Webに限らないアクセシビリティあれこれ

この記事は以下のアドベントカレンダーの12月11日の記事です。

Adventar アクセシビリティ Advent Calendar 2022 https://adventar.org/calendars/7377

来年でこのアドベントカレンダーも10周年とのことで、もうそんなになるのですか、とびっくりしました。これまで、また今年も変わらずに企画してくださってありがとうございます。

アクセシビリティに関する動きは今年も活発で、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の成立といった大きい動きをはじめとして、民間企業のアクセシビリティ施策への取り組みがニュースに取り上げられたり、参加者が三桁に乗るようなイベントもいくつもありました。

今回は、ちょっと視点を変えて、近年のIT業界以外のアクセシビリティ関連の話題にどんなものがあったかを見てみようと思いまして、2021年〜2022年にかけて雑誌などの紙媒体の記事をいくつかピックアップしてみました。

地域ケアリング 2022年10月号 「国際福祉機器展H.C.R. 2022/「福祉用具の日」 創設21年目を迎えて」

「視覚障がいに配慮した臨床用評価支援アプリ「CAST」シリーズの開発」福島正也

http://hokuryukan-ns.co.jp/cms/books/地域ケアリング2022年10月号 特集 国際福祉機器展h-c-r/

医療関連から。理療の現場の臨床評価支援用アプリに関する記事です。開発における評価仕様とその結果について紹介されたもので、アクセシビリティに関してはVoiceOverや文字調整機能への対応を行なったことが簡単に触れられています。
アプリのアクセシビリティは現在、Web同様に求められている状況ですが、アプリのアクセシビリティについてのガイドラインや必要な対応などの整備はまだまだ足りていないな、とあらためて思ったりしました。

視覚障害 その研究と情報 2022年6月号「より豊かな情報提供を目指して」

「共生社会の足音 第86回 障害者権利委員会による第1回日本審査の注目点」田中伸明

https://www.fujisan.co.jp/product/1281701029/b/2260136/

国連の障害者権利委員会による日本審査に関する結果は既に発表になっており、特別支援教育や精神科医療についてのコメントは当事者・関係者からさまざまな意見が出たことは記憶に新しいところです。
「差別」の定義について、「裁判を受ける権利」について、障害者の情報受領権についての三項目について、これまでの経緯と審査の想定をまとめた記事で、当事者にとっての重要なポイントがわかりやすい記事でした。

恥ずかしながら、ちゃんと日本審査に関する結果をまだ読んでいないので、この記事を参考に読もうと思います……。

美術手帖 2022年2月号「ケアの思想とアート」

佐藤慎也に聞く 美術館の「アクセシビリティ」

https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/25063

美術館という空間に関する考察と、八戸市美術館の取り組みを紹介しています。
インタビュー記事は、「美術館のアクセシビリティ」という言葉を聞く機会が増えた、という切り出しから始まります。美術館のアクセシビリティについて、施設へのアクセス(従来のバリアフリーという概念)という物理面と、視覚優位であった作品の展示方法の根本の面があると述べています。作品をどう伝えるかについて、視覚によって展示された作品を眺めるのではない、展示する空間そのものをどう使うかや、障害をもつひとの感じる世界を知ることこそが重要であるという内容は、双方向性を重視していることが伺えました。
芸術は一方通行の情報ではないのですよね。
八戸市美術館にはぜひ行ってみたい、と思っています。

法とコンピュータ NO.39 JULY 2021「司法のIT化」

「民事裁判手続のIT化における憲法問題-ITアクセス困難者と裁判を受ける権利」木下昌彦

https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000002-I031605682-00

民事裁判手続のIT化に向けて、「民事訴訟法等の一部を改正する法律案」が5月18日に成立したのですが、付帯決議として、障害者のアクセスの向上に資する法整備の要否についても検討し、必要な措置を講じることが求められました。
民事裁判のIT化というと、書類などのフォーマットや申請手続のフォーム、記録のアーカイブなどを想定していたのですが、口頭弁論などをWeb会議方式により実施することも検討されているそうです。ITに慣れている場合は利便性が向上しますが、そうではない場合、逆に裁判を受ける権利が守られていないということになるため、法に照らした懸念点と越えるべきハードルについてがまとめられています。

「WEBサイトへの米国ADA法適用に関する議論-日本法への示唆 」金子宏直

https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000002-I031605682-00

米国ADA法と日本法の現状について、コンパクトにまとまっています。ADA法という名はよく聞くけれど、内容はいまひとつよく把握しきれていない……という方向けに、情報を整理する上でもちょうどよい記事と思います。引用元・参考文献もあわせて確認するとよいでしょう。(※専門誌なので、すべてを追うのではなく、適宜絞って確認する、で十分です)

以上です。

さまざまに、for everyone / leave no one behind に取り組んでいるひとがいることが、私の力になっています。私も誰かの力になっていればいいなと思いつつ、来年もやるぜやるぜー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?