見出し画像

韓国ふらふら

今年は去年以上に海外に足を運ぶ、毎月1回はどっか飛んでやると決意していたはずなのだけどコロナ禍で当初の予定が狂ってしまった。そんな中、年初に行けた国の1つが韓国。結果として2020年は人並みより少しは韓国に触れることになったと思うので備忘録を兼ねて振り返ってみたいと思う。

〇音楽

日本に留学していた友人の兵役が終わったとの報せを聞き、旧交を温めるため2月上旬にソウルに行くことにした。最近、というかこの頃は旅行の度にクラブやライブに足を運ぶことが習慣だったので旅程中のスケジュールを確認してみたところHYUKOHとYerin Baek(백예린)のライブが行われるとのこと。HYUKOHは日本にも頻繁に来てくれるしまたの機会に…と決めてYerin Baekのライブに行くことに。結果としてYerin Baekはコロナによるキャンセルが出たおかげ(渡航を1週間前に決めたのでそれから空き時間はチケットサイトとにらめっこしていた)でチケットを確保でき、一方でHYUKOHはライブをしばらく見られなくなったので嬉しさ半分、悲しさ半分といったところですね...。

上に貼り付けた動画を見てもらえば伝わるかもしれないけれど、YES24 LIVE HALLで観たライブは自分の中の漠然とした“K-POP“というイメージとは違い、ソウル~インディーロック風味のポップスをバックバンドのどっしりとした演奏を背に歌う正統派かつ充実したものだった(強いて言えば花澤香菜さんがディスティネーションズと組んだライブのようなフィーリング)。このBerlin~Merry And The Witch's Flowerの流れ現地で見たときはめちゃくちゃしびれたな~~!

そして歌と演奏以上に感激したのはファンダムによる、青いバラを振りながらの『Bye bye my blue』や『Square』での声援だった。ファンダムの後押しには功罪あるとはいえ、仙台でのWake Up Girls!のライブや台北での星野源ライブ、パラダイスでのセルティックファンと同じような熱気を感じて、そして彼女が涙ぐむ姿を見て熱い気持ちになる。こういう感情は万国共通なんだろうな、とライブ後にふと思ってしまった。

Yerin Baekは昨年末に新譜「tellusboutyouself」を出していてこちらもダンスミュージック然とした曲も織り交ぜた素晴らしい作品だったのでぜひ。私は1stよりこっちの方が好みです。

旅行の余談になるけれど、レコード/CDショップとして面白かったのは弘大にあるGimbab Records(김밥레코즈)。現代ジャズ、韓国~英米のインディー、様々なカセットテープが狭い店内に幅広く揃っていて、お客さんの声に答えて山積みの在庫からお探しの1枚を探し当てる店員さんが印象的だった。Spincoasterでもインタビューしてたみたいなので貼っておきます。

また今年はナタリーでも脇田もなりを起点とした記事が出ていたり、Night TempoはもちろんYUKIKA「서울여자 (SOUL LADY)」、Bronze「Aquarium」(『Orange Road』という曲名はきまぐれ☆オレンジロードから来ているんだろうか?)があったりと韓国におけるシティポップの話題にも事欠かなかったけれど、その盛り上がりをGimbab Recordにて次々に売れていくレコードから肌で感じた。最近読んだ韓国文学、パク・サンヨン「大都会の愛し方」の韓国語版の表紙も永井博のイラストで、シティポップ/ニュートロのイメージの浸透度にびっくりするなど。

このライブに感激して春以降もプレイリスト等経由で韓国の音楽作品をそれなりにチェックしている。twitter上ではTURN辺りに寄稿しているライターの山本大地さんや韓国音楽メディアBUZZY ROOTSのK-INDIE CHARTあたり、プレイリストでは韓国の配信ブランドPOCLANOS(これは春に手に入れたASIAN MUSIC GUIDEで知りました、タイ/台湾方面のディグにも重宝してます)あたりを見ていることが多い。あとはYouTubeチャンネルのAZIT LIVEONSTAGE1theKなども見られればいいのだけど時間が足りない…。

これらでチェックした作品の中で2020年1番ハマったのはFisherman(피셔맨)というプロデューサーの「The Dragon Warrior」という作品。ジャズやヒップホップを軸に耽美的な音作りがなされていて、FKJ、Moonchild、Salami Rose Joe Louisなどが好きな人はぜひ聴いてみてほしい。

〇文学

三美スーパースターズ」「82年生まれ、キム・ジヨン」といった作品は以前読んでいたけれど、今年に入って韓国文学をぼちぼち読むようになったのは韓国帰りに立ち寄った名古屋の書店"ON READING"にて「目の眩んだ者たちの国家」を見つけたことがきっかけだった。

「目の眩んだ者たちの国家」は2014年のセウォル号沈没事故、本書内のパク・ミンギュの記述に則るなら”国家が国民を救助しなかった「事件」”について小説家らがエッセイを寄稿した本で、この本の寄稿者を中心に様々な本に手を付けていった。

セウォル号/キャンドル革命を背景に書かれたファン・ジョンウン「ディディの傘」、様々な喪失を描いたキム・エラン「外は夏」、チョン・イヒョン「優しい暴力の時代」などは面白さの中に現実の韓国社会の問題を上手く取り込んでいてとても良かった。もちろん日本の文学作品にそういった側面が無いとは言えないけれど、個々の問題が自分事でないからこそ翻って日本や自分の現状はどうだろうかと見つめ直すことが出来たように思う(し、全くの他人事として見てしまうほどの異質性があるわけではないからそのような解釈ができるという側面もある)。そういった意味で韓国文学からは”問題に向き合う誠実さ”を受け取る機会が多かった。

韓国文学の情報に関しては書店のTwitterや棚(本屋TitleReadin'Writin' BOOKSTOREチェッコリ...)、翻訳家の斎藤真理子さんのTwitterで知ることが多い。アトロクの韓国文学特集も良かったですね。

〇ドラマ/映画

4月に緊急事態宣言が出されたことで外出自粛を余儀なくされ、時間を持て余すことになった…ところでNetflixと契約するというお決まりのパターンで韓国ドラマに手を出す。「この前梨泰院行ったからな~」という単純な理由で「梨泰院クラス」から見始めるも本格的に夢中になったのは「椿の花咲く頃」と「賢い医師生活」。特に「椿の花咲く頃」はラブロマンス・サスペンスのハラハラドキドキ感がありつつも親子/夫婦関係の対比的な描き方が見事だった。あとヨンシクのまっすぐさが好き。

映画は「パラサイト」をこれから見るような体たらくなので何も言えないけれど、旧作を含めると「タクシー運転手 約束は海を越えて」「はちどり」「未成年」などの作品は韓国社会やフェミニズム運動を射程に入れていて韓国文学同様に楽しめた。

また完全な余談にはなってしまうけれど、上で挙げたセウォル号沈没事故を遺族側の立場から取り上げた作品「君の誕生日」のラスト付近、事故で亡くなったスホ君の誕生日会を行うシーンの中で「スホ君を思い出す瞬間」を友人が挙げていくシーンがあった。それが書かれた付箋が一瞬画面に映るのだけどその中に”xx say lazy”(xxの部分は他の付箋が重なっていて読めない)という文字が。おそらくアニメ「けいおん!」のオープニング、「Don't say "lazy"」のことだった。

その他の部分の韓国語は読み取れなかったので断言することは出来ないのだけれど、上記の韓国人の友人に社会背景を聴いてみたところ「けいおん!」が韓国の若者が音楽を始めるきっかけになった部分もある、実際に事故にあった生徒が日本のアニメを観られないことを船内で悲しむ映像があった(これはYoutubeにも上がっていたが動画を貼ることはしない)ことを聞いたので恐らくそういうことなのだろう(とはいえ配信等があれば要確認)。同じカルチャーを楽しんでいた同世代が実際に事故に遭ったのだと身につまされる思いになった瞬間だった。

ただ、ここまで諸々書いたけれど1番面白かったのは「エクストリーム・ジョブ」。何も考えずに笑える作品で最高!だったので定期的に見返したい。

ドラマ・映画に関しては月並みにNetflixの更新情報や映画館のスケジュール情報を参考にしてるけど「賢い医師生活」の解説記事が面白かったこのブログは時々覗いたり。詳しい人やWebサイトの情報、あとはNetflixでの韓国ドラマの視聴が「青春の記録」で止まっているのでオススメがあれば教えて頂きたいです...。

以上、2020年の韓国カルチャーを巡る諸々の備忘録でした。2021年はこれらをもっと楽しめるように韓国語の勉強をするのが目標。ハングルの読み方が分かるようになったところで止まっているのでまずは「やさしい基礎韓国語」に手をつけねば...!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?