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外国為替でHFTやってた時の話

Foreign Exchange。略してFX。
仮想通貨FXって何者?

どーもこんにちは、片道切符マンです。
昔ばなしのお時間です。

私は昔為替でHFT(High Frequency Trading)をやっていました。
とは言っても、Flash Boysのように
真っ直ぐなトンネルを掘ったりはしておらず、
あくまで個人投機家が出来るHFTの限界に挑戦していた感じです。

結論から申し上げますと、為替はお薦めできません。
絶対に仮想通貨の方が相対的にクリーンですし、
様々な収益機会も残されています。

基本的には全ての投機を私は誰にもお薦めしませんが、
為替をポチポチやって負けているなら
さっさと辞めて仮想通貨をやったほうが100倍良いと思います。

私は為替で勝つパターンは以下の二つしかないと考えています。

①投機の天才が裁量で稼ぐ
②僅かなエッジを技術で掠め取る

私がやっていたのは②です。
これ以外のパターンでも稼ぐ方法をご存知の方は、
これは皮肉等ではなく是非反論を頂きたいです。
私の知識不足という事です。

今から記載する内容は私が昔②をやっていた時の話です。
10年ぐらい前の話かなと思いますので、当時私は3歳ぐらい、
憶えていない事も沢山ありますし間違っている事も書いてしまうかもしれませんが、その際はご指摘頂けましたら幸いです。

HFTとは何ぞや?

HFTとは高頻度取引の事で、
直訳の高頻度のイメージが強いかもしれませんが、
プラス"高速"である事も必然的にくっ付いてきます。
Hot F○cking Tinpokoの事ではありません。

HFTと一口に言っても、取る戦略は様々ですが
私がやっていたのはLatency Arbitrageです。

仮想通貨しかやっていない人からすると信じられないかもしれませんが、
為替レートはブローカー(仮想通貨で言うCEXみたいなもの)間で
基本的にずれる事はありません。
違いがあるとすればスプレッドぐらいです。


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"基本的に"ずれる事はありません。
しかし、価格情報伝達が0秒で行なえるわけでもなく
そこには多少の時間が必要です。

光が1msに進む距離は約300km、
東京からNYまでは約37ms程度あれば到達する事になります。
しかし、実際に試してみるとわかると思いますが、
東京⇔NYの通信には200ms程度かかる事がわかると思います。
また、通信のルートを辿ると様々な経由地を経て情報が伝達している事もわかると思います。

この時間、経路差等の狭間にほんの少しだけエッジがあったのです。
正確には常にあるエッジではなく、
エッジが生まれる瞬間があるというイメージです。

ロジックとしては、
もし出遅れているブローカーを見つけたら、
高速で注文を飛ばしまくるといういたって単純なゲームです。

ブローカーの種類

為替ブローカーは大きく分けて
A-book、B-bookという二種類が存在します。

B-bookは呑み業者で、ブローカーと顧客は相対(敵対)関係になります。
顧客が儲ければブローカーが損する関係です。
内部マリーや一部はマーケットに流すなどはしていますが、
綺麗ごとを並べても基本的に関係性が変わるほどの影響はありません。
当時は国内業者のほぼ全てがこのB-bookでした。
今も多分そうでしょう。

一方、A-bookというタイプのブローカーは
取引市場への橋渡し的な存在のブローカーで、
顧客と直接の相対取引ではなく、マーケットへ注文を流す中間で
幾ばくかの手数料を徴収するブローカーです。
直接手数料として徴収するか、
スプレッドに手数料分上乗せする形で徴収します。

ですから、顧客とは敵対関係にはならず、
取引してもらえばもらうほどノーリスクで手数料が入るので
友好関係が結べる"可能性"があります。

実際の所は、B-bookが見せかけの極小スプレッドを提示する為、
手数料ビジネスのA-bookは人気も出にくく、
経営としては苦しそうでしたが。

いずれにせよ、為替においては
ユーザー同士の対戦ではなく、対ブローカーもしくは
対Liquidity Provider(モルガン、ゴールドマンセックス、銀行等)
などであり、対戦相手は全て企業となります。

この辺りも仮想通貨と為替で違うところで、
理解に戸惑うかもしれませんね。

同様に私は、為替の知識しかなかったので、
後に仮想通貨界隈に来た時に色々とカルチャーショックで
わけがわかりませんでした。

板取引って何?ユーザー同士の取引ってマジかよ?
どうやって攻略すればええんや!?みたいな。

攻略ブローカーの選定

まず私はB-book業者の攻略を検討及びテストしました。
なぜなら、利益を上げるという目的のみに注目するなら
攻略難易度がAに比べて低かったからです。

しかし、利益を上げ続けるという目的で考えた場合は
そうも行きません。

口座を凍結される事なく利益を上げ続ける方法を
調査、検証、テストを繰り返して模索した結果
「存在しない」と結論付けました。

それは色々と調査、検証を行なった結果私自身の知見も増え、
"もし私がブローカー側の監視役"であったら
必ずアビトラをやっている人間を抽出する事が出来る
という自信?が付き、つまりは、いかなる手段を用いても
監視の目を掻い潜る事は出来ないと結論付けました。

そもそもB-bookの場合は、アビトラでなくとも
利益を上げ続けているだけで難癖を付けて凍結してくるのが
日常茶飯事でしたので攻略検討の価値も無いかもしれません。

アビトラなどやろうものなら、早ければ数時間で凍結です。
※私は当時極めて慎重な性格であった為、
A-book、B-book共に為替で凍結された事は一度もありません。※

その結果、私はB-book攻略ではなく、
A-book攻略へと移行していきました。

A-bookでは、雑なシステム・ロジック・速度ではまったく勝てず、
一つ一つ丁寧にクリアしていく事が求められました。

為替における自動売買の種類

為替で自動売買を行なうには幾つかの方法がありますが、
一番有名なのはMetaTrader(MT4 or 5)でしょうか。

これは、HFTをやろうと思う際にはただのゴミです。

私がHFTを始める数年前まではMT4等でも勝てる時代があったそうですが。
MT4で発注する場合は、30秒程度でリセットされるセッションを継続維持する処理を施して初回認証にかかる500ms程度の時間をカットして高速に発注する等の仕組みを知っていれば勝てる時代もあったみたいです。

ただ、そもそもMT4では VDP(Virtual Dealer Plug in)のようなもので、
お手軽に特定ユーザーの約定を遅らせる、滑らせる、拒否する
が行なえてしまうのでよろしくありませんし。

二つ目に考えられる自動売買方法は、
独自の偽装発注システムもしくはAutoClick等で取引する方法です。

これは、自動売買環境を提供していないブローカーを
攻略する際に必要な技術です。
B-bookで取引する際は使いましたが、遅いです。
ただ、B-book自体がそもそも遅く、
レート更新も500msに一回とかのレベルでした。
とはいえ1ms程度以内には発注するぐらいの速度は求められます。
B-bookは本格的に攻略しない事にしたので、後にお蔵入りしました。

最後に、A-book業者を攻略する際に使ったのはFIX APIというものです。
これは、A-bookブローカーにある程度の額(数百万~数千万)を証拠金として預け入れたら使わせてもらえるようになります。
恐らくA-book攻略には実質これしかないのかと思います。

VPSの選定

HFTを行なうには速度が求められます。
今よく使われているCloudflareのようなものを使っている所は
ほとんど無かったように思います。

ですから、トレースすれば
ブローカーの約定サーバは簡単に割り出せました。
ほとんどが、東京、ニューヨーク、ロンドンのいずれかだったと思います。

VPSの選定は結構面倒だった記憶があります。
今のようにAWS最強でもなく、
むしろアマゾン使うと遅かったりもしましたので、
色々なVPSを契約して速度や安定性を計測しました。

約定サーバまで2~3msが普通で、1ms以下だと優秀(到達早い)
みたいな感じでした。

システムの速度

仮想通貨のようにAPI limitみたいなものはありませんでしたので、
300μsに1回オーダーを出せるぐらいまで速度を上げて、
1秒間に最大3,000回ぐらい発注していました。

これは、今のDEXでの戦いを見ていると
とても遅い部類だと思います。

ただ、当時はこれぐらいが"ブローカー側の"限界でした。

一時さらに速度を向上させて発注してみたら、
ブローカーのサーバがダウンしてしまい、
当時付いて頂いていたブローカーの法人担当者の方に
めちゃくちゃ謝った思い出。
これ以上発注頻度上げないし、セーブして行くから
どうか凍結しないでクレメンスって。

取引結果はどないやねん

結論から言うと確か1,000万円ぐらいしか儲かっていないです。
ちょっと参入時期が遅かったかな。

勝率としては実運用ベースで約80%ぐらいで、そこそこ。
何で100%近くじゃないの?と思われるかもしれませんが、
理由は下記の図みたいな感じ。

画像2

理想とする形は上記だけど、
下記の図のようなイレギュラーも発生するのが現実。

画像3

こんな感じで決済が損切り(スプレッド+手数料)分マイナス
みたいになるケースは一定数存在する。

ただ、為替の場合のスプレッドと手数料は
仮想通貨と比べるとめちゃくちゃ小さく、
1回の損切り≒1回の利確
程度なので、トータルでプラスにする為の勝率は
もっと低くても大丈夫でした。

ここまで来れば一安心。
あとはより効率よく、また、ブローカー数を増やしていけば
大金持ちや!

そう思っていた時期もありました。。

何かがおかしい

上記のように上手く利益が出るようになった時にでも、
約定率はせいぜい10%程度でした。
発注しても90%ぐらいは拒否されていたわけですね。

それでも利益が出ているんだからいいだろうと思っていました。

しかし、この約定率は日に日に下がっていき
ついには0%へ!
発注しても発注しても一切約定しなくなったのです。

口座が凍結されたわけでもなく、発注も出来ている。
それに手数料ビジネスのA-bookなら
あえて拒否するメリットもないはずなのに。

色々と試みたり検証したりしましたが、
解決する事はできませんでした。

当時の私の考えとしては、約定しない原因は
A-bookブローカーの問題ではなく、
ブローカーが注文を流す先、つまり
Liquidity Providerのlast lookにより拒否されている
と結論付けました。

LPにはlast lookという糞みたいな仕組みがあり、
顧客の注文を一定時間保留にする事ができるのです。
※私の浅い知識では誤りの可能性もあります。
ご了承ください。※

イメージ

●わい
発注やで!

▲ブローカー
了解やで!LPに投げるやで!

■Liquidity Provider
何や注文来たけど、注文通してええか検討(Last Look)するやで!



■Liquidity Provider
あかんあかん!この注文通したらわし損するやんけ!
こんなもん拒否や拒否!

▲ブローカー
了解やで!顧客に伝えるやで!

●わい
また振られちゃった・・・

こんなもんやられたらどうしようもない。
やれNDDだの、ECNだの、DMAだの大層な事言っとるが、
汚ぇもんだ。

気を取り直してブローカーを次々変えていったけど、
どこも同じように約定しなくなっていくし、
相手のアルゴも日に日に進化して行く為、
約定0%になるまでの期間もどんどん短くなっていきました。

B-bookは凍結するし、A-bookは凍結しないけど
約定させてもらえなくなる。
この分野で大金を掴むには、
始めるタイミングが遅すぎたのだと痛感しました。
そして、とてもじゃありませんが、クリーンな業界だとは言えませんね。
全ての取引が見える仮想通貨の方がはるかにクリーンです。

じゃあ他のエッジは無いのか?
という事に関しては、過去に幾つかあった時期もあるけど、
今はもう既に何もないんじゃないのかな。

だから私が冒頭に述べたように、
投機の天才で、勝てているなら続けて行くのが良いと思います。
でもそうじゃないなら、
明確なエッジが幾つもある仮想通貨をやった方がいいんじゃないかな
と思います。
これはディスっているつもりではありません。
私の個人的な感想です。

おわりに

そう言えば、先日仮想通貨セミナーに行ってきまして、
「今後何に注力して行くのがよいと思うか?」
という登壇者の方々への質問に対して、
よーぶんさん(@youbun_trader_)が、
「好きな事、やりたい事を突き詰めて行くのが良い」
みたいな感じの返答をされていたのが印象に残っています。

よーぶんさんご本人は、もちろん理解した上で、
あえて言うまでもないだろうという事で
短い言葉にされていたのだと思いますが、
丁寧に言い直すとしたら
「(エッジのある場所で)好きな事、やりたい事を突き詰めて行くのが良い」という感じでしょうか。

私自身は為替取引自体は結構好きだったので、
出来れば続けたかったのですが、
取引の目的を「楽しむ事」ではなく、「稼ぐ事」に置く場合
為替を続ける事はしないと泣く泣く判断しました。

ま、やってみたら仮想通貨も面白かったけどな!

それと、少し意味合いが違ってくるかもしれませんが、
また、たまにツイートもしてたと思いますが、
私はプログラムを書くのはあまり好きではないんですよね。

そこで、プログラムを書くのが大好きな人が身近にいたので
給料を出して雇っています。
逆に彼はエッジ等の事を考えるのがあまり好きではなかったので、
適材適所でやっています。
(二人だったらもう少し結果出せよとか言わないで。二人とも半人前以下の社会不適合者なの。。)

ま、こんな感じでやりたい事をやるには
やらなきゃいけない事(赤字であっても借金してでもお給料払わなくちゃいけないとか)のリスクがくっ付いてくるけどやりようはあるよと。


毎度毎度最後の方になると内容が発散していくのは何故だろうかっっっ!?

70年なら一瞬の夢さ 70年なら一瞬の夢さ
やりたくねえ事 やってる暇はねえ
やりたくねえ事 やってる暇はねえ
--------------------THE BLUE HEARTS-ブルースをけとばせ


何かご意見、ご指摘等ございましたら
とぅいったまで宜しくお願い致します。

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