好きな人へ。好きだ。死んでくれ。(作:後藤ケンタ)

今日、久しぶりに好きな人に会った。ただただ可愛すぎて心臓が本当に痛くなった。真っ黒でサラサラな髪も、本当に透き通っているガラスのような白い肌も、超塩顔なところも、笑うときに声が息と混ざって軽くなるところも、何を考えているのか分からない目線も、全部かわいくて全部だいすきだ。大げさじゃなく、世界で一番かわいいと思う。初めて見た時から世界で一番かわいかった。誰よりも好きだ。だからこそ、今日でもうバイバイなのが本当につらい。明日が来る前に死にたい思っている。

本当に本当に本当に今日でもうバイバイなんですか。もう一生会えませんか。なんで突然「純くん(好きな人の彼氏のことです)と結婚して、純くんのアメリカ転勤について行く」なんて言うんですか。あんなにたくさん同じ時間を一緒に過ごしたのに。一緒に映画を見たり、世界一うまいクレープを食べたりしたのに、一人だけ幸せになるなんてずるくないですか。確かに「一緒に生きていこう」とか「一緒に死のう」とかそんな口約束はしてこなかったけど、全部なかったことになるんですか。俺は君の過去にすらなれないんですか。とてもきれいな思い出とか、あるいは例えば、二人で人の悪口を言ったり、人を見下して笑ったりしたような決してきれいじゃない思い出も、なにもかも全部なかったことになって、結婚して君は東京からいなくなって、東京どころか日本からもいなくなって、俺はどうすればいいんですか。君と知り合って間もない頃に君が俺に「優しい目をしてるね」って言ってくれたから、最悪人間な俺も少しだけは他人に優しくできるようになれたのに。「ケンタ君が隣にいるの、なんかいいね」って言って君が笑ったときの笑顔、声、部屋の温度、流れてた曲、忘れらんないです。多分、ずっと。ドラマを全話ぶっ通しで1日中見たり、二人しかわかんないような話を二人でずっとしてた時間、ほんとに幸せでした。てかなんかもうほんとに好きな人死んでほしい。せめてまだ1ミリでも俺のこと覚えてくれてる内に死んでほしい。君は死んだら天国に行くだろう。かわいすぎるから。俺は死んだらどうせ地獄に行くだろうし、ちょうどいいと思う。もう二度と会えないならせめて、一番遠いところに居たい。

もう会えないことを知った俺は死にそうな顔で俯いたまま動けなくて、君は君で「穏便に離れられるのはありがたいけど気まずい」みたいな感じで、居心地の悪い沈黙が続いていた。しばらく経って、俺たちは同じタイミングで鼻をすすった。別に目も会わなかったしお互い何も言わなかったけど、その瞬間だけが全てだった。

それで、なんやかんや色々と話とかが終わったあと「最後だし1つだけお願いなんでも聞いてあげるね」って言われた。どう考えてもお願いなんて1つしかないやろ!結婚中止!まじでそれだけ!

まじでやってられん。もう本当に俺もアホなんでね、「1つだけお願い聞いてあげる」って言われて「幸せになってくれればそれでいいよ」とか言ったんすよ。もうね、ほんとにアホかと。最後までいい奴ぶりたいのが見え見えで本当にサムい。「結婚中止」のたった4文字、簡単なことなのにどうして言えなかったんだろう。マジで死んでほしい。←俺が。ほんまに生きる希望がすべてなくなった。最悪人生栗崎である。←なんか気の利いたこと言いたくて「最悪人生狂い咲きである。」って書こうとしたのにタイピングミスのせいで栗崎とかいう知らん奴が急に登場して一瞬で鬱病になった。なんかもう、普通にすべてがどうでもよくなってしまった。結婚してアメリカでもどこでも好きなとこに行けばいいんじゃないですかね。俺のことなんか忘れて幸せになってくださいよ。それでいいと思います。いや、すみません嘘です。俺のことずっと忘れないでください。


作:後藤ケンタ
『後藤無線』主宰。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?