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死ぬより地獄のラブレター(受取人不明)

フォロワーがめちゃくちゃに推してたので再演あったら見んとな〜と思って軽率に足を踏み入れたら感情の行先不明。受け取ってくれ、誰か。怖すぎて目をぎゅっとつぶったのなんて小学校1年生の時にカリブの海賊に乗った時以来よ。

お話、ユダヤ迫害の話だからそりゃ辛いんだけど、そりゃ辛いんだけど、愛して信頼する人間が外的要素によりどんどん変容するさまが手紙のやり取りだけで目に見えて、ナチに傾倒する様子は異様な光景なように見えもして、でも突然の変容ではなくて、どうしようもなく人生の地続きにあることがわかり得て、しかもそれは大なり小なりいますぐ自分の身にも起こり得ることで、めちゃくちゃ怖かった。

社会的にガーとか現代の問題にウーーとか絡めようと思えばいくらでもできるけど(とくに最近までウイグル問題とかも全然知らない無知なにんげんだったから尚更)、それはそうととにかく男の2人芝居にどうしても惹かれてしまうのね。お互いに送った手紙を読み上げるだけ、の話でここまで揺さぶられてしまうこんな体験ってそう無い。から、テーマに敬遠せずに、観て。

男ふたりがひたすら手紙を読み合う90分。手紙のやりとりから見えない感情を想像しては打ち砕かれていく。
彼から見たら彼が変わってしまうように見えた、とか、自分から見たら自分は変わってない、とか。時代の波にのまれた人間たちが、たった2人、たった90分でこれほどまでにあの時代の'ひとり'がどういう気持ちで生きたかをダイレクトに客に想像させ、ただ悲しいとかただつらいとか、それこそ時代の波にのまれた、だとか、そんな陳腐な言葉で丸めていいのかってくらい複雑に持ち上げていく役者の底力と現実の問題を孕んだ話だからこそできる強み。忘れちゃダメだし、こうなってしまうかもしれない未来を少しでも回避するために演劇を持ってして刻み込ませる、目の前で起こさせる、すごい。好き。yes.

1932年11月12日〜1934年3月が物語の舞台で、ピカソがゲルニカを描いたのが1937年でこの物語が発表されたのが1938年。舞台上で起こる90分のように短くて果てしなく長い。

なんかもう途中、縦読み!縦読みとかで読んでみてよ!斜めとかあるから!ワンチャンあるから!って叫びそうになった。ずっと、「もしかしたら」を捨てきれないのがすごい。好き。yes.

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