REBOA VS 開胸(EMA2023.1)
③ Cralley AL, Vigneshwar N, et al.
Zone 1 Endovascular Balloon Occlusion of the Aorta vs Resuscitative Thoracotomy for Patient Resuscitation After Severe Hemorrhagic Shock
JAMA Surg. 2022 Dec 21.
“REBOAは蘇生的開胸術に勝るのか⁉︎”
蘇生的開胸術(RT)やREBOAは出血性ショックに対する大動脈遮断目的で行う手技です。
近年REBOAのRTに対する優位性が報告されています。
- CPRを受けていない患者ではRTよりも生存率が良い(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29421694/ )
- 外傷性脳損傷(TBI)を合併している症例では、RTよりも生存率が良い(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35372698/ )
- 外傷性心停止ではRTよりも胸骨圧迫の中断時間が短い(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29685373/ )
しかしながら、RTとREBOA、どちらが優れた方法なのか質の高いエビデンスを元にした結論は出ていません。
RCTを行うのが困難、外傷の大規模レジストリではRTとREBOAを比較するのに必要十分な情報を得られないという背景があります。
Aortic Occlusion for Resuscitation in Trauma and Acute Care Surgery (AORTA) registryは米国28施設の前向きレジストリで、大動脈遮断を行った患者のデータを登録しています。
これまでの研究と異なる点は、このレジストリが大動脈遮断に特化しており、詳細な生理学的なデータや、REBOAの留置位置(zone)まで記録されていることです。
本日紹介する研究は、AORTA registryで年間10件以上REBOA及びRTの経験数のある施設が対象です。
これら施設から登録された症例で、RTとREBOAを比較しています。
Primary outcomeは入院死亡率です。
施設、年齢、性別、ISS、損傷部位やバイタルサイン(病院前、到着時)、CPR率、貧血・凝固能・BE、大動脈遮断中のCPR率などでpropensity score matchingを行いました。
また交絡因子調整し多変量解析も行なっています。
AORTA registryに登録された991人のうち、REBOAがzone 1に留置されたのが306人、RTが行われたのが685人でした。
鈍的なメカニズムはREBOA zone 1 21.1% vs RT 73.1%とRTに多いです(P<0.001)。ISSの平均は29(18-50)でした。
全体としてRTの患者の方が、より重症で、生理学的異常があり、予後が悪い結果でした。
112人(56ペア)が propensity score matchingに選ばれました。
選択・非選択症例の患者背景の違いは、選択症例にhigh-volume centerで治療を受けている数が多い、鈍的外傷が多い、生理学的な異常が少ない、CPRを要した頻度が少ない、搬送時間が長時間でした。
Primary outcomeです。
REBOA zone 1とRTの死亡率は78.6% vs 92.9%(log-rank P=0.02, Wilcoxon P=0.01)で、REBOA zone 1が有意に低い結果でした。
交絡因子(TBI、重症胸部外傷、重症骨盤外傷、来院時GCS、到着時CPR率、大動脈遮断開始時のGCS)調整後の多変量解析でも、RTはREBOA zone 1よりも死亡率が高かったです(aRR 1.25; 95%CI 1.15-1.36)。
propensity score matchingでは大多数の患者が除外されていることに注意が必要です。
またRTもREBOAも症例数が多い施設で行われていることも一般化できるとは言い難いです。
とはいえまたREBOAがRTに対する優位性を示しました。
大動脈遮断に特化した前向きレジストリを用いた研究であり、RCTが難しいことを考えると、説得力のある結果です。
外傷性心停止症例で急いで開胸しにいくよりも、急いでREBOAを挿入する、そうするべきかもしれません。
REBOAの挿入方法
Antaaより
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