年月

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※マガジン「自伝的ぽえむ」
https://note.mu/9ingum/m/m63c6b2e54589
からの抜粋(無料版)です。

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うちの猫(同居人/人間/愛称が猫)が
病院に行くのについてきてくれたら代わりに買い物に付き合うというので
二人で病院に行ったら受付時間過ぎてて、
薬を貰うだけだったので緊急ではなかったけれど
なんとなくしょんぼりして、その勢いで近所の喫茶店に入った。

喫茶店はアンティークぽいおされな感じで、
窓越しに見える店主さんやお客さんを見ても
どうみてもマダム向けのお店だったので
これまでは躊躇して入れなかったけど、今日はなんか勢いで入れた。

入ってみてよかった。
雰囲気がすごくよかったし、何よりどれもこれも美味しかった。
本物、って感じの味がした。

喫茶店でジュース一杯400円とかするの
正直ちょっと高いなあって思ってたんだけど、
こういう選んでひとつひとつ手作りしているような特別なものを
選んでひとつひとつ手作りしたようなアンティークな特別な空間で
食べられるなら、全然高くないなあ、って思った。

二人で感嘆しながら食べている途中で、
猫が言った「テーブルに色がついた」って言葉が印象に残った。

アールグレイの器の赤。りんごジュースの黄。
コースターの青。シフォンケーキの緑。ほんとうだ。きれいだ。

店を出てからよく見てみたら、店は隣の家とつながっていて、
「もしかして、自分の家を改造してリビングの部分を店にしたんじゃない?
メニューつくってるのもなんか普通のキッチンぽかったし」と猫が言った。

確かに、それなら納得できる。

店内のバラバラだけどどれも可愛いアンティークな猫の置物も、
絵本も、食器も、水彩画も、なぜかそのもの以上の年月を感じて、
一朝一夕に集めたものには見えなくて。

だからこれはきっと、
店主のマダムが趣味で少しずつ集めたんだ。そして趣味でお店を開いたんだ。

夕方の外は雨で、喫茶店の中はゆっくりと時間が流れていて、
このまま時間が止まったらいいのに、と猫は言うけれど、

こんな素敵な空間がつくれるなら、
こんな素敵なお店に躊躇いなく入れるなら、
もう少し年をとってもいいかな、とわたしは思った。

(2014/08/19 23:55:14 pplogに投稿)

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