中華Androidゲーム機の抱える課題と今後の展望

昨今の中華エミュ機ではAndroidが主流になって、マーケットにはちらほらと完成度の高い機種が登場しています。代表的なところではAnbernic RG405M、Retroid Pocket 3+、KT-R1など百花繚乱に見えます。YouTubeのレビューを見ると、ちょっと懐かしいゲームが安価で手軽にプレイできるかのようです。本当にそんなにいいものなのでしょうか?
(ちなみに筆者はRetroid Pocket 2+を所有しています)

性能について

こうした商品は様々なコンソールのエミュレータでレトロゲームをプレイできると言っています。実際、そこそこプロセッサ性能はあります。
内部的には廉価なスマホやタブレットに使われるSystem on Chip (SoC)を使用しており、2023モデルで人気があるのはUNISOC Tiger T618か、RockChip RK3566などです。これらのSoC自体は数年前のエントリーグレード向けですがマルチコアでGPUも内蔵しています。

問題は、古いエントリーグレード向けなのでもうドライバがアップデートされていないことにあります。SoCのドライバは一般にその時点のカーネル用のプロプライエタリなものしかありません。
これらの端末にはエミュレータがプリインストールされていることが多いですが、設定にそうしたシステム面の制約を反映したものにすぎず端末そのものの性能とは異なることを考慮に入れるべきでしょう。

中華Androidの落とし穴

まず、Androidとは言ってもスマホと同レベルを期待してはいけません。ストアがあったとしても、SecureNet、Play Integrity、Widevineなどなど超えるべきハードルはいくつもあります。
要するに、普通にストアからNetflixをインストールして動画を見られるとは限らないわけです。

例えばRP2+にPlayストアからNetflixアプリを入れて起動してもこうなります。

Netflix見れない😢

Playストアの設定をよく見るとこうなっています。

Play プロテクト認定されてない😵

軽視されがちですが、デバイスのファームウェアには非常に高い技術力が要求され、エミュレータを動かすのに必要な機能はそのうちのごく一部にすぎません。GPSやカメラがないと認証が通らないアプリはたくさんありますよね。
また、セキュリティの基準を満たさないAndroidにアカウント情報を入力したりAPKを入れるリスクも無視できません。

そもそも解像度が低すぎて使い物にならないというのもあります。
一応Kindleアプリは動きました。(動作を保証するものではありません)

十字キーでページ操作できて便利

Androidのバージョンについて

これもSoCのドライバが関係してくるのですが、なかなかAndroidのバージョンが上がることはないです。GammaOSのようにLineageOSベースのイメージが作られる場合もありますが、かなりレアケースと言えるでしょう。メーカーとしても同一のSoCを使い続ける強い理由がない限り、次のモデルで新しいものを採用して前のモデルはさっさと切り捨ててしまいます。
OTAでアップグレード可能と書いてあっても、よっぽどのことがない限りAndroidのバージョンアップまでは期待できないでしょう。

今後の期待

とはいえAndroidが主流になったことで、KT-R1のHelio G99やDimensityのような高性能で比較的新しいSoCが使われるようになってきました。おそらく今後RetroidやAnbernicも追随してくるでしょう。それらでVulkanが当たり前になり、Android 13のpKVMが活用できるようになるとレトロゲームに留まらない活用が見えてくる可能性はあります。まあ価格は上がるでしょうけど。

逆に、OdroidなどのSBCをルーツとするJELOSやBatoceraOSが盛り上がる可能性もあります。オープンソース的にはこちら方向に期待したいところです。

まとめ

このように、現状では使えてもちぐはぐなゲーム体験で、Androidとしてもあまり使い物にならない場合が多いです。
価格が安いのでネタ半分で買うのは否定しませんが、セキュリティも怪しいですし、OTAアップデートもされないまますぐに旧機種になるのは避けられません。
筆者は迷わずSteam Deckを買うことをお勧めします。最高です!