発達界隈向け暗黒啓蒙クソデカ情緒お気持ちドリヴン陰謀論カルトテキスト 一緒に『ああ、そっか、そういうことか』ってなって先鋭化しよう ~どうして擬態はつらいのか~

※筆者は脳科学等の専門的な知見を持っていません
※筆者は医学的な診断を受けてはおらず、発達領域に関わる職種の方々とのやりとりの経験や、個人的に得てきた知見、ASD当事者の方が語るエピソードや思考と自身のそれらとが非常に近しく感じたことなどから「まあおそらく診断がつくか、それに近しいスペクトラム領域ではあろう」と自認している者です

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 先日、ツイッター上での発達障害界隈でのやりとりから、「アスペルガーの大元にあるものは『報酬系の異常』ではないか」という仮説を提示されて、それに非常に強い納得を覚えた。

 どういうことかというと、まず人間が『快感』を得る際には
①ポジティブな刺激を受ける
②脳が刺激物質を出す
③刺激物質の量が一定のライン(閾値)を超えると、『気持ちいい~♥』と感じる
 という過程を経ているらしい。これが報酬系(雑な理解)。

 定型発達(アスペルガーではない人)たちと比べて、我々アスペは③の閾値が高いのではないか。
 刺激物質がふつうの人よりもたくさん出ていないと『気持ちいい』を感じられない体質なのではないか、というのが今回の仮説だ。

 一般的にアスペの性質といえば「コミュニケーションが下手」「変なことにこだわる」などと説明されるもので、
「気持ちいいを感じにくい」などと言われてもなんのこっちゃと思われるだろう。
 しかし自分たちの内的な体験と照らし合わせてみると、この仮説は非常にしっくりくるのだ。

 コミュニケーションを例にとってみよう。
 定型発達のひとは、少ない刺激でも「気持ちよさ」を感じることができる。
 それはたとえばお互いに挨拶をしたり、目を見て喋ったり、天気の話をしたりすることで、自分たちの所属意識を再確認し(?)、小さな安心感を得る(?)、とかだ。(想像)
 もう少しスケールを大きくすると、たとえば体育祭でクラスみんなで「がんばるぞ、エイエイオー!」と掛け声を合わせて士気を高めるとか。

 アスペはここが弱くて、他愛のない小さなやりとりで安心感を覚えるという感覚が分からない。
 「エイエイオー!」やるやつそんな楽しいか?ぐらいの感覚。自分がそれを感じていないから。
 結果的にアスペは、挨拶とか天気の話だけでは通常よりも「気持ちいい」が不足した状態で過ごすことになる。

 で、それがどうしてコミュニケーション能力の低さにつながるかというと。
 アスペはただ話しただけでは摂取できない「きもちいい」をなんとかして補うために、定型の人たちから見ると独特な行動に走る。それはたとえば『深掘りする』ことだ。

 たとえば何か物事を考えるときに、いろんな証拠を組み合わせていって、点が線につながる感覚。パズルをしているときに、ピースが連鎖的にどんどんはまっていく感覚と言って伝わるだろうか。
 その時に脳はたくさんの刺激物質を出して、アスペが持つ閾値をようやく超える。アスペも『気持ちいい』を感じられる。
 これをアスペは、おそらく無意識に会話に適用しようとする。
 他愛のない「今日はいい天気ですね」から何か深い意味を読み取ろうとしてフリーズし、「そうですね」の5文字が瞬時に返せない。
 あるいはごく自然にできるはずのそれをやるためには訓練を要する。

 なんかアレですね、書いてて思ったんだけどこれ、豆類やレバーやホウレンソウなどから鉄分を摂取できない特殊体質の人が線路のレールをペロペロ舐めて鉄分を補給しようとするみたいな話ですね。そりゃあ奇怪に映るわ。

 なんか会話が回りくどいとか、話の内容がいまいち伝わってないなとか、冗談が通じてないなみたいなときは、だいたいアスペは深掘りしすぎている。
 お互いに会話をするだけで得られるはずの「ほんのり気持ちいい」を感じ取れずにパズルゲームのピースを探し始めてしまっている。

 ぶっちゃけ無をいくら掘っても何かが掘れるなんてことはないので、アスペ側は自分が求めるピースを得られることなんてなく、「気持ちいい」になれることなんて滅多にない。
 なのでアスペは目を見て喋るとか他愛のない会話をするとかがどんどん嫌いになっていく。会話のたびに「頑張ってるのに、それに見合ったものが得られない」という感覚が積み重なって、下手だから嫌いに、嫌いだからもっと下手になる。

 余談だけど、ごく稀にアスペのはずなのにめちゃくちゃ話がうまくて魅力的に映るみたいなやつがいると思うが、あれはたぶんこういう構造を知っていてか、あるいは無意識化に理解して、「正しいボタンを正確なタイミングで押したら勝ちの音ゲー」として極めて、相手の反応を引き出して遊んでいる。
 そういうやつは他愛のない会話に共感してるとかじゃなくて相手をゲーセンの筐体だと思ってるだけなのではっきり言っておれら以上に人の姿をしてない妖怪です。誰のことなのかは言わせないで。

 で、この『深掘りする』はコミュニケーションだけじゃなくて、割とアスペにとってのあらゆる指針になっている。

 今回ツイッターでいっぱい話して、報酬系の問題じゃね?って教えてくれた人の言葉を借りると、『ASD層は「浅い納得」に妥協できない』。これはマジでアスペたちはめちゃくちゃ身に覚えのある言葉だと思う。

 『ああ、そっか、そういうことか』って納得した瞬間、脳は刺激物質を出してくれる。
 コミュニケーションの段で挙げた、「他愛のない会話で小さな安心感を得る」とかも『納得』が発生してるからこそ、刺激物質が出て、気持ちよくなっているんだと思う。

 アスペはそこの閾値が高くて、ちょっとした『ああ、そっか』じゃ満足できない。
 たくさんの状況証拠を集めてクソデカく揺るぎのない『納得』が完成したときにようやく気持ちよくなれる。

 ちなみにこれは、物事を「正しく捉える」ということではない。アスペでも勘違いしているやつがいるけれど。解釈の揺るぎのなさ、自分がそうと信じられるだけの強度があることが重要である。
 だから自分が賢いと勘違いしたアスペは、『本物と見紛うほどよくできた、うその証拠』を出されてしまった場合、定型よりもはるかに深くカルトや陰謀論にのめり込みやすいと思われる。

 コミュニケーションじゃなくても、日ごろからクソデカい『納得』を得るために、物事をこねくり回して考えることしかできない。
 必然的に興味の対象がこねくり回し甲斐のあるものだけになる。『アスペルガーは興味の対象が狭い』というのはたぶんこれ。

 で、ここから本題である。これは正直、アスペたちの中でも共感する人とそうじゃない人がいるんじゃないかなと思う。
 共感したらキミもカルトの仲間入りだ。毎日一緒にタヌキの真似をして暮らそう。

 アスペはたくさんの状況証拠をあつめてできるだけ深い『納得』を得るために、自分の中の『思考の型』=『スコップ』をピカピカに磨く。

 物事を掘り起こす。分解して考える。状況証拠になりそうなものは何か。
 自分の知らない概念が出てきた。既知の何かと似てるところはないか?
 なんとなく正体が分かりかけてきた。同じ意味をもつ別の言葉に言い換えられたら、自分の理解が正しいという証明になるはずだ。

 それらの作業をこなすための『スコップ』を、少しずつ大きくして、焼き入れて強くして、握りやすくして、最適化していく。
 その過程で、スコップそのものに執着するようになる。『納得』を得るために仕方なく使っていただけの道具が、自分自身と一体化する。
 たとえ不器用で、はたから見れば滑稽でも、自分にとっての生きにくい世界にこれ一本で立ち向かってきたという誇りそのものとなる。

 だから、『擬態』はつらい。『擬態』とはすなわち、スコップを持っていないフリをすることだから。
『擬態』はただ真似をすることではない。自分が一番大事にしているものを踏みつけられて、「お前が磨き上げてきたものにはなんの価値もない」と言われながら、従順なフリをして頷くこと。

 それで本当にすべてが円滑に回っているという何よりも強い状況証拠を突き付けられ、ああ、その通りなのかもなあ。なんて考えながら、スコップにヒビを入れることだからだ。

「うまく人に馴染めないようなので、不自然にみられないやりとりの仕方を一緒に練習して身につけていきましょう」と笑いかけながら、こちらの宝物を踏みにじっていることに気づいていない相手に対して、
 自尊心を折られて地べたに這いつくばりながら「その通りだなあ、迷惑をかけちゃいけないよなあ」と自分に言い聞かせるか、それとも腹の底で怒りの炉に薪をくべるかしながら、アスペは人間への擬態を覚えていくのである。


 まあぶっちゃけすべてアスペが悪い悪い。だっておれたちなんにもできねーーーーーーんだもん。なーにを一丁前に恨みつらみだけを肥大化させとんねんってな。
 我々にできることといえばインターネットの片隅でこうしてタヌタヌと冷笑しながら、人間さんの作ったおいしいごはんのおこぼれをもらってアスペルブルクの痩せ枯れた森に郷愁やら憂いやらを馳せることと、あとは祈ることぐらいです。
 我々のスコップが、定型さんたちのブルドーザーよりもかっこいい形をしていますように。タヌ。


※本文は筆者の思いつくままを書き示した、なんの科学的裏付けも持たない、それっぽい妄想だけを集めてつくった随筆です


※2021.6.25追記
 前提である「アスペルガーの大元にあるものは『報酬系の異常』ではないか」という仮説について、教えていただいた方から参考となるようなページのURLをもらったため、貼っておきます。

https://www.turtlewiz.jp/archives/14582/amp
https://www.riken.jp/press/2017/20170622_1/

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