ACSの高感度トロポニンの考え方(2022.10)

EMAの文献紹介から引用してます。

Rahul G. Bhat, Michael V. Nguyen et al.
High sensitivity troponin – Six hours is the magic number
Am J Emerg Med. 2022 Nov; 61: 52-55
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S073567572200540X?dgcid=rss_sd_all

2015年のヨーロッパ心臓協会(ESC)のガイドラインにおいて初めて導入された0h/1hアルゴリズムに加えて、今年には0h/30minアルゴリズムの有効性を検討したRACING-MI studyが発表されました。

→自分の施設では今0-1hアルゴリズムを使ってますが、0-30minアルゴリズムなるものがあるんかい。まじか・・。

単回測定でも低リスク患者の心筋梗塞除外に有効であるとう報告も今年Circulationからなされました。日本循環器学会の急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)では初回のトロポニンが正常でも症状出現からの経過時間が6時間以内の場合には、定性検査の場合には6時間後、高感度トロポニンの場合には1~3時間後に再検するよう記載されています

→そうなんだけど、腎不全があったり炎症があったりで、え、これコンサルとすべきなの??まじで・・。なんか申し訳ないんだけど、ということも多いのが事実だからはよ決着を。と思う気持ちはある。ほら、今日の電話当番みて「ああ・・・」ってなるやつです。

論文のタイトルに「6時間はマジックナンバー」とあるように、発症6時間以降の初回のトロポニン値が測定可能な3ng/lより大きいが、性別毎の99パーセンタイル値(男性なら53ng/l、女性なら34ng/l)以下である場合に安全に帰宅させる事ができるかを検討しています。1187人の胸痛を主訴に救急外来を受診し、発症6時間以降の初回のトロポニンが先程示した値の範囲内であった患者を対象にしています。758人が不整脈や虚血を疑う心電図など他の理由で入院が必要で、残りの429人は胸痛の精査のため入院しました。

758人のうち死亡やSTEMIなどの重大な心臓イベントを発症したのは30人で、NSTEMIを発症したのは7人でした。429人のうち重大な心臓イベントを発症した患者はおらず、NSTEMIを発症したのは29人でした。他に入院が必要な要素がない患者に限ると重大な心臓イベントが誰にも発症しておらず、1187人全体で見てもNSTEMI発症が36人と約3%の頻度でした。ACEP(アメリカ救急学会)が診断ミスの許容範囲として提唱している2%よりは多くなっています。しかし胸痛の精査のために入院した429人に絞ると、NSTEMIを発症した29人のうち26人は入院後に新規の胸痛から6時間以内のトロポニンが陽性となって診断されており、初回のトロポニン値で診断ミスとなったのは3人のみであるため、約0.7%の頻度でした。これは2%より十分に低い結果でした。

この結果から、症状が出現して6時間以上経過した時点の高感度トロポニン値が、3ng/lより大きく、性別毎の99パーセンタイル値(男性なら53ng/l、女性なら34ng/l)以下である場合に安全に帰宅させる事ができると結論付けています。

→ほうほう・・

実際に自施設でどのようなアルゴリズムを使用するかは循環器内科医と救急医で十分に議論しておく必要がありますね。救急外来の混雑の緩和と安全性のバランスをどう見積もるかが重要です。

→はい、すごくよくわかります・・・

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