【EMEA Kickoff】VALORANT KarmineCorpがTeamHeretics戦のLotusで行った対策について

はじめに

 Karmine CorpはEMEA Kickoff Group stageにてTeam Hereticsと対戦した際 Split 4-13、Lotus 4-13 
に終わり0-2で敗北しました。
 しかしPlayoff Grand Finalではこれらのマップを Split 13-5、Lotus13-7 で取得し3-1で勝利しました。
 そこで、これらのマップのうちLotusについてKarmine Corpがどのような対策を行っていたのかについて考えます。


EMEA Kickoff 大会のデータ

各チームのマップごとの勝率

図 各チームのマップ勝率

各マップ試合数

図 各マップピック数(rib.gg)

プレイヤー成績

図 ACS順TOP10プレイヤー(rib.gg)
図 KAST%順TOP10プレイヤー(rib.gg)
図 ADR順TOP10プレイヤー(rib.gg)

TakaSは今大会では2試合・5マップしかプレイしていないものの大会全体でトップのACSを記録している。
今大会で最も多いラウンド数(383 round)をプレイしたKarmineCorpの2人のプレイヤーがTOP10ACSにランクインしている。特に61%の試合でゲッコーとフェイドもプレイしていたにもかかわらず、N4RRATEは2番目に高いADR、最も高いKAST%を記録している。

 次に、今大会で高いクラッチ能力を発揮したプレイヤーを調べるため、「クラッチ数が多く、かつ、クラッチ成功率が高いことを高いクラッチ能力を発揮した」と考える。クラッチ成功率TOP16のプレイヤーのクラッチ成功率とクラッチ数をグラフにすると次の図4のようになった。

図 Cluch成功率 ― Cluch勝利数(データはrib.ggより)

図4より高いクラッチ能力を発揮したプレイヤーはChronicleとMiniBooである。MiniBooは大会で2番目に高いACS、5番目に高いADRを記録している。

 今回の大会の平均攻撃側ラウンド取得率は52.9%、防衛側ラウンド取得率は44.1 %である。ピストルラウンドの攻め取得率は51.4%、防衛側は35.5%である。攻めのラウンドについては他のリージョンよりも勝率が最も高く、防衛側は最も低い。ピストルラウンドも同様であり、他の地域よりも7ポイントほどの差がある。


KarmineCorpとTeamHeretics の大会データ

KarmineCorpとTeamHereticsのマップ試合数とその勝率

図 KarmineCorpのマップ試合数と勝率
図 Team Hereticsのマップ試合数と勝率
  • KarmineCorp

    • マップピックにおいてBreezeをBanしている。Group Stageの最初の2戦では1stピックでSplitを選択していたが、その後の試合では相手にSplitをBanされるようになっていたためSunsetやLotusが多くなった。

    • 図1と図5より、KarmineCorpはLotusを大会全体の56%ほどの回数プレイしているが最も高い勝率を記録している。

Lotusでのラウンド取得率とピストルラウンド取得率

 この大会での平均の攻め側のラウンド取得率は57.8%、防衛側は42.3%である。ピストルラウンドの攻め取得率は72.2%、防衛側は27.8%である。
 KarmineCorpの攻め側ラウンド取得率は61%、防衛側は48%である。ピストルラウンドの攻め取得率は60%、防衛側は40%である。
 Team Hereticsの攻め側ラウンド取得率は76%、防衛側は39%である。ピストルラウンドの攻め取得率は67%、防衛側は0%である。
 どちらのチームも攻めのラウンド取得率は平均よりも高いがTeamHereticsのほうが高い防衛側のピストルラウンド取得率はKarmineCorpは平均よりも高いものの、TeamHereticsは一度も取得できていない

攻撃スピード

・Karmine Corp

図 Karmine Corpのプラント時とプラント前キル時の経過時間


・Team Heretics

図 Team Hereticsのプラント時とプラント前キル時の経過時間

 KarmineCorpは40秒経過時点と70秒経過時点に最も多い13.7%の割合で、その次に多い85秒経過時点に9.8%の割合で設置している。
 TeamHereticsは75秒経過時点に16.7%の割合で設置しており、75秒以降の設置は37.5%の割合である
 したがって、どちらのチームも比較的ゆっくりした攻めを行っていることが分かる。

 次にプラント前のキル発生時間を見ると、
 Team Hereticsは10秒経過時点までのキル発生数が多いことが分かる。
 Karmine Corpは50~60秒でのキル発生数が多いことが分かる。

キル / デス時の位置

  • Group Stage

Karmine Corp

攻撃側

図 Karmine Corpの攻撃時のロケーション

防衛側

図 Karmine Corpの防衛時のロケーション

Team Heretics

攻撃側

図 Team Hereticsの攻撃時のロケーション

防衛側

図 Team Hereticsの防衛時のロケーション
  • Playoff

Karmine Corp

攻撃側

図 Karmine Corpの攻撃時のロケーション

防衛側

図 Karmine Corpの防衛時のロケーション

Team Heretics

攻撃側

図 Team Hereticsの攻撃時のロケーション

防衛側

図 Team Hereticsの防衛時のロケーション

 これらの図から二つの試合を比較する。
 Karmine CorpはGroup StageではC攻めが多かったがPlayoffではAへの攻めの数が多くなったことが攻撃時の図からわかる。また、防衛時については、Group Stageの時点ではメインでのキル・デス発生数が少ない一方で、Playoffではこれが多くなっている。
 Team Hereticsの攻撃を比較すると、Group Stageではリンク前でのキル・デス発生数が少なかった一方で、Playoffではリンク前での数が増加していることが分かる。また、CのCTでのキル・デス数が増加しており、Cの奥まで攻めるような動きが増えたことが分かる。


EMEA Kickoff Group Stage

Lotus

チームスタッツ

図 Group Stageのチームスタッツ(vlr.gg)

 KarmineCorpのFBは3回(攻撃側:2回、防衛:1回)であり、TeamHereticsは14回(攻撃:4回、防衛:10回)であった。

戦略

前半

KarmineCorpの攻撃

図 Karmine Corpの開幕直後の配置

 KarmineCorpはラッシュを行わない攻めで進めていた。ヴァイパーでAロビーをキルジョイのタレットでBピラーをホールドさせながら、開幕と同時にホウントで他の4人でCメインを取得。その後相手のスモークがCメインに炊かれた段階で、ヴァイパーをBメインに移動させてラークをさせながらカーテンを使いAメインを4人でリテイクした後Cへのローテートを行なうことが多かった。このような攻め方はFNATICなど多くのチームでも見られた攻め方である。ハンドガンラウンドも含め 7/12 のラウンド、特に第8ラウンドまでのうち6ラウンドでこのようなCメイン取りを行っていた。このCメイン取りを基軸にラウンドを進めており、第10ラウンドではCメインの入り口にポイズンクラウドを置くことでメインの情報を取らせないセットが見られた。実際、このラウンドではBのタレットを壊した後、扉を回してのCへ圧力をかけた後Aのカーテンとプラウラーを使いAへのローテートを感じさせAメインのオーメンを引かせたのちCへローテートをするという揺さぶりを行っていた。

Cメインをこのように多く攻めていたことで、第6ラウンド目にTeamHeretecsはオーメン、ヴァイパー、ネオンでCメイン攻め対してカウンターを行った。このラウンド以降KarmineCorpはこの動きを警戒しCメインの詰め待ち、Bメイン、広がった配置での詰め警戒などを行った。
 レイズのウルトがあった第11ラウンドではスキルを高く使いAラッシュを試みたが、TeamHereticsがA4配置を取っていたためメイン取得はできたもののサイトには入れず 人倒されてしまいBへローテートしていた。

 B設置後Cリンクを2人のドライでの詰めを倒されたこと、C設置後にサイトに固まったことで裏との挟みに対応できなかったことがあった。設置した9ラウンドの内5ラウンドで解除されており、特に第5ラウンド目以降は爆破は一度もなかった。

 

TeamHereticsの防衛

図 TeamHereticsの防衛側配置

 一方Team Hereticsは、ネオン、ゲッコー、オーメンの3人でメインの確保やカウンタを使った守り方をしており、特にAメインを開幕強く取る動きを頻繁に行っていた。Aロビーにタークカバーを焚きリレーボルトを使ってメインを確保する動きである。攻め側のAメインの反応がない時は、オーメンをがれき周辺、特にがれき上に残すことでネオンとゲッコーをBやCに寄せていた。KarmineCorp側がAメインをリテイクしてくるときはパラノイアを使って進行を遅らせたり、カーテンの手前であるAルートにオーメンが位置することでドライピークを倒していた。
また、キルジョイはこの3人グループとは反対のサイトに配置し自分のサイトにアビティを多く用いることが多かった。Bサイトはキルジョイのスキルを配置することでヴァイパーが引き目で守ることが多かった。

図 第6ラウンド開幕時の防衛側のカウンタ

 また、先述のとおり第6ラウンドにはそれまでCメインをKarmineCorpにとられていたためカウンタを行っていた。アルティメットオーブを取る音がした数秒後にパラノイア、Cロビーへのダークカバー、リレーボルトを入れてハイギアのネオンが倒す作戦であった。

図 カウンタへ行った対策

しかしKarmineCorpはこのカウンタへの対策でオーブ周辺にダークカバーを置くことでCロビーへの射線を遮り味方が退避できるようにしていた。さらに、マウンド奥にシーズとスネークバイト、ペイント弾を使い、サイト入口にはナノスワームを投げることで相手の退路とカバーを塞ぐことでCメインをリテイクし返すという方法を行った。

後半

KarmineCorpの防衛

 KarmineCorpの防衛はサイトに固まったりカウンタを行うといった守り方をしていた。特に、一つのサイトに3から4人寄せるような動きがあったことも特徴的であった。

 ハンドガンラウンドと第16ラウンドではBに3人を配置し、ヘブンでホールドさせるという作戦を取っていた。ハンドガンラウンドではローテートはせず、設置されると同時にヘブンとCリンクからリテイクする作戦であった。第16ラウンドでは開幕後BにアクションがなかったことでBをキルジョイのタレットで守らせて、2人をCへローテートさせていた。
 KarmineCorpはこの試合においてメインを詰める動きは多くなかった。ハンドガンラウンドを落とした次の第14ラウンドでは5人でBを詰める動きがあったが、TeamHereticsは2人でBをホールドしており倒された。第15ラウンド目ではメインに2人を配置しワンピックを狙い成功し、その後のBローテートを読みB4配置をしていた。最終ラウンドではCメインを3人で逆ラッシュをしたものの、TeamHereticsはAラッシュを行いAサイトにいた2人が倒されてしまいラウンド取得には繋がらなかった。

TeamHereticsの攻撃

図 A攻めのセットアップ
図1 C攻めのセットアップ

 TeamHereticsの攻めは開幕後AまたはCのメインを取得する動きであった。
 ハンドガンラウンドではB設置後、オーメンのパラノイアと合わせて2人でアッパーを取りに行く動きを行っていた。Cメインを取りに行く際は他のチームでもよく見られるBピラーを抑えるタレットを置きヴァイパーがAロビーを抑える配置であった。
 3vs4となった第15ラウンドでは設置後ゲッコーがドロップ、ヴァイパーがツリー、オーメンががれきに位置し、広くエリアを取りヴァイパーがメインへ退避できるようにしていた。解除音でそれぞれのモロトフが入りこのラウンドの勝利につながっていた。


EMEA Kickoff Payoff GF

Lotus

チームスタッツ

図 PlayoffGFのチームスタッツ(vlr.gg)

 KarmineCorpはFBを10回(攻撃:7回、防衛:3回)、TeamHereticsは10回(攻撃:5回、防衛:5回)取得している。
 これは前回と比較して攻撃側のFB取得回数が大きく増加している。後述の通り積極的にエリアを攻める動きがあったためであると考えられる。

戦略

前半
KarmineCorpの攻撃

図 KarmineCorpのA攻めセット

 TeamHereticsの3人でのAメイン詰めへの対策としてAメインを5人で開幕直後交戦する素早い攻め方を行っていた。前回の試合ではCメインを取りに行く動きがほとんどであったが 9/12のラウンドでAを5人でAへの侵攻をしていた。カーテンを使ってAルートに入ることでディジーに当たらないようにしつつ、パラノイアとツリー上へのホウントによってファストレーンを使ったネオンやAリンクの箱に隠れていたオーメンを映しキルにつなげていた。このホウントがTeamHereticsのAメイン詰めにとって厄介になっていたように感じる。Aメイン取得後のBへのローテートは一度だけで他はすべてAサイトにプラント出来ていた。また、サイトに入る時ツリーに3から4人で侵入しており、設置後はヴァイパー+1人でツリーから遅延を入れ、キルジョイとオーメンでメインをキープしている。このA攻めは 8/9 ラウンドで勝利している。

図 前回のCカウンタ対策を変更している

 この試合ではCへの攻めは第1・2ラウンド目の前回同様のCメイン侵攻と第5ラウンド目のCラッシュの 3/12 ラウンドだけであり前回の 7/12 ラウンドの半分以下である。またこのCメイン攻めでも前回からの対策が見られた。第1ラウンドでは、前回のCカウンタ対策からアルティメットオーブのダークカバーを除いたセットに合わせてCの入り口にポイズンクラウドを焚くことで、ディジーと合わせた3人のピークをしづらくさせていた。また前回の試合では設置後の勝率が悪かったが、このラウンドではBに設置後アッパーを3人で詰めリテイクを崩しており、前回は少なかったスキルと人数をかけた設置後のエリア取りを印象付けていたがこの後のラウンドではCTを詰めることはなかった。

 全部で11回の設置のうち、Bへの設置は2回、Cへの設置は1回だけであった。

TeamHereticsの防衛

図 前回からスキルを追加したAセットの防衛

序盤は前回同様のAメインをゲッコー、オーメン
、ネオンの3人で強く取りに行く
戦略であったがKarmineCorpの対策により防げなくなっていたため、第8ラウンド目以降はAメイン詰めのセットにがれきへのモッシュピットやCリンクからのAルートへのスネークバイトを追加した詰めやCメインを3人で詰めオーメンを残しエリアを確保する戦略も取っていた。このAメインを取る動きは 7/12 ラウンドで行っており、前回は 9/12 ラウンドで行っていた。またAにキルジョイとヴァイパーを配置した際に、ナノスワームとスネークバイトでツリー侵攻止めを試みていたが階段側から挟まれ、これを止めることはできなかった。

後半KarmineCorpの防衛

図 Aメイン詰めのセット

 全体的にはメインを取得する動きを増やしている。TeamHereticsのように強く取る動きは少なく、安くメインを取得したりゆっくり詰めていく動きが多かった。メインを詰めた5ラウンドのうち多くのスキルを入れて強く詰めたのは1ラウンドだけであった。また、Cメインを詰める際はCロビーにダークカバーを焚きホウントを入れレイズ、フェイド、オーメンで詰めてメインを取得し、オーメンを残して2人がローテートしていた。Bの守りは第15ラウンド目にレイズがメインを抑えたのみで、Aリンクにタレットを置いたり、スキルも人も配置しない守り方をしていた。Aにはキルジョイとヴァイパーを配置していた。

 ハンドガンラウンドでは、前回のBを3人をアッパーに配置する守り方とは異なり、Aにキルジョイを置き4人でCメインを確保した。Aメインを敵に取られた後、Aリンクを割られたため階段を警戒しつつBのアッパーに3人を配置していた。

TeamHereticsの攻撃
 前回と同様にAとCメインを取得し、ラッシュは行わず相手を揺さぶる攻めを行っていた。3/8 のラウンドでAメインを、3/8 のラウンドでCメインを攻めていた。残りはAに2人、Cに3人配置しAメイン詰めを警戒していた。

 Cメインは3人ほどで攻めエリアを取得している。入口にナノスワームを投げてディジーでクリアすることで、Cロビーにスモークが来ても通過することが出来ている。

図 第20ラウンド目のTeamHereticsの攻め

 第20ラウンド目にはCメインにヴァイパーズピットが発動され2人が配置されていたが、オーメンがCのCT側にアルティメットでテレポートしメインからネオンがリレーボルトを入れることでこれを攻略している。また、この後2vs2になりAに設置をしドロップとツリーに分かれていたが、KarmineCorpは2人で固まり行動したため1vs2を2回行うこととなりこのラウンドは取得できなかった。


まとめ

 KarmineCorpは攻撃時には、TeamHereticsのAメイン詰めへの対策がなく毎回Aメインを取られてからの開始となったため人数をBやCに寄られてしまい、また積極的なエリア取りを相手にせず取れるCメインを取得した後にAやBへのアクションで引かせたりスキルを使わせることを狙っていたがあまり有効ではなかったため、攻めのラウンドをほとんど取得できていなかった。これに対してAメインの対策を持ち込みこれを完全に封じられたことで序盤を有利に進め、配置を変更してきたキルジョイとヴァイパーを人数をかけて倒すことによりAへの進行を通し続けた。
 防衛時には最初の試合ではほとんど行わなかったメイン詰めをスキルをあまり使わずに行い敵のエリアを限定しつつ、まとまって行動しスキルを使いリテイク時に一人ずつ倒していくことで攻略していた。


最後に

 ここまでお読みいただきありがとうございました。VALORANTについてまだ勉強中ではありますが、稚拙ながらレポートを作成しました。アドバイスや修正点などございましたらTwitter(@5559aku)にお送りいただけると幸いです。

 


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