私はまだ本当の三浦大知を知らなかった
2022年7月7日、「DAICHI MIURA LIVE TOUR 2019-2022 COLORLESS」in能代市文化会館。
初めて生で三浦大知を見た感想が、タイトルの通りである。
私はまだ本当の三浦大知を知らなかった。
元々は去年行くはずだったのが、コロナでツアー自体無期限延期になってしまい、待ちに待った公演だった。
東北の片田舎、こんな不便極まりないところまで約束を果たしに来てくれて、感謝しかない。
細かく書いていくと何字あっても足りないので(と言いつつ3,000字超えたが)、特に印象に残ったところを記録していく。
●「COLORLESS」
1曲目。大知くんが登場した瞬間、あまりの近さに旦那と顔を見合わせた。
9列目のほぼど真ん中、表情どころか汗まで見える距離。ツアーを象徴する、彼にしか歌えない激ヤバな1曲目。無色透明、不思議な緊張感。一気に世界に引き込まれた。
●「Blizzard」
ああ、盛り上がっていいんだ、とお客さんたちの安堵の空気。
それにしても年齢層が広い。小さい子からおじいちゃん、おばあちゃんの世代までいる。
大知くんが好きなのはもちろん、ここに集まった人たちは音楽そのものが好きでたまらないんだろうと思った。声は出せなくても、体を揺らして楽しそうな人たち。
なぜかラスサビのフェイクが美しすぎて涙が出た。この曲で泣くと思わなかったから自分にびっくり。
●「(Re)play」
死ぬほどMVを見たので、頭の中ではもう自分も踊れてる(錯覚)。
……しかし異次元。誰か早送りとスローモーション操作してる?“緩急がすごい”“キレがいい”と言うだけではあまりにも足りない。ちょっともう説明できない。
ラスサビ、マイクをぽーーーーん上に放り投げてくるっと回ってたよな。自分の目が信じられず、後で旦那と確認し合った。
とにかく大知くん本人が一番楽しそう。ずーっとニッコニコ。
●「Look What You Did」
アコースティックバージョン。
DJブースとスタンドマイクの間、人一人分くらいのスペースしかないのにそこで踊る?何で踊ろうと思った??
ここでようやく、ブレス音がほとんど聞こえてこないヤバさに気づく。詳しくは後で。
●「天体観測/BUMP OF CHICKEN」
今回のツアーでは、毎公演その土地ゆかりのカバー曲を披露すると聞いていたので楽しみにしていた。しかし有名人の輩出が少ない我が秋田。私と旦那の予想では、
【本命】高橋優
【対抗】藤あや子
【大穴】秋田県民歌(個人的希望)
だったのだが、まさかのバンプ。ボーカルの方が秋田生まれ&今日は七夕なので、という理由での選曲。バンプ好き旦那は大喜び。
声出し禁止だったが、曲名言われた瞬間無言のどよめきが起きた(気がした)。
バンドもダンサーもなし、大知くん1人での演奏。生で歌を聴いて初めて分かったのが、低音のなんと柔らかく美しく響くことか。
カバーだからと中途半端なカラオケを披露するのではなく、曲へのリスペクトがビンビン伝わってきた。こんな切ない曲だったのか「天体観測」。ありもしなかった青春の思い出が蘇ったわ。
●「Antelope」
誰か今すぐ混声四部合唱に編曲してくれ!!!
うちの合唱団で歌いたすぎて気が狂う。今まで「なんかいい曲~結構好き~(ぽやぽや)」ぐらいの感覚だったのだが、生で聴いて「めちゃくちゃ好き!!!(ギンギン)」に爆上げされた。
急上昇ランキング1位。
てか中盤にもなって今さらだけど、音外すことないの?どんなピッチ感?
●「Backwards」
個人的に、いっっちばん衝撃的だった曲。
最初は手拍子してたけど、早々に叩けなくなった。ニコニコ三浦大知はそこにはいなかった。ダンサーさんたちも一体となって、凄まじいエネルギー、圧、熱。
「みんなで楽しみましょう~」ではなく、「俺の叫びを聞け!」の三浦大知だった。
胸ぐら引っつかんで揺さぶられてるようなあまりの気迫に、ただ呆然と突っ立って見ているだけの人になった。これに関しては、感想聞かれても「なんかスゴカッタ」しか言えない正直。
●「Excite」
イントロからお客さんたちの盛り上がりがヤバイ。待ってました感。
声が出せなくても、雰囲気って分かるんだな。周りの人たちみんな、本っ当に楽しそうだった。
でも一番楽しそうだったのは大知くん本人(これ100回ぐらい思ったけど)。
●「燦燦」
これ生で聴いたら感動するだろうな~と思ってはいたが、びっくりするほど涙ダーダーだった。
私的なことだが、2月に亡くなった祖父を思い出して聴いていた。コロナ禍で、お見舞いに行くことすらできずにお別れすることになったから、覚えているのは元気だった頃の姿のままで。お骨まで拾ったのに、どこか亡くなった実感が湧かずにいた。
「届いて」「見ていて」の歌詞があまりにも沁みて、なんだかようやく自分の心に折り合いがつけられたような気がした。
正直「燦燦」を引きずりまくってしまって、ラストの「Music」の記憶がほとんどない。
なんかみんな楽しそうに腕振り上げてたし、シャボン玉めっちゃ飛んできてた気がするけど、情緒ぐっちゃぐちゃでボーッと見てることしかできなかった。気づいたら終わってた。
でもステージを去る時も大知くん元気いっぱいだったので、多分彼だけあと2時間ぐらいライブできそうだったわ。
初生三浦大知を見終えて、合唱人として一番思ったのが「ブレス音が聞こえない」問題である。
あれだけ動いていて全く音を外さないピッチ感については、考察を諦めた。考えても仕方がない。体幹と喉と音感と肺活量と横隔膜が神なんだな、と思うしかない。
ただ、ブレスに関しては生で歌を聴いて初めて気づいた。
ハンドマイクの時は、マイクを口元に近づけたり離したりしてコントロールすることができる。が、スタンドマイクで歌っている時でさえ、息を吸う音が聞こえないのはどういうわけか。
合唱では、スウーッと息を吸う音を立てるのをとても嫌う。めっちゃ注意される。
指揮者がいない場合など、あえてブレスを意図的に合わせることもあるが、一般的には音を立てず、瞬間的に腹式呼吸で息を吸えと指導される。
合唱歴20年の私が断言する。三浦大知の腹式呼吸はヤバイ。
……さっきから「ヤバイ」と「すごい」しか言ってないような気がするな。
瞬間的に、肺ではなく横隔膜を意識してお腹に入れる腹式呼吸。このブレスコントロールがとんでもなく上手いことに初めて気づいた。
腹式呼吸だと何がいいのか。
まず、テンポに乗り遅れない。歌う時にあるあるなのが、息を吸うことでどんどんテンポから遅れていく問題。瞬間的なブレスでそれが回避できる。
それから、フレーズの入りの言葉が明瞭になる。元々滑舌のいい大知くんだけど、言葉が聞き取りやすいのはブレスによるところも大きいはず。
アコースティックバージョンの「Look What You Did」と「普通の今夜のことを」の時、ブレスばっかり注目してしまった。これは映像ではなかなか分からなかったことだ。
それからもう一つ印象的だったのが、
「今日このライブを選んでくれてありがとうございます」
と、何度も大知くんが言っていたこと。
「来てくれてありがとう」じゃないのか、普通。数ある選択肢の中から、お客さんたちが自分を「選んでくれた」と思ってるのか。
……え、謙虚すぎん?
温厚で優しくて控えめな彼の性格は何となく分かっていたつもりだったけれど、これだけ世の中に認められているのに、まだ「選んでくれてありがとう」という気持ちなのか、と驚いた。
年配の方もいる中、座って聴く時間を設けてくれたことや、声が出せないお客さんたちが拍手のしすぎで手のHPがもうすぐゼロになるでしょ、という「拍手やめて〜」の配慮。
たった2時間ちょっとの間に、彼の気遣いがたっくさん込められていた。
あれだけのパフォーマンスができるなら、もっと「俺スゲーだろ」になってもいいはずなのに、謙虚すぎて逆に心配になる。いや、あなたすごいよ。もっと上から目線でいいのよ?
とりあえず、生で見て初めて「三浦大知を知った」と言えるんだな、ということがよく分かった。映像で見ているうちはまだまだだった。
きっとすごいんだろうな、という期待を、軽く50倍は超えてきた。そんな時間だった。
「私、生で三浦大知見たんだよ」とこの先一生ドヤるので、周りの人たちは覚悟してほしい。
……ごめん、もう終わるけどこれだけ言わせて。