“神の通り道”,“天狗の御明” kuro

“神の通り道”
神様は道の真ん中を通ると言われています。
特に神社などの神様の祀られている場所の道の真ん中を歩いてはいけないと言われています。
もし、道を通っている神様の進路をふさいで邪魔をしてしまうと死んでしまうそうです。
私が小学二年生のころの事です。そのころは、アパートの一階の一番奥の家に住んでいました。
秋のある日の夕方、なんとなく家の外に出てると、何となくいつもとちがう場所にいるような不思議な感覚がありました。
自分の家の換気扇が回る音は聞こえるのですが、それ以外の音が全くしていませんでした。
その時間帯は、周りに住んでいる人達が夕飯のしたくをしたり仕事から帰ってきたりする時間なのですが、その日は外にだれもいませんでしたし、夕飯をしたくする音も匂いも無く、周りの家からは人の気配も一切しませんでした。
外に出た私は、家の前にあるアパートの階段に座って空を見上げたのですが、夕日で真っ赤に染まった空には雲が一つもありませんでした。
雲一つ無い夕焼け空がめずらしかったので、本当に雲がどこにも無いのか探していると、私の座っている場所から数十メートル先にある二階建ての家の屋根の上に白い雲のようなものが急に現れました。
雲のようなものは、ものすごい速さでこちらに向かって来ているようで、雲のようなものはやがて雲に乗った人のような形に変わりました。
雲のようなものが二階建ての家を越えると、白い馬に乗った人の姿に変わりました。
馬に乗った人は、黒い縦長の烏帽子をかぶり金と銀の刺繍で模様が描かれた紫色の着物を着てズボンのような物をはいて黒い靴を履いていました。
上の人は私に気づいたようで、少し驚いたように上から乗り出して、不思議そうに私の事を見ていたのですが、その人の顔は青紫色をしていて、目も鼻も口も無いのっぺらぼうでした。
靴は、靴の先が直角に折れ曲がっていて、靴の先が上向きに尖っていました。
白い馬は手綱などの馬具をほとんど身に着けていなく、背中に鞍を乗せただけの姿で、とても優しい顔をしていて夕日をあびてところどころが赤オレンジ色になっていました。
馬の脚は流れるように動いていて、空中をしっかりと走っていました。
やがて、白馬は真っすぐに私の方に向かって来ました。
私の頭の上を通り過ぎる時に見えた白馬のお腹がわは、本来なら影になっているのでしょうが、水色に近い青色にぼんやりと光っていました。
それは、宝石のムーンストーンの光のような光でとてもきれいでした。
馬が通り過ぎた瞬間に、写真にとらないと誰も信じないだろうと考えて、カメラをとりに家にもどった私が外に出てみると、外の世界はいつもと変わらない普通の世界にもどっていました。
アパートの階段を上って白馬がさった西の方を見てみたのですが、そこには真っ赤な夕日があるだけでした。
その時は、写真に撮れなかった事を残念に思ったのですが、たとえ写真を撮れたとしても信じない人は信じないので、カメラなど取りにいかずそのまま最後まで見ておけば良かったと後になって後悔しました。
白馬に乗った人の正体が分かったのも、私が大人になってからなのですが、白馬に乗っていた人の服装は平安貴族が狩りに行くときに着る狩衣で、尖った先が真上に向いている黒い靴も平安貴族が実際に履いていた靴の種類の一つとして実在していました。
霊の中で、白馬に乗る事が許されているのは神様だけなので、私が出会った神霊は氏神などの地域の神様だったのかもしれません。

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