ルカパチョーリ_スムマ

伝わりづらいノウハウ、その原因は「体系化の有無」にあった?!

1494年、世界的に偉大な書籍が発行された。
それは、コロンブスの新大陸発見から2年後であり、
日本で言えば「足利義澄(あしかがよしずみ)」が
室町幕府11代将軍に就任した頃である。

その書籍の名は「スムマ」。
当時のイタリア・ベニスの商人が用いていた「ベネチア式簿記(複式簿記)」を学術的に説明・紹介したものである。
著者は、ルカ・パチョーリ(Fra Luca Bartolomeo de Pacioli、1445年 - 1517年)。
本書では、財産目録の作成、日記帳、仕訳帳、あらゆる元帳、勘定の取り扱い、さらには決算など簿記にかかわる知識と理論が詳細に説明されている。
 
評論家の中には
「そんなもの、当時の簿記慣習をまとめただけだ。偉業ではない」と酷評する者もいるようだ。しかし、「ノウハウを体系化する」というのは並大抵のことではない。 

経験や勘によって日々行われている実務慣習(実務ノウハウ)
 ↓
体系化する
 ↓
文字に起こす(書籍にする)
 ↓
ノウハウが「目に見える形」となる
 ↓
文字(書籍)になる事で、伝播力が高まる
 ↓
世間に広まる

このようにして、複式簿記が世界へと広まっていくきっかけとなった。

会計分野に限らず、建築、製造、料理、ファッション、その他各種専門業など、そこには多くのノウハウが集まっている。
『ノウハウもの』は体系化されることで『再現性を高める』ことができる。

「何回教えれば分かるんだ!教えたとおりに、あーやって、こーすればいいんだ!」などと言う人がいる。
実際、「技能は背中を見てマナベ」とわが国でも昔は言われていた。
しかし、『出来る人にしか分からない感覚』は『出来ない他人には伝わりづらい』ものだ。

なお、ルカ・パチョーリの著はラテン語で書かれていたため、実際は伝播力が弱かったと言われている(ラテン語を読めない者も多かった為)。
また、イギリス産業革命期のような固定資産・減価償却という概念もなく、現代の会計事務つと比べると稚拙感は否めない。
 
しかし、本書の意義はそれらを以てしても何ら薄れるものではなく、
むしろ、会計分野における実務ノウハウを体系化した第1人者として大いに評価されるべき人物である。

自分一人だけでやる作業ならばいざしらず、
誰かにそのノウハウを伝えようとするとき、
「体系化」という要素がキーとなる。 


 

 





 



 


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