“黒い鬼” ,“生霊” kuro

“黒い鬼”
私が二十代のころ、夢の中で私が黒い鬼になって、天井に向かって何度も飛び跳ねて必死になって自分の部屋から抜け出そうとしていました。
鬼は天井を睨みながら、小さな緑色の炎を吐いていました。
夢を見ていた私がふと我に返ると、布団で寝ている私の上で黒い鬼が上に向かって飛び跳ねていました。
鬼は頭が異様に大きくて短い角が二本生えていて、手と足が長く鋭い爪が生えていました。
私は、その様子を離れた場所から見ていたのですが、必死に飛び跳ねる鬼を見て『哀れ、自分はとうとう鬼になってしまったんだ』と胸が潰れそうなほど悲しくてつらい気持ちになりました。
人の“たましい”には、魂と魄の二種類があります。
人が死ぬと魂は天に昇っていき、魄は地上に留まって鬼になるそうです。
私の魄は生きながら鬼になったのですが、鬼の頭だけが大きかったのは、私の魄が別のものに変化している途中だったからでした。
黒い鬼を見てから数年後の事です。
夢の中で、世間に対してものすごく怒っていた私は、空も海も重たく暗い灰色の荒れ狂う海に飛び込みました。
すると、荒れ狂う海の中から上に向かって真っすぐに、黒い鱗の生えた巨大な龍が飛び出して、口から大きな緑色の炎を天に向かって怒りと共に吐き出しました。

“生霊”
数年前の事です。よく行っていた天然石屋さんの常連客にTさんという人がいました。
個人で花屋を営んでいる五十代の女性のTさんは、神社やお寺に行くのが好きで、お寺などの建物の周辺を歩いていると色々な姿をした仏様が現われるそうです。
神社やお寺などに行った先で写真を撮ると必ず変なものが写るそうで、その画像を見せてくれました。
その画像には、ナマズと人が混ざったような奇妙なものや動物のようなものがたくさん写っていました。
Tさんによると、ナマズのようなものはどこに行って写真を撮っても写っているそうで、Tさんはその霊にずっとつきまとわれているようでした。

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