大学入学共通テストの新科目「情報」の出題傾向を分析してみた

IT系の話題に興味のある皆さん、皆さんこんにちは。くろ州です。

IT系ニュースを追っている人であれば知っていると思いますが、大学入試センターが3月24日に「2025年から大学入学共通テストに新科目『情報』を追加するよ」と発表しました。完全決定ではないですけどね。

ついでに、サンプル問題も公開されたので一通り見てみました。今回はこのサンプル問題の出題傾向を分析してみます。

前提

 もともと「情報」という名前の授業は前からありました。それが2018年告示の高等学校学習指導要領で「必修科目として情報Ⅰ、選択科目として情報Ⅱと定めるよ」という話になりました。実施が始まるのは22年度からですね。

 で今回、大学入学共通テスト(ちょっと前までセンターって呼ばれてたアレ)に「情報」が登場するよーという話が正式に出てきたわけです。試験範囲は情報Ⅰ。

 以上、前提終わり。

サンプル問題の概要

 24日に公開されたサンプル問題の概要は以下の通り。

・試験範囲は情報Ⅰ
・試験時間は見た感じ1時間
・大問3つ、全11問
・出題テーマは、モバイル通信、クラウド、AD変換、IPアドレスの仕組み、プログラミング、データ分析など

 なお、内容はまだ考え中とのことなので、25年に実施されるときにこのような構成になっているかは不明。出題テーマもこれに限らない。

出題傾向

※問題は76Pから

第1問

 大問1は小問集合です。知識で解ける問題が多く、真面目に授業を受けて普通に試験勉強できていれば点数を落とすことはないでしょう。難易度表記は私の独断です。

・問1 難易度低~中
 東日本大震災の報告書をテーマとする会話文を読み、その空欄を埋める問題。「携帯電話回線におけるパケットの送り方」「情報格差の基礎知識」「クラウドの基礎知識」が必要です。

・問2 難易度低
 提示したいデータに対する適切な図表を選ぶ問題。「割合を示すなら円グラフ」「割合の推移を示すなら棒グラフ」程度の内容。

・問3 難易度低~中
 アナログ画像をデジタルデータ化する手順に関する問題。完全なる知識問題だが、提示された図を見ても頑張れば答えが導ける。

・問4 難易度中~高
 IPアドレスの読み方に関する問題。ネットワーク部のビット数からネットワークの規模を計算する内容。知識があれば楽に解けるが、国語力があれば本文を読むだけでも答えが出せる。2進数の計算はできた方がいい。問題に修正あり。

第2問

 大問2の情報Ⅰらしいプログラミングの問題です。特定の言語を学ぶ必要はないですが、課題を分解してフローチャートに落とし込む力、概念的なコーディング力が必要です。

 今回のテーマは比例代表選挙の議席計算プログラムです。議席数の計算方法を見て、それをプログラムにします。

・問1 難易度低
 割り算だけでできる簡易的な議席数計算プログラムを考える穴埋め問題。変数や配列、コマンドの基礎知識は必要ですが、統計や高度な計算は不要。

・問2 難易度中~高
 より正確に議席数を求めるため、実際の計算プロセスを基に処理手順を考える問題。ループを含む処理ですがフロー自体は問題文で作ってくれます。生徒はそのフローを脳内で実行して、結果をプロットします。計算はシンプルですが、1行ずつ厳密に実行しないと回答がずれて一気に点数を落としてしまいます。

問3 難易度高
 問2で考えたフローを基にコーディングします。空欄に入るコードや変数を答える穴埋め問題の形式を取っています。IF文による条件分岐が入ってますね。通常のプログラミングと違い、実行して結果を確認するトライアルアンドエラーができないので、脳内での実行力が必要です。

第3問

 大問3はデータ活用の問題です。サッカー部のマネージャーが試合のデータを基に強いサッカーチームの条件を探るというストーリー。統計的アプローチなので、数学Ⅰの内容ができていればおおむね問題無く解けます。

・問1 難易度低
 データをまとめた図を基に相関関係を読み取る穴埋め問題です。読めば分かるので絶対正答したい問題ですね。

・問2 難易度低~中
 データを基に強いチームと弱いチームの差を計算する問題です。グラフが読めて算数ができれば問題無く解けます。落とさないように。

・問3 難易度低~中
 データを見て四分位範囲や中央値、平均値などの統計データに関する正しい記述を選ぶ問題です。読めば分かります。

・問4 難易度中
データを見て正しい記述とちょっとした計算を行う問題です。ゆうほど難しくないです。

総合評価

 情報Ⅰは必修科目ですが、問題はかなり理系科目的ですね。高校数学と同様の計算問題があるのはもちろん、知識だけでは解けないプログラミングの課題もあり、共通テストらしい作問といえるでしょう。

 一方、問題のテーマ自体は震災、選挙、サッカーなどが採用されています。これらについての知識は別に必要ないですが、文系科目に大きな苦手意識がある場合は、文を見た瞬間に思考が停止しない程度まで克服しておくのがいいと思います。

 各大問は難易度低から始まり高に移行するスタンダードな構成。最初の小問や知識問題は確実に点数を取りたいところです。問題量がそこそこあり、ゆっくりしていると1時間で解ききれないため、計算の速さと知識問題を即答する力が勝負を分けると思われます。

 主要科目と同様、授業を真面目に受けた上で、受験対策もしなければ高得点を狙うのは不可能でしょう。大学側は必須科目ではなく、しばらくは選択科目として採用するかもしれないですが、確実に合格するのが目標なら、公民など、より難易度が低く過去問も充実した別の科目を選ぶのが安全だと思います。

 ただし、情報系の学部学科への入学を予定するのであれば、この内容は押さえておいて損はないので、受験に使うかどうかはともかく、授業は真面目に受けておいた方が、大学での勉強には役立つと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?