コヒ



六時間働いて  残業を蹴って  三十分分の糖とカフェインを摂りながら逃避の約束を取り付ける  迷うのはどれが響くか  樹海か砂漠かとかどうでもいい  ことを  どうでもいいとわかった上で拘るのは全て忘れたいから  蟠り引金に成って剥がす心臓の真皮  いたい  いたいなあ  慣れているし離れられないから悲しくなんかはないけれど  ただ  泣かなかった彼を知らないまま居なくなったら残りそうな面影を除けておきたかった


三番線  見送ったのはこれで何本目  開け放しのボディバッグから零れそうなお財布とコーヒーと此の頃の温度  留められない生活と滞る音相  僕の其の後と今日の喉奥の衝動は  どうしようと此処からでしか届かないというのに


金曜日に登る階段の色はいつか気付かぬ程に思い出すだろうか  其の場から交じり遇うだろうか  鳴り止まぬトラウマを押し退けるように壊した換気口その向こうへ  踊らせない戦意も吃らせる天使も僕が連れ立ち前日譚にするさ  その先は君の凶暴性だ  殺すことは怖いか  澱むことは怖くないか  本当に越えたかったのならば僕はいつまでだって君と同じだ  だから  そんなに  勝手に寂しさと留めないでくれないか  明かされる痛みに期待を掛ける馬鹿は抱かれなかった彼等ごと煌きたかった  拝啓  薙ぎ倒した薪達へ  偶に凪いで捜して失くしてまた外して  そんなことばかりを繰り返す日々に愛しさを見出ださずして何が明日だ  裸足は騙されたか  剰り有る毎日を限り有る内臓で速める雑な会計が綺麗だった  聞いていたかった  利き手側に立たせる癖があった


君の側に居られるのに君の側に居ようとしない其奴がきらいだ  きらい  きらいかなあ  会ったことも話したことも無いままに只馬鹿だなあという感想だけを膨らませている  そんなふうに扱うならその枠頂戴  きっと僕だけじゃない  みんなそれが欲しい  どうして  そこに居られるのに居ないのに退かない根拠は尚更何  呑気にしていると驚く間も無く失くしていますよ  そう大人しく待つ程良い子じゃない  三回回ってお手してわんの瞬間に瞼射貫いてあげる  抜いて帰る程優しくないやごめんな  ほら  それが謝られた気分





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