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涙する、息をする



4月18日、GEZANのライブに行った。
なんででるのかわからない涙が、何かを感じるよりも先にこぼれて、本当は笑いたいより、泣きたい、泣き出してしまいたい、ってずっと思っていたのかもしれない。ああ、人間にとって抗えないものは、涙だったんだ。


目の前で体ごと叫ぶように音楽を生み出しているひとたちを見る。まっさらになって、感情も息を潜めて、思考や存在さえもぎゅうっと一点に集まって、ただ水になって流れる。だって私たちは、この世界に生まれ落ちた時にはもう既に泣いていた。


歳を重ねるにつれて、ひとと過ごすことを知り、かなしみやいかりは押し殺して、自分に嘘をついてまで誰かを心地よくしたかった。そんなことをしていたらさ、感情は色をなくして、自分の感じていることもわからなくなった。ただ涙が出ること、こんなにも素直な動きをわたしたちは抱えているのに。


ほんとうに心が動くとき、涙がこぼれて止まらなくなることを今更ながら本当の意味で知る。


帰り道、「人生変わっちゃったかも」って冗談みたいに笑ったけど、目撃してしまったから、前のわたしには戻れない。もう知る前には戻れないって思ってしまうものに出会うとき、芸術に守られる面積が増えていく。

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