17. なくした物のことを思うといつでも悔しい

去年悔しかったこと、気に入ってつけていた腕時計を運転中に落とした。

まだ、夏の暑さが尾を引いていた頃、バイトでの振る舞いも慣れ、いつも通りバイクに乗って客の家に向かっていた。まあまあ大きい交差点で信号待ちをしている時、俺はいつもつけている腕時計を落とした。止め具が緩んでいたんだろうと今は思う。まだ半袖の季節だったし金属が弾ける音が突然したので落としたのにすぐ気づいた。
バイクから物を落としたことがある人は知っているだろうが、バイクから物を落とすと意外に拾うのが手間がかかる。跨ったままの体勢から地面に落ちている物に手を伸ばすことは不可能だし、拾いに行くにしても一旦エンジンを止めてバイクから降りなくてはならない。落としてから、俺はこのままエンジンを止めて拾おうか、少し先まで行って路肩に止めてから拾いに戻ろうか(交通量の多い交差点だったし後続車もまあまあいたからさすがにね、と思った)、と考えてる最中に、信号が青になった。俺は、配達の最中ということもあり、その腕時計を捨てる判断を瞬時に下し、青信号に従って時計を置き去りにした。

この時のことを思い出すと飛影が躯の下で骸の部下である剣士と修行をしているときに、わざと左腕を捨てて相討ちに持ち込んだことを思い出す。

これと全く同じことが去年ありましたという話でした。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?