境界

世界一大好きな恋人を泣かせてしまった

同期に”網走”と呼ばれたことのある恋人は
見た目とは裏腹に結構泣き虫で
これまでも何度か泣かせてしまうことはあったのだけど
いつもその理由がわたしからの理不尽なわがままで
今回も例にもれずそのようになった

彼は休みの日は必ず職場まで送り迎えをしてくれる
わたしの外出時も時間が合えば車を出してくれる
自分が休みの日は働いている私のために
好きなお菓子や軽食を買ってきてくれる
情緒が不安定なわたしが泣いたり苦しんだりしていても
へんに反応せず黙って抱きしめて背中をなでてくれる
本当は女友達がたくさんいるのに
彼女たちと線を引いて積極的に関わらないでくれる
職場だって9割女性なのに女性と連絡をとっている様子すらない

わたしに対して愛とやさしさをこれでもかと態度でくれる
そんな人だから安心だし、信頼できているし
まるで大嵐の波のようなわたしが凪いでいられているのは
彼の功績が結果として表れているからだと思う

わたしは自他境界が曖昧になるよう育てる宗教に在籍させられていた
その結果普段は過剰に他人に対して引いている線を
恋愛関係になると乗り越えて境界を曖昧にしてしまう癖がある
平たく言うと期待してしまう
期待して、望みどおりにならずに(なるほうがおかしいのに)
勝手に悲しくなって、それをぶつけて
相手に無力感を植え付けてしまう

昔は誰彼構わず期待をぶつけては勝手に傷つく
繊細ヤクザか当たり屋のチンピラみたいだったが
今は恋人以外の他者にはできる限り期待しないようになった
それなのに、今でも恋人ならそうしてくれるはずだと
恋人に対してだけ甘えと期待を消すことができない

わたしは恋愛をベースにした人間関係を
構築してはいけないのではないだろうか
本当は結婚なんてしてはいけないんではないだろうか
わたしが幸せになるために
誰かの人生をめちゃくちゃにしてしまうんではないだろうか
穏やかな熊のような優しいこの人を



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