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みかんの旧作ザオリク図書館「ゲームノベル・鋼の錬金術師3 神を継ぐ少女」

 原作は知ってる人も多いであろう、天才錬金術師・エルリック兄弟の活躍する大人気の少年バトル漫画です。2回もTVアニメ化されてるんで、当時見ていたという人も多いはず。
 しかしこれは、そのアクションRPG用シナリオをノベライズしたバージョン。水島版(アニメ監督)と呼ばれる最初のアニメ第一期放送に際し、3本ほどプレイステーション2で家庭用ゲームが発売されたのですが、その最終作(2005年発売)の物語となります。
 ゲームはそれぞれ独立した番外編なので、時系列的にはどれからでも問題無し。当時、原作漫画やアニメは見ていても、ゲーム版までフォローした人は少ないのでは?
 しかもアクションRPGって、やるとなったら長い上に、何本もルート分岐があったりして本当に時間がかかる。そういう時に重宝するのが、いわゆるゲームノベライズです(PCゲームの小説版に特化した出版社もあるくらい)今回はそういうゲーム小説をひとつご紹介。


 さて、この「神を継ぐ少女」ゲーム三部作の最終作だけあって、内容的にはなかなか感動できる王道ファンタジーに仕上がってます。
 3の舞台は、主人公の錬金術師・エドワード&アルフォンス兄弟の住む、軍事国家アメストリスの北方都市ヴァルドラ。そこに暗躍するアメストリス崩壊を目論み、封印されし古代魔女ヴェルザの怨霊を復活させんとする、とある辺境部族の四神官が今回の敵勢力です。
 3のゲストヒロインは、不思議な聖印の力を持ち、ヴェルザ復活を阻止せんとする少女ソフィ・ベルクマン(彼女は一族の裏切り者なのです)
 一族出身であった亡き父(実は元神官)の遺志を受け継ぎ、エルリック兄弟と手を組んで、四神官の組織と戦います。とはいえこの娘、魔力は強いが戦闘力はからきしなんで、もっぱらエルリック兄弟に頼り切りなんですけどね。すぐ体力切れするし。
 ソフィの聖印パワーを供給された主人公たちは、四神官グループとの激しい戦いの渦に身を投じていきます。だがそこに、アメストリス軍のヴァルドラ基地司令までもが、魔女の力を我が物にせんと陰謀をめぐらし、事態は主人公達・魔女ヴェルザを崇める一族・アメストリス北部方面軍の三つ巴に発展して、混迷を深めていく。
(以下ネタバレ)




 なんとか軍の追求を逃れ、本来の敵である四神官を倒していくエルリック兄弟(倒すといっても神官四人中、二人は魔力暴走による自滅、一人は基地司令にとどめを刺され、最後の一人は潔く自決なんですけどね)
 悪徳基地司令を用済みとして処分するのも原作の黒幕・ブラッドレイ大総統だし、終盤に復活したラスボス魔女ヴェルザすら、戦闘で倒すというよりは、最期はソフィの慈愛あふれる言葉と抱擁で、微笑みながら消滅していくのです。うん、ハガレンのバトルはこうでなくちゃ!


 でもこの作品、特筆すべきはやはり最終章エピローグ部分。瀕死の重傷を負った主人公・エドワードを助けるために、聖印の力を使い切り、代償に植物状態(精神的に)となってしまったソフィ。原作によくある鬱展開ですよ。
 けれど、エピローグの最後の最後で、奇跡的に意識が戻るという大団円が待っています。泣きゲー風台詞連発の流れに、途中までゲストヒロインのバッドエンドを確信していた私も、これには思わずほっこり。ゲーム最終作に相応しい、感動的な結末でした。

 強いて言うなら、この本には挿絵イラストがほとんど無いので、ゲームのムービー画でも入れて欲しかったのが、不満といえば不満ですね。その代わり、キャラクター設定画集なんかは付属してます。
 原作漫画大好きだけど、ゲーム版のストーリーまでは知らないなあという方、小説版でサクッと触れてみてはいかがでしょうか?






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