障害は他人事じゃない。ある日を境に障害者となった私

数年前、私は脳腫瘍になり、小脳の腫瘍摘出手術を受けた。幸い腫瘍は良性で、全て取りきれて病気は治ったといえるのだろうけど、
腫瘍のあった場所が悪くて後遺症を負い、
不自由な体で死ぬまで生きなければならなくなった。

後遺症は複数あって、キツいのは常にめまいがある事。平衡機能障害で、体を真っ直ぐに保てない。
常に不安定で、トランポリンの上で生活しているかのような、とてもおかしな、通常の体であれば想像もつかない世界。
顔面神経麻痺もツライ。
「女は顔が命」と言うのなら、私は女じゃないのだろう。半分動かないのだから。
化粧も楽しめない。閉じる事の出来ない方の目は、常に涙目。開きっぱなしだから、乾いて痛い。
目玉がひっくり返るような動きも見えて、気持ち悪い。
顔面神経麻痺、かなりキツい。
私が両まぶたを閉じられるのは、死んだ時だろうと思うと悲しくなる。
でも、どうにもならない。

"痛くないならよかったね"と言われる事もあるけど、どうしようもなくシンドイ日々。
痛いのも辛いけど、この現状もキツい。

術後の麻酔から目覚めるまで、自分がこんな状態になるとは思っていなかった。
事前に医師から説明は受けたけど、よくある事前説明のみ。
考え得る心配な事柄全てを説明された訳ではなかった。

私も、どこか他人事のような感覚もあって、
突っ込んで細かくは質問しなかった。
というか、何を聞いて良いかわからなかった?とでもいうか。
今思うと、それなりにはパニックを起こしていたのではと思う。

私はずっと介護職に携わってきた。
それなりに資格も持っている。
勉強する中で、障害についても学んだ。
ただ、それは単なる知識としての学習であって、当事者の気持ちや状況までがわかるわけではなかった。
実習として、アイマスクをして視覚障害の方の感覚を体感するだけであったり、車椅子に乗って操作したり、車椅子を押す側になったり、食事介助をしたり、されたり、

こんな感じなんだ…と、本当にあくまでも一時的に“体験”するのみ。
そうするだけでも、全くわからないのとは違う事にはなると思うけど、
大変さを想像するのみに留まった。
中でも、私が想像するだけでゾッとしていたのが、中途障害者(生まれつきなど、先天的なものではなく、ある日突然、病気や事故で障害者になった人の事)。


突然これまでのように出来なくなるなんて、どれだけ辛くて悲しくて、精神的にどうなってしまうのだろうと、恐怖さえおぼえていた。
その、恐れていたものに、私はなった。
実際は、体験して想像していた事とは違う、
もっともっととんでもない事だった。

想像の斜め上とか、そんなレベルではなく、
もうとんでもないレベル。
これまで何も気にしないでしていた動作全てが、
ありとあらゆる事がスムーズにいかなくなった。

老化で段々と出来ない事が増えていってしまうのも辛いだろうけど、それが突然となると、目の前が真っ暗になる。
あれもこれも難しい…あれもこれも失う。

ありとあらゆるものを失った。

明けない夜はないと思ってきたけど、
明けない夜もあるのだなと思った。

どんなに強がって前向きなフリが出来たとしても、やっぱり私の住む世界は灰色の世界。

鮮やかな色の世界に生きていた私は死んでしまった。

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