見出し画像

鵺の陰陽師が面白いよって話

鵺の陰陽師を1話から読み返してるんだけどやっぱ面白い。以下、感想文なのでネタバレに配慮とかしてないです。読もう。鵺の陰陽師。

読み返して気づいたこと

 改めて読み返すと、最序盤のわちゃわちゃしてるくだりからずっと「勇気を出して一歩踏み出す」ことに焦点を当てて、強く肯定しているように感じた。
 一歩踏み出した結果が常に良い結果をもたらすわけじゃなくて、むしろ空回りして痛い目みることもある。そもそも度胸が足りずに踏み出せずじまいということも少なくない。それでも、頑張ってる姿を認めてくれる人はいて、手を引いてもらったり、背中を押してもらったり(物理)、人の力を借りながら良い方へ転がっていく。作品が是とする価値観がポジティブで、押し付けがましくもないのが読んでいて心地いい。

 主人公の学郎くんは基本的に気弱で、恐る恐る人と関わる性格なんだけど、人を助けるためなら怯えながらも踏み込んでいけるし、やると決めた後は迷わない。その上で、自分の意志でより良い結果を選ぶためにもっと強くならなきゃってモチベーションが一貫してる。かっこいい。

 ちなみに「一歩踏み出す」は主人公だけじゃなくて、作品を通してキーとなる要素な気がしてる。封印されてた鵺さんは、分体として教室の外で活動できるようになった。与えられた役割に縛られてた藤乃さんは、自己犠牲以外に生きる道を見つける……みたいな。そういう構図が今後も形を変えて出てくるんじゃないだろうか。

決闘編(?)で主人公が覚醒するくだりが好き

 新しい力に目覚めるのが、戦闘中とか絆が深まったタイミングとかじゃなくて、ふと相手の境遇に思い至った瞬間というのが良い。

 この回は数字使ったハッタリもうまいこと効いてると思う。元々、決闘までに必要なパワーアップを達成するためのノルマとして、2日で300体ザコ幻妖を倒せという無茶っぽい数字を提示されてた。
 その目標を達成する瞬間はあえて見せずに、5日目まで時間を進めて700体倒しても変化の兆しが見えずに焦ってる主人公が覚醒回の冒頭でサラッと描かれる。な、ななひゃく…!?って読者をちょっと引かせてるから、心境の変化がきっかけで覚醒しましたと言われても納得感がある。本当は10日かけて覚醒させるつもりだったってフォローも相まって、まじで学郎くんが頑張った結果なんだなというのが伝わってきて良い。

 覚醒した結果、初めて代葉との実力差が分かって、自分がいかに無謀な戦いに挑んでいたか身の程を知ることになるってのもシビアで良いし、即座に正攻法じゃ勝てないから立ち回りを教えるよって返すのも「ゲーム上手い人だ!!」って感じで良い。
 この一連のくだりほんと全部良いな。覚醒の瞬間にたまたま立ち会ったクラスメイトが週を跨いで「夜島、急に消えなかった!?」「夜島、急に現れなかった!?」って騒いでるのも好き。

『ここで隣に選んだ人の攻略ルートに入るから、慎重に選ぶんだよ』!!???

 散々言われてることだけど、全体的にシナリオの味わいがルート分岐のあるADVゲームっぽい(というか作中にもまんまそういう台詞が出てくる)。どうも鵺さんはあの世界のフローチャートを大まかに把握(予測?)していて、プレイヤー兼キャラクターとして、自分の望むエンドに導くために学郎くんを最強に鍛えるRTAに挑んでるっぽい。セーブ不可なうえランダム要素あり、しかも重要な分岐の選択は主人公任せのクソゲー。でも学郎くんは自分の意志でいつも期待以上のルートを突っ走ってくれるんだ。ひゅー!

  1. ほっとくと来るバッドエンド:ボス妖怪の封印が解けてが人類滅亡(?)

  2. 陰陽師が目指すビターエンド:町一帯に犠牲を抑えてボス妖怪達を再封印

  3. 鵺さんが目指すグッドエンド:犠牲なしでボス幻妖達(自分も)を殲滅

 作中で提示されてるルートはこんな感じなんだけど、鵺さんはおそらく自分が消滅することを犠牲に勘定してないし、学郎くんは絶対それを受け入れないじゃないですか。「全員を、皆を助ける道を選べるくらいのめちゃくちゃ強いやつ」になろうとしてるんだから。しかも、たぶん、鵺さんはそのことも分かってる。鵺さんがモノローグで学郎に謝ってるのは、自分の目的のために過酷な道を歩ませてるからってのはもちろんとして、最終的に彼が本当に望む結果は与えられないと決めてるからじゃないだろうか。

 代葉との決闘はその展開のための予行演習というか布石というか。いま目指してる強さでは自分の望みを叶えるのに足りないことに気づいた時どうするのか。しかも、今度はあらかじめ用意された勝算なんてなければ、結果の尻拭いをしてくれる師匠もいない。それでもやんのか?やれんのか学郎お前?っていうね。

 いつか来るであろう、既定ルートから外れてトゥルーエンドへと分岐する瞬間を見届けるのが楽しみでしゃーない。プレイヤーを知らないところへ連れていくのは主人公の役目だからな。頼んだぞ学郎。行ったれ学郎。

その他、細かい好きポイント

・狂骨
 人間の感性とはずれてるけど、代葉を生き物として好いてる感じがあって良い。「お前は随分と変わってしまった」って嬉しそうに言ってるの超良いよね。「ワイファイ、探してるのか」とか、狂骨が藤乃家にいるシーン大体好き。ゲームに付き合わせてたのも、なんか楽しいこと教えようとしてたのかな。あと、常に薄ら笑いを浮かべた強キャラポジションなのに、鵺と絡むとずっと地味に大変な雑用させられてて、特に苦もなくこなしてるのも好き。

・「レベル1の幻妖には合体できる種類がおり、それが16体集まるとレベル2になる」
 なんやねんその設定!!!!みんな合体できるわけじゃないのかよ。しかも、微妙に作中で擦られてるので、連載初期によくある一発限りの謎設定ではなく、そうそう起こらないはずの偶然が立て続けに起こっているということを示すためのフックかもしれない。だからといって、なんやねんという気持ちは拭えない。好き。

・防壁能力のある盡器を発動して実力を認められながらプルプルしてる莉姉さん
 週刊少年ジャンプ2023年34号 第11話 をチェックだ。

以上。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?