見出し画像

お気持ち表明

「って書いてshiraharuのアイコン貼るやつでもしようかな〜💕」

『またそれですか?そろそろみんな飽きちゃいますよ!』

横の智代子はそう言って笑う。お気持ち表明も何回目になったんだろう。


10年前、幻といわれた20本を求めて僕と智代子はSTEPという製本の都に移り住んだ。バックに他の土地で集めてきた本をたくさん抱えて。

最初のうちはとても順調だったはずだ。僕と智代子の"継承率"のシンクロが共鳴し、10本、12本、15本と作れていき、18本までは簡単にできていた。

しかし、ここからが苦難の道だった。18本をいくら集めても幻の20本は幻のまま。5年かけて19本を作れたものの、10年経っても20本は手に入らず、shiraharuのアイコンは風に吹かれたままだった。

『20本できた?』「できなかったよ」を繰り返す日々。5年も同じことの繰り返しで日々は流れていた。

「こんな年月、ロールバックできたらな〜」あまりの退屈さに、思わずこぼれ出てしまった。神にもお問合せしたいような気持ちだった。


『でも』

『私はよかったなって思います』

いつのまにか智代子が横にいた。

『20本だけじゃないもの、ありましたから』


そうか。


シネマで見るようなドラマチックな20本の成功だけじゃなく・・・


「今日も20本はできなかったよ」


「でもね、」


「僕たちの20本は、ここにあるよ」


僕は智代子を抱きしめた。

僕と智代子の継承率が超特大UPしていることに気づくのに10年かかったのか。


翌日ノウハウの上限が21個になることが発表され継承率UPは今期限りとなった。


このnoteは某サーバーSSコンテストに参加していません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?