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#1 自己紹介、あるいは好奇心の履歴書

 継続的に文章を書くうえで、まずは内省すること/書き手として自分がどんな人間であるのかを外部に開示することが必要になるだろうと思った。あまり得意ではないけど、今回は自分自身の話を。

 ここ何年か、学校や仕事以外の場所にコミュニティを見つけて人と知り合うことが多いのだけど、一度仲良くなると、改めて自分のルーツについて話す機会って意外と少ない。最近知り合った人たちの中には、本名や年齢を知らない人もちらほらいる。
 そのくらいの緩さでも人との関係は十分に成立し得るけど、ここでは敢えて、今までの人生で積み重ねてきた文化的地層を明示してみたいと思う。今まで積極的に取り組んでこなかったことをやってみるのがこのスペースのテーマでもあるから。既に知り合いの人たちには改めて、これから出会う人たちには初めましての自己紹介。

 生まれてからの約25年間を本に例えるなら、今は大体4章目くらい。

1章 幼少期-中学

 父の海外赴任の都合で90年代終盤のロサンゼルスで母の胎内に宿り、父が上司と喧嘩したせいで生まれる前に帰国。雪国の辺境にある母の故郷で肺呼吸を開始。小学校までは横浜、中学校以降は新潟で育つ。10歳の時に両親が離婚して母一人子一人の生活が始まる。小学生の頃は絵を描いたり物を作ったり本を読むことしかしなかったので、勉強は嫌いだったけど、国語と図工は好きだった。
 1章の期間で特に好きだった/記憶にあるものを並べてみるとざっとこんな感じ。

  • 『ハリー・ポッター』(映画/本:記憶の中の一番最初に劇場で観た映画は4歳の時に観た『秘密の部屋』。9歳か10歳くらいの時に小説を一気読み)

  • エンヤ(音楽:物心ついた頃からよく家の中でCDが流れていた。母が20歳くらいの時から聴いているらしい)

  • 『アダムス・ファミリー』(映画:幼稚園か小学校低学年の時に観た。なぜかパート1よりパート2の記憶が鮮明にある)

  • 『リトル・ジーニー』(本:小3くらい?の時に読んだ。主人公のおばあちゃんが買ってくれた古いラバランプから魔神の女の子が出てくる話)

  • 『アリーテ姫の冒険』(本:小学校中学年頃、一番最初に触れたフェミニズム文学)

  • メアリー・ブレア(アーティスト:小5の時に、当時通っていた絵画教室の先生に強く薦められて展覧会を見に行った。男性社会の中で活躍する女性像に子供ながらに感銘を受けた)

  • ティム・バートンの『アリス・イン・ワンダーランド』(映画:2010年公開だから、11か12歳の時に観たらしい。世界観が好きすぎて、東京で開催していた衣装とか小道具の展示にも何回か行った)

  • 『ゴーイング・マイ・ホーム』(ドラマ:中2の時にフジテレビで放送していた連続ドラマ。阿部寛が長野県の森で小人を探す話)

  • 群ようこ作品(本:映画『かもめ食堂』を見たついでに原作を読み、ついでに群さんのエッセイをブック・オフで集めていた時期がある)

 ここまで書き出してみると、面白いくらい全てが今の自分の興味・関心に繋がっている。この期間に根っこの部分が確実に育っていたなと思う。

2章 高校

 高校1年生の時に体育祭で仲良くなった理系の先輩たちに憧れて、宇宙に興味を持つ。高校2年生の夏休みにJAXAの筑波宇宙センターで宇宙工学の合宿に参加したり、冬休みに東北大の天文学合宿に参加してみたりした。もう8年も前のことだから研究の内容とかはほとんど覚えていないけれど。村山斉さんの宇宙論の本が初心者にもわかりやすくて面白かった。


 通っていた高校から少し歩くと海があって、よく友達と浜辺を散歩した。日本海側だから、晴れていると放課後に夕日が海に沈んでいくのが見える。10代はあまり良い思い出ばかりではなかったけど、学校裏の海の景色はずっと原風景として記憶の片隅にある。

3章 大学1-2年(コロナ前)

 1年間の浪人期間を経て、紆余曲折あって多摩美の芸術学科に入った。科学の領域に寄り道してみたけど、結局芸術とか文芸の世界に戻ってきてしまった。芸術学科は美大の中でも特殊で、制作ではなく大半の成績がレポート課題で評価される。学科内には美術史、キュレーション、民俗学、映像、美学、詩学などなど、多種多様な専門分野の先生たちがいて、みんなかなりキャラが濃かった。
 中でも一際異彩を放っていたのがケルト芸術研究家の鶴岡真弓先生だった。入学前に学科のホームページを見ていた時に、直感的に「この先生に教わりたい」と思ったことも進学理由の一つだった。思い返せば、中学生の時にNHKの番組でユーミンと共演していた鶴岡先生を見ていたし、物心つく前からエンヤのケルトミュージックを聴きまくっていたのだから、きっと存在が無意識に刷り込まれていたのだと思う(エンヤも鶴岡先生と映画で共演している)。先生が授業中に「芸術とは魔術です」と言っていて、その時は「また何かやばいことを言い出した」と思って、とりあえずノートにメモしたのだけど、この言葉が今になって大きな意味を持ち始めた。この話はまた別の機会に。

 1-2年次はおそらくどの大学の学科もそうであるように、ひたすら必修科目に食らいつく日々で、空いている時間にはよく図書館で映画を見て過ごした。大きなシネコンで上映しているようなエンターテイメント作品ではない、いわゆるアート・フィルムを観始めたのも入学直後の頃だった。劇場で、配信で、図書館で、気になるタイトルを手当たり次第に、この時期は年間100本くらいの映画を観ていた。
 学芸員課程を取っていたから美術館の運営に関する授業を多く取っていたけれど、それよりも民俗学とか人類学とか、体系化された美術界の外にあるものに次第に心が惹かれていった。ジェンダーやフェミニズム、人種問題に対して何となくの関心を持ち始めたのもこの頃だったと思う。

 メインストリームの外にあるものへの興味は大学後期にも続いていくのだけど、書き始めたら思いのほか長くなってしまったので、続きはまた次回で。


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