詰将棋とわたし(1)

1回目です。
図面のすぐ下に作意手順があります。初見なのでチャレンジしたいという方はお気を付けください。

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将棋世界 2001年11月号
作意手順:16桂、イ同馬、23飛、同歩、33銀、同桂、34竜、同馬、14金、同香、13銀まで11手詰
変化手順:イで同香は35銀、同銀、34飛以下早詰

この詰将棋を見ると、鹿児島県の天文館通り、流れる有線の音楽、将棋道場、そして故香西健男先生のことが鮮明に思い出されます。

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この詰将棋を作ったのは中学1年生のとき。当時わたしは鹿児島県の天文館道場に毎週通っており、故香西健男先生に指導して頂いていました。わたしが詰将棋を作ったと伝えるといつも解いて下さり、特にこの詰将棋に対しては「面白いねえ」と、忘れられない鹿児島のイントネーションで、また、いつもそうであったように、穏やかな口調で褒めて下さったことを覚えています。

香西先生は日本将棋連盟から史上3番目にアマチュア六段を贈られた強豪。豪快な振り飛車党で、残念ながら平手で教わる機会は少なかったのですが、二枚落ちや飛車落ちを何十局、何百局と教わりました。私の指将棋の基礎はこの天文館道場で培われました。

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詰将棋の内容について。強力な駒が多数配置されており、持駒も多いため様々な筋が浮かびます。16桂で馬を移動させ、23、33の順で塞いで34竜が作意手順なのですが、この34竜という駒を取る手を入れたのは今の目で見ると大胆な選択です。

心理的に見つけにくいというような効果を狙ったわけではなく、試行錯誤の過程で偶然見つけた手なのでしょう。初手16桂の効果で34竜に同玉は35金の一手詰なので、同馬とするほかありませんが、14金以下詰みとなります。手数を伏せられるとかなりの難解作ではないかと思います。

★下記で手順を並べることができます。
http://yakkun1987.web.fc2.com/tume/nyusen/001.htm

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この頃、どんな詰将棋を創ろうとしていたか?ということを振り返ってみると、こどもながらに「難しさ」「意外さ」を志向していたように思います。当時解いていた詰将棋の本を本棚から出してきたのですが、表紙作と本作は何となく雰囲気が似ているような気もします。

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本作が将棋世界に掲載されたのは2001年の11月号。ちょうどその頃福岡県に引っ越したので、入選をいつどこでどのように知ったか、残念ながらハッキリと覚えていません。もちろん入選したことは格別の嬉しさで、出題ページや解説を繰り返し眺めたものです。少し長いですが、谷川先生の解説を引用します。

強力な馬をどう無力化するか。まず16桂がよく、同香なら35金、同銀、34飛で詰む。 23飛で角筋を通し、33銀で退路封鎖をして役目の終わった竜を34竜と切る。手順前後が利かないところ、 初手25銀や34竜が逃れている、など初入選とは思えない理路整然とした組み立て。 名前、葉書などから学生と推測される。最初から最後までゆるみのない好作。
(将棋世界2001年12月号)

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驚いたことに、本作は将棋世界誌 詰将棋サロンの年間新人賞を受賞しました。その後、さらに詰将棋創作に没頭するようになったのは言うまでもありません。もしこの作品の入選・受賞がなければ、いまわたしは全く違うことをしていたかもしれません。

この詰将棋は、おおげさにいえばわたしを変えた詰将棋なのです。

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回によって文章の長さが大きくバラつくかと思いますが、このようなスタイルでまずは何回か書いてみます。

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