのお知らせ

フルカイテンでは、2021年春を目途に新たな資金調達を計画されています。

INITIALでの会社概要
- INITIAL シリーズ B ラウンド
- 調達後評価額 1,488百万円 2019-12-27時点(フルカイテン未追認)

ユーザーからの高い支持と、強烈な原体験を持つ同社にご興味をお持ちの投資家の方がいらっしゃいましたら、ぜひ、瀬川さんまでご連絡ください!

↑ 瀬川さんFacebookページ
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企業データを探すノートでは、SaaS起業家の挑戦を応援すべく、プロダクトリリース後のスタートアップを対象に「SaaSハードシングス」記事を無料で制作・公開しています。

取材希望のスタートアップ関係者の方、自薦・他薦は、問わずご連絡ください。お話をお伺いした上で、取材をさせていただきます。

こちらのメールアドレスにご連絡ください。
akio.hayafune@craftdata.jp

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