【小説】#5ワーク、アフェア、ジョブ
第5章
共存と確執は静かに同居する
“2020年 慣性”
伊治原京子は記録室にある、自分の机に座っていつものように学会誌を読んでいた。隣では熊田が電子カルテを操作していた。
伊治原はあれ以来、自分が何をしたのか分かっていないようで、ついには瑠偉を出入り禁止にしていた。にも関わらず、スタッフたちには無邪気に話しかけてくるのだった。いや、というより自分の考えなりを披露したがっていると言った方が正確かもしれない。
と、伊治原が息を呑んで学会誌をめくる手を止めた。そして