秘密



私は失踪しようとした過去が2回ほどある。


2016年

1度目は19歳、まだ杖無しではちゃんと歩けなかった頃の話。
歩けるようなりたくて必死こいてリハビリしていても家庭内では罵声を浴びせられていた時ね。
苦しくて堪らなくて一刻も早くこの家から出ようと、20歳という自分で責任を負える歳になったら失踪しようと計画してました。
まあ、両親のガンが見つかり介護をしなくちゃならなくて私は逃げられなかった。




2022年

2度目は25歳、心臓の病気が見つかった時ね。
これからどうなるの?死ぬ?っていう不安と、治らないっていう事実と、何で私なの?っていう悔しさと。
主治医の先生には、薬で発作を予防して症状強い時は頓服の薬使えば大丈夫だよ、また日常生活送れるからね、って言われたけども、先が短いとか生活が制限されるとかそういう事もないって言われたけども。

見つかった当初は発作が起きやすくて周りの人たちにたくさん迷惑も心配も掛けてしまって。それも悔しくて悔しくて。
大好きなライブに行っても全力で楽しめないくらいならいっそのこと行くの辞めよう、音楽から離れよう、そう考えるようになって。

私の事知っている人が誰もいない場所で、音楽とも無縁の生活をしよう。
私の好きが何ひとつ無い生活を。
仕事も辞めて、有金だけ持って、力尽きたらそこで終わり。

本気で考えて計画してました。




2024年

じゃあなんで今、失踪していないんだって話ね。

結局のところ私は、音楽を諦められなかった。
好きを諦めたくなかった。

ただそれだけです。

好きな事があるせいで好きな人たちがいるせいで、何もかも諦めてまっさらな生活を求めていたのも事実。

大事故に遭っても奇跡的に生きていた事、怪我病気してまともな生活が出来ていなかった時期、せっかく全部乗り越えてきたのにこのまま簡単に諦めたらかっこ悪い。かっこよく生きてたい、死に際もかっこよくありたい、かっこつけたい、強くありたい、私は。



好きな事、大切な事を守る強さがパンクだ

これを教えてくれたのが私の大好きなバンドSiMです

大好きで大切なバンドを捨ててノコノコ生きてられっかああああああ
と思った私は音楽業界に飛び込みました。

大好きな音楽、ライブ、大切な居場所であるライブハウス、全部私が守ってやる
経験も知識も全くなかったくせに気合いと根性だけは消えてなかったね。

大袈裟な話ではなくて、私の人生を救ってくれたバンドってのがいて、頑張る勇気をくれた音楽ってのがあって、居場所を教えてくれたのがライブハウスで。
コロナ禍で世間からバッシングを受けたライブとかフェスとか、不要不急だとか言われた音楽に私は生かされてきたもんで、どうしたってこの文化を守りたかった。
同じように音楽を大切にしている人たちがたくさんいる事も知ってるから絶対に諦めたくなかった。

この気持ちを受け取ってくれたライブハウスで今働かせてもらっていて、頑張っているバンドとか楽しそうなお客さんとか毎日のように見ていたら、その姿にまた背中押されて。だから私の周りにいる人たち、みんな報われて欲しい。みんなハッピーでいて欲しい。しんどい時は私が幸せにしてやる。

SiMのおかげで私は今も失踪せずに生活しています。
大好きな音楽がたくさんあって良かったです、本当に。
これからも好きなもんは好きって胸張って言うし大切にする覚悟も持ってるよ

私にとって、「好き」って何よりも正義だから。

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