ジャニー喜多川の被害者の補償にはマスメディアも拠出すべきだ

ジャニー喜多川が亡くなったのは2019年7月。同年9月に東京ドームで行われたそのお別れ会には、日本の芸能界の重鎮の多くが出席し、安倍元総理も弔電を送り、一般人約9万人が参列し、テレビでも放送され、テレビで活躍するタレントやマスメディアは揃って彼の功績を讃えた。

彼の死後約4年の間、この性加害の問題が脚光を浴びることはなかった。ようやく小さく動き始めたのは今年の3月、しかも恥ずべきことに、そのきっかけは日本ではなく、英国BBC放送の番組からだった。しかしそれが放送されても、まだほとんどのマスメディアは取り上げなかった。事が本格的に動き出したのは、その番組がきっかけで外国特派員協会で被害者の記者会見が行われ、それを受けてさらに国連人権理事会が「人類史上最悪の性虐待事件」とし、「あらゆるマスメディアがその隠蔽の共犯」だと批判してからだった。つまり外圧がなければマスメディアは動かなかった。

ジャニー喜多川氏による性加害問題の再発防止特別チームの調査報告書にはこう書かれている:

「ジャニー氏の性加害の問題については、過去にいくつかの週刊誌が取り上げてきたものの、2023年3月にBBCが特集番組を報道して、その後、元ジャニーズJr.が性加害の被害申告の記者会見を行うまで、多くのマスメディアが正面から取り上げてこなかった。

「例えば、上記のとおり、2000年初頭には、ジャニーズ事務所が文藝春秋に対して名誉毀損による損害賠償請求を提起し、最終的に敗訴して性加害の事実が認定されているにもかかわらず、このような訴訟結果すらまともに報道されていないようであり、報道機関としてのマスメディアとしては極めて不自然な対応をしてきたと考えられる。」

「このように、ジャニーズ事務所は、ジャニー氏の性加害についてマスメディアからの批判を受けることがないことから、当該性加害の実態を調査することをはじめとして自浄能力を発揮することもなく、その隠蔽体質を強化していったと断ぜざるを得ない。その結果、ジャニー氏による性加害も継続されることになり、その被害が拡大し、さらに多くの被害者を出すこととなったと考えられる。」

つまりマスメディアにはこの被害を拡大した責任があるということだ。責任があるということは補償の責任があるということだ。単に「真摯に受け止める」と言って謝罪して済む問題ではない。

問題はどのように補償をするかだ。

もし被害の程度や頻度によって補償額を決めたら、「オーラルは一回いくら、アナルは一回いくら」のような「料金表」を作って、その被害を申告してもらわなければならなくなる。それは被害者にも負担をかけるし、エビデンスなど提出しようがないし、膨大な手間がかかるからすべきではないだろう。だとしたら、最大の被害を想定して、その金額を一律に配るということがベストではないかと思う。

仮に一人500万円だとしたら、100人で5億円、200人なら10億円、300人なら15億円、500人なら25億円だ。ジャニーズ事務所は非公開企業なので売上利益は不明だが、売上は1000億円程度と言われているから、全然払えない金額ではないはず。

また、その補償の基金には、ジャニーズ事務所だけでなく、マスメディアも拠出すべきだ。「マスメディアの沈黙」がこの被害を助長したことを「真摯に受け止める」と言うならば、自分の身を切る具体的な行動で示すべきだ。


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