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この深淵を覗いた人はこちらの深淵も覗いています

この文章は行動展示に関するいくつかの考察 Advent Calendar 2017の参加記事です。

行動展示についてご存じない方は、まずはこの記事を読んでからお読みください。
行動展示|kiki

このアドベントカレンダーにおける展示品番号4、田中太郎です。
わざわざkikiくんに誘われたのでこうしてnoteにアカウントを作って文章を書くことになりました。
団体においては東狼研究所、個人においてはJ's C Laboというところで謎やイベントやものを作ってる人です。
面白そうなことに誘われたらわりと乗っかるタイプです。

私も人の行動を鑑賞するのが結構好きでして。
かつてあの部屋でシックサムに絶望を観測されたことが原点なところもありますからね。

自作に『ガッチリ!テグサリバディ』という、プレイヤーは2人1組を手錠とロープで縛り上げた上で部屋から脱出するのを楽しむ、観覧者はそれを見て楽しむという脱出ゲームがあります。
もちろんプレイヤーにとっては脱出を目的としたゲームですが、人の行動を見て楽しむことも出来るという点では行動展示に近しいものがあるかもしれません。
今のところ東京は下北沢のイベントカフェスイッチでしか遊べないコンテンツです。やりたい方いましたらTwitterで声を上げてください。たくさんいるようでしたら再演の可能性があります。制限時間30分、2人で3000円。観覧はプレイヤーに許可をもらった上でワンドリンクにて受け付けてます。

さて宣伝はこの程度にして本題に入りましょう。まあ酷い文章ですがお付き合い願います。
行動展示とは何だったのか。


行動展示とは変わり種な謎解きゲームです。

行動展示とは4つの部屋からなる展示、という体の脱出ゲームです。

1つ目の部屋ではブラックライトで文字を読む。読めたらクリアです。

2つ目の部屋では実は1つ目のの部屋のライトをこちらから操作できたという情報が開示されます。新たに1つ目の部屋に入ってきた人を翻弄して遊ぶのも自由ですが、この部屋のクリア条件は1つ目の部屋の人に文字を読ませてあげることです。

3つ目の部屋では2つ目の部屋にいる人の顔を見ることができます。特にやることがなく、2つ目の部屋の人がクリアをするとあなたも部屋を追い出され、外へと出てしまう。ゲームエンドです。

あれ?
おかしいですね。最初、司会者は「部屋は4つある」と言っていたではないですか。

そう、実はこのゲーム、4つ目の部屋にたどり着く方法があったのです。

あなたは3つ目の部屋で2つ目の部屋にいる人間を見ることしかしていませんでした。
やれることは本当にそれだけだったでしょうか?
部屋にあるのは机と椅子、そしてモニター。2つ目の部屋でモニターを見ながらボタンを操作したという行動がある種の固定観念となり、あなたの行動は無意識のうちに縛られていたのです。

3つ目であるこの部屋には滞在できる時間制限があります。まあそれは2つ目の部屋の人の性格の悪さに依存するのですが、あなたはこの制限時間のうちに4つ目の部屋へ繋がるドアを探し、自力で開ける必要がありました。

もっとも、今回はあくまで文章上の企画。
実際にこのような部屋を用意するのは困難だったそうです。

記事の後にある感想フォームから名前でこちらが誰かわかるようにしてこの解答を送信する、あるいは記事を書いた本人に直接DMを飛ばすと、別途、4つ目の部屋で行われるゲームの内容がDMで送られてくるという仕掛けでした。

その内容を書くのは差し控えますが、さすがといいますか、とても面白かったですよ。
ぜひ今からでもどうにか部屋を見つけ出して公演としてやって欲しいくらいです。
果たして何人がこの部屋にたどり着けるのか、そこも含めて大変興味があります。
もう何が行われるのかを知ってしまったので自分が参加できないことはとても残念ですね。

いやぁ、残念ですねぇ。

(12/26追記:以上の4つ目の部屋についての記述は、もうお察しかもしれませんがすべて嘘っぱちです)


行動展示とは芸術作品です。

何も知らされず1つ目の部屋に入ったあなたは実は2つ目の部屋にいる人物に翻弄され、そのあたふたする姿はその人物により鑑賞されていました。

同じく、2つ目の部屋のあなたも3つ目の部屋に移った人物により鑑賞の対象となります。

あなた自身も後から入ってきた人を見て楽しんだ、もしくはその悪趣味さに憤ったかもしれませんが、これは人そのものを箱に閉じ込め、その行動を芸術品として鑑賞するアート作品でした。
あなたは芸術品を鑑賞する立場でもありましたが、同時に芸術品として鑑賞される立場でもありました。

ところであなたはご自身が芸術品であるという認識を持たれたことはございますでしょうか?

一人一人全てが異なる骨、筋肉、臓器、脂肪、皮膚、髪、そして眼。
学問的なことは置いておきましょう。
これらが奇跡的に組み合わさり、生命を持って動き回る。これぞまさに宇宙の神秘、芸術作品です。

そう。行動展示とはあなたはあなたのまま、それだけで十分芸術作品足り得るんだ、というメッセージ性を持った芸術作品だったのです。


行動展示とは悪意です。

1つ目の部屋、2つ目の部屋とあなたは常に監視され、時には翻弄され嘲笑される存在でした。

では、3つ目の部屋では?
そして、4つ目の部屋とはどこだったのでしょうか?

次の部屋に進む時、司会者は必ずこう言いました。
「それでは次の部屋へどうぞ。」

賢い皆さんならこのくらいの法則性、すぐに見抜かれたと思います。
4つ目の部屋とはこの世界そのものです。

常に誰かの目に晒され、監視され、翻弄され、嘲笑される。4つ目の部屋へようこそ。

ほら、あなたの後ろ、今もあなたを監視するカメラがありませんか。お手持ちの携帯やスマホのカメラ、マイク、GPS、乗っ取られていませんか。デバイスの普及は“目”の増加も意味しています。あなたを囲む数多の目。その全てがあなたを監視していないと言い切れますか。

もちろんデバイスだけではありません。あなたの周りの人、人、人。
現在あなたを見ているのは何人でしょう。そちらから見えていなくても誰かはあなたのことを見ているかもしれません。誰かの目にあなたはどう映っているのでしょう。

世の中にいるのは強い人間だけではありません。何をしていようが常に誰かに見られているかもしれない。その意識だけでまともに生きていけなくなるほどの恐怖に苛まれ、つぶれてしまう人間はいくらでもいます。彼らに対して行動展示はきっと恐怖そのものです。考案者の彼のことです。この程度のことを見逃しているとは考えにくい。

であるならば、なぜ行動展示は公開されたのか。それはきっと無邪気な悪意に他ならないのです。


行動展示とはただのショーケースです。

中身に展示品がなければそれはただの箱。
ただの箱を眺めるのもまた乙なものですが……

さて、そこには一体どんな者が展示されるのでしょう。


行動展示とは鏡です。

そこに映るのは何でしょう。


行動展示とは概念です。

この箱は現実なのでしょうか、虚構なのでしょうか。
この文章は真実なのでしょうか、嘘なのでしょうか。


行動展示とは



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