いわゆる東大女子お断りサークルに対するオリエンテーション委員会の動きと東大女子学生の反応等について

オリエンテーション委員会が新歓活動において差別行為を認めないという新規則を示してから、東大女子お断りサークルが話題になった。テレビ等でも報じられていた時期から数日経過し、瞬間風速としては落ち着いてきている。一方でオリエンテーション委員会がさらに踏み込んだ内容を表明したり、東大女子からの声も出てきたりとさらに動きがあった。

オリエンテーション委員会の動き

オリエンテーション委員会が各サークルの担当者向けに配布しているCOMPASSという冊子がある。2月2日、2020年度用のCOMPASS vol.1がオリエンテーション委員会ウェブサイトにて公開された。

2019年度からの大きな変更点はやはり「東大女子お断り」に関する内容だろう。2019年度用のCOMPASS vol.1には無かった記述として、新歓ビラの作成に関する注意の項に、新規則に対応して下記の文章が示された。

作成に際する注意
使用するビラはすべて事前に委員会に提出していただき、各種細則や以下の注意等が守られていることを
確認の上、配布を許可いたします。
(中略)
□正当な理由なく特定の大学の学生が性別のみに基づいて差別の対象
となることをを明示・示唆する文言の記載は禁止です。
例 1: 当団体は、男子は東大、女子は〇〇大で構成されています。
例 2: 当団体は、選手は東大、マネージャーは〇〇大で構成されて
います。

2020年度用COMPASS vol.1(https://www.a103.net/ori/2020/visitor/files/r02.pdf)より

上で例として挙げられている文言は、東大女子お断りサークルのビラによくある文言である。以前の記事ではこの文言も必ずしも東大女子の入会を拒絶するものではないという見方も可能であるとした。

しかし、今回まさにそういった文言を禁止するものの例に挙げ、さらに東大女子お断りを示唆する文言も禁止している。新規則の制定のみでは実効性の問題もあったが、上記の注意事項でより具体的なルールが定められたことで実効性はある程度確保された。オリエンテーション委員会は(少なくともビラから読み取れる範囲では)どのサークルも東大女子を受け入れている状態を目指しているといえるだろう。

さらに、オリエンテーション委員会は東大男子・東大女子・他大男子・他大女子の構成員比を回答させている。下に@poshasasya氏のツイートを示す。

これまで東大女子をお断りしていたサークルの場合、当然今回の調査では東大女子の比は0、他大女子の比は0ではない。これを新入生に開示すれば、新入生は東大女子をお断りしていたかを判別するのに使うことができるだろう。東大女子お断りサークルがある程度広く社会に認知された今、特に女子新入生がこの比をもとにこうしたサークルを自主的に避けることも十分に考えられる。

一方で、これはあくまでも構成員の比を示したものである。東大の女子率は全学で約2割のため、下の@longer_u氏のツイートで指摘されているように、「東大女子をお断りしていないインカレサークルでも東大女子はいないが他大女子はいる」、という状況は存在しうる。構成員の比からだけでは東大女子をお断りしていたかの判別としては完璧とはいえないだろう。

もちろん、こういった東大女子が入らず他大女子が入っているサークルの場合、他大女子に対する東大男子の比が明らかに大きな数字になる、あるいは他大の男子も入っているなどの理由から東大女子をお断りしているかを判別できる可能性はある。しかし、そういったサークルが割を食う可能性は否定できない。

東大女子の声

現役の東大女子学生のグループが開設しているYouTubeチャンネル「ぎんなん女子部」は、2/3に「 【東大女子お断りサークル問題】ニュースになった東大女子が受けている差別について真実を話します【報道の裏側】」と題した動画を公開した。東大女子お断りサークルに関して東大女子が話す、非常にタイムリーな内容の動画である。

本動画は東大女子がカメラの前に4人並んで話すもので、チャンネル内の他の動画と比べてシンプルなスタイルで急いで制作したことが窺え、その分彼女らの率直な思いが現れているといえるだろう。

当事者の声として、オリエンテーション委員会の新規則には遅かったのではないかという見方もあるが総じて歓迎的である。また、しばしば言われる他大学の女子との対立という点については、実際に他大学とのインカレサークルで良好な関係を築けているとしている。また、東大女子の側が萎縮してこれまで東大女子お断りだったサークルには入会しないのではないかという問いに対してはそんなことはないと否定し、新規則は差別構造を可視化し、自覚させたという点を踏まえ、社会から注目されやすい東大が率先して行動したことは意義のあることだとしている。

東大当局の反応

東京大学新聞は2020年2月4日の紙面で、1面に記事を掲載した。記事によれば、東大当局側のコメントとして、今回の新規則は学生が自主的に定めたものであること、当局としては本件について、必要なら学生の相談窓口など、裏方としてのサポートも検討しているということが伝えられた。

大学のサークルはあくまでも学生団体であり当局も学生側の自主的な行動を求めている。しかし、今後オリエンテーション委員会が必要と考えれば、当局側と協力して本件に対応していく可能性は十分にあるだろう。

今後について

やはりこれまで東大女子をお断りしていたサークルの動きには引き続き注目すべきだろう。特に注目すべきはビラやオリエンテーション委員会発行の冊子「槌音」に記載されるサークルの情報である。ビラやサークル説明文は当然オリエンテーション委員会のチェックを受けるため、東大女子お断りにつながる文言は消えるだろう。

また、オリエンテーション委員会の今後の動き、具体的には各団体の①大学・男女別構成員比を開示するのか、②継続的な調査を行っていくのか、③今後東大女子お断りサークルに対してさらに進んだ対応をとるのか、④大学当局と連携するか、といった点も重要だ。オリエンテーション委員会は東京大学新聞の取材に対し、一切の取材を拒否していると答えているため、委員会の意図はこういった動きから推測していくことになるかもしれない。

もちろん、当事者、つまり東大女子と東大女子お断りサークルのメンバーからの声も重要だ。noteでも東大女子が本件について書いた記事がこの記事を見つかった。

いずれも上で示したぎんなん女子部の動画と同様、当事者からの貴重な声である。

一方で、課題はまだあるといえる。新規則やビラの注意事項により東大女子お断りは建前上は難しくなるだろう。しかし、例えばセレクションによって東大女子を拒絶する、あるいはサークル内で関係が悪化したため東大女子が入会後すぐに退会し定着しないといった状況が発生する余地はまだかなり残っていると言わざるを得ない。

大学・男女別構成員比を継続的に調査すれば、こういった状況が発生しているかはある程度は推測できるが、それでも上に述べたようにお断りではなく歓迎しているのに東大女子が入ってくれないサークルである可能性は排除できない。

いずれにせよ、この件は一朝一夕には根本的な解決は不可能だろう。今後も動向を注視していきたい。


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