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Adri Niño

〜フットボールの歴史に名を刻んだ新たな「ニーニョ」〜

Profile 

Name: Adrián Niño Heredia
Japanese notation: アドリアン・ニーニョ・エレディア
Category: Juvenil A
Country: 🇪🇸
National team: Spain U-19
Position: CF/RWG/AMF
Date of birth: 2004/6/19 (18)
Foot: Right

フェルナンド・トーレスの愛称と同じ名前を持つアドリアン・ニーニョ。

「エル・ニーニョ」直訳すると「子供」を意味するが、時たま「神の子」とも訳される。この愛称で親しまれたアトレティコの伝説、フェルナンド・トーレスがデビューしてから、すでに20年以上の月日が流れた。ガビ、コケ、サウール、トーマス・パーティー、リュカ、ロドリ、パブロ・バリオスなど錚々たる選手を輩出してきたアトレティコのカンテラだが、トーレス以来、トップチームに定着したストライカーは、誰1人としていない。しかし、そんな時代に終止符を打とうとするデランテーロが、今カンテラから現れようとしている。その者の名はアドリアン・ニーニョ。「ニーニョ」である。トーレスのニックネームと同じ苗字を持つこの18歳の青年は、アトレティコのエースになる運命なのだろう。”フェルナンド・トーレス監督”の指揮下でプレーするニーニョは、DH5(リーグ戦)で24ゴールと圧巻の数字を残している。そして、UEFAユースリーグでは、6試合で7ゴールをマークし、GS全6試合で得点というキリアン・エンバペ、ジョアン・フェリックス、エーリング・ハーランド、ユスファ・ムココといったスターでさえ成し得なかった、大会史上初の快挙を成し遂げている。コルチョネロスに「エル・ニーニョ」を連想させる、期待のアンダルシア人にフォーカスを当てる。

生い立ち

世界遺産アルハンブラ宮殿やメスキータなど、約8世紀に及んだイスラム支配の跡を色濃く残すアンダルシア州。その最南端に位置し、地中海の入り口に面した要衝カディス県ロタ。アドリ・ニーニョは、スペイン有数のリゾート地として賑わう人口約3万人のこの港街に生まれた。

地元ロタのクラブであるUDロテーニャのカンテラでボールを蹴り始める。
2013年、アンダルシアの名門であるカディスCFのカンテラに移籍。3シーズンを過ごしたが、インファンティル昇格のタイミングで古巣UDロテーニャに復帰した。その後、14歳までロテーニャでプレーし、2019年にアトレティコ・サンルケーニョに加入した。15歳ながら飛び級でフベニールを主戦場に活躍し、U-14、U-16と各年代のアンダルシア州代表にも選出され名を揚げると、サンルケーニョ加入から、わずか1年でアトレティコ・マドリーに引き抜かれた。

ニーニョが生まれ育ったアンダルシア州カディス県ロタ。カディス湾に面した港町だ。

歴史の中へ

アトレティコ・マドリーでは、同い年のカテゴリーで常にエースに君臨し、フベニールB、マドリレーニョ・フベニールAと順調に昇格した。21/22シーズン開幕直後の9月にU-18スペイン代表招集を受け、2021年9月1日、U-18ポルトガル代表戦で世代別スペイン代表デビューを飾った。同シーズン、DH7(リーグ戦)でチーム内得点王に輝き、シーズン途中にモロッコで行われたトーナメントの決勝では、直接FKから決勝点をマークし優勝に貢献した。

22/23シーズンはクラブのレジェンド、フェルナンド・トーレス監督率いるフベニールAに昇格した。チーム事情により本職のウイングではなく、2トップの一角として起用されているが、この苦肉のコンバートが大当たりだった。
開幕から得点を量産しており、DH5ではピチーチ賞争いで独走状態に入っている。UEFAユースリーグでもその勢いは止まるところを知らず、6試合7ゴールを記録。UEFAユースリーグのGS全6試合でゴールを記録した史上初めての選手になった。得点ランキングで3位タイにつけ、アトレティコのベスト16ストレートインの立役者となった。アブデとコンビを組む2トップは、ヨーロッパ1の破壊力を誇ると言っても差し支えない。
このセンセーショナルな活躍により、2022年10月にはU-19スペイン代表初招集を受け、1年以上遠ざかっていた世代別代表に復帰を果たした。その後は常連に定着し、U-19日本代表や、U-19イタリア代表との試合に出場した。サウジアラビア戦で世代別代表初ゴールを含む2ゴールをマーク。代表の舞台でもその得点能力を遺憾なく発揮した。
2023年2月13日には、アトレティコと2027年まで契約を延長したことを発表。契約解除金は6000万ユーロ〜8000万ユーロという異例の金額に設定された。2022年夏の移籍市場で長年続いた紳士協定を一方的に破棄し、ヘスス・フォルテアを強奪したレアル・マドリーが引き抜きを画策していたが、アトレティコはカンテラ有数の宝石を防衛することに成功した。

1年以上世代別スペイン代表から遠ざかっていたが最近は常連に定着した。

アトレティコのエースになるべき宝石

現在、アトレティコ・マドリーのフベニールAで、フェルナンド・トーレス監督の下でプレーするニーニョはストライカーとして旋風を巻き起こしているが、CFだったトーレスとは違い、本職はウインガーである。しかも、現在のトレンドである逆足のウイングではなく、利き足のサイドでプレーする古典的な右ウイングだ。ポジションからもわかるように、最大の武器はドリブル突破だ。一瞬のスピードを生かした縦突破と、敵にボールを晒しながら中に切り込んでいくドリブルを使い分け、突破後は精度の高いクロスや、レーパートリーが豊富なラストパスでチャンスを生み出す。
しかし、CF起用されている今シーズン最も際立っているのはシュートである。ほとんどのシュートを枠内に飛ばす精度が最大の特徴であり、サイドからのクロスに合わせるシュートはほとんどゴールに吸い込まれる。右サイド時代に培った対角を射抜くフィニッシュにも自信を持っている。また、右足には強烈なキャノン砲を備えており、ペナルティーエリア外からもゴールを狙えるシュートレンジの広さも魅力の一つだ。ウイングとしてはサイズがあり、ヘディングからの得点も狙える。PKキッカーとしても非常に優秀であり、普段はエゴを出さず適切な状況判断でプレーを選択するが、PKだけは何があっても譲らない。直接フリーキックからゴールを奪うこともでき、非常に欠点の少ないFWだ。チェイシングをかけ続け、敵のミスをかっさらいゴールを決める姿は、アトレティコのレジェンドであるジエゴ・コスタやカンテラ育ちのジュリアーノ・シメオネと重なり、エリア外からの強烈なシュートはディエゴ・フォルラン、巧みなポジショニングでゴールを陥れる様はセルヒオ・アグエロ、シュート精度の高さは、アントワーヌ・グリエーズマンやルイス・スアレス、スピード豊かなドリブル突破からのフィニッシュは、フェルナンド・トーレスとダビド・ビジャを彷彿とさせる。

アドリアン・ニーニョは、名前が語るようにアトレティコのエースになることを運命づけられたダイヤの原石だ。すでに才能の片鱗を見せているが、まだこれは一片に過ぎない。まだまだ磨くことができ、磨けば磨くだけ最高級の輝きを見せるダイヤなのだ。アトレティコの歴代のエースの面影が見え隠れするスケールの大きさは、きっとコルチョネロスに夢を見せてくれるだろう。いや、彼の活躍をトーレスの姿に重ねている我々は、すでに夢を見始めているのかもしれない。

ピチーチ賞争いでトップに立つニーニョ。その勢いは止まるところを知らない。

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