「麺処きずな」が上手くいくために必要だったこと
皆さんこんにちは。くろ州です。
最近、ボイロ界隈で「麺処きずな」のコラボ企画が(あんまりよくない意味で)話題になっている。
これ、後出し孔明でしかないが、どうすれば変に燃えずに済んだか考えてみた。
まずは前提知識の確認。
前提知識
今回話題になった発表はこちら。
「麺処きずな」というラーメン店がオリジナルグッズとコラボグッズを出すよというニュース。
麺処きずなとは紲星あかりが店主を務めるラーメン屋……という設定。実際に店舗があるわけではなく「株式会社HIKE」が二次創作した企画ということになっている。
挙げられた疑問点
公式じゃないの?
上のリンクは「PRTIMES」というプレスリリースが大量に掲載されているサイトの物。プレスリリースは報道向け発表資料のこと。リリースには必ず署名がある。
で、今回のリリースを見てみると署名が「株式会社HIKE」になっている。要するにマケッツさんの発表ではない。そういう意味で公式ではない。
これはPRTIMES見慣れてる人だとすぐわかるけど、Xのカードを見るだけでは公式かどうかの判断が難しいから普通の人からすれば「公式かと思って開いたら公式じゃなかった」という状況は十分発生しうる(公式じゃないとダメとかじゃない。好き嫌いはあるだろうけど)。
だから普通は企業名など発表の主体を主語としてタイトルに書く。今回のリリースタイトルは文法上は確実に「麺処きずな」なので外してはないのだが(1)麺処きずなは知名度が高い名詞ではないこと(2)麵処きずなより先に紲星あかりの文字列が見えるので、紲星あかりが主体に見える可能性がある(あかりの方がネームバリューがあるから前に出したい気持ちは分かる)。
普通の人間は文法を意識して主語を正確に認識する作業なんざやらないということを情報を出す側は認識しておく必要がある。
あと、マケッツさんがツイートしたから公式に見えたのもあるかもしれない。ただし、普通に考えて監修なりライセンス提供した企業企画ならツイートするだろう。これは全然変じゃない。
ただ、ツイートの内容を読むと主語がない(文法的にはギリ無生物主語かな)。マケッツ主催なんて一言も書いてないんだけど、HIKE主催とも書いてはない。この場合、発信主体を内容の主体と考えるのが普通ではある。
これが「HIKEさんがオリジナルグッズを販売します」とか「マケッツが監修した」とかどこかに書いてあったら主体が明確になるので違ったかもしれない。「うちが監修したHIKEさんの企画です。オリジナルグッズが出るのでチェック!」とかだと超分かりやすい。
ただ、ここの塩梅超難しい。「やるらしいよ」とかだと「らしいってなんだよ」って突っ込まれるしね。
麺処きずな知らない/二次創作って言え
実は今回のリリースは2本目で、12月17日に「麺処きずなのグッズ出すよ」的な発表があって、それを見ていた人は知っていたかもしれない。ただ、12月のリリースが初お披露目だし、他に別に情報はないので知らなくてもしょうがない。というか普通なら知らないのが前提まである。
12月のリリースはめっちゃ分かりやすくて、要約すると「HIKEが、紲星あかりが店主を務める麺処きずなのオリジナルグッズを作るよ」としか言ってない。今回のリリースは「オリジナルグッズの詳細決まったよ」って発表。こう書くと簡単でしょ?
まぁ、最初のリリースでは特に説明なく麺処きずなが出てくるので「なにそれ?」ってなるのが当然。実際は本当に全く説明がないわけではないんだけど、(架空)って書いてあるだけなんだよね。
リリースの後半に「紲星あかりについて」「「CHARAZZ」について」「株式会社HIKEについて」って書いてあるけど、本来ならここに「麺処きずなについて」って表題を付けて「俺たちが今回新しく考えた麺処きずなってのがあって、そのオリジナルグッズを出すよ(=企業が二次創作グッズを出すよ)」とか書いあるべきだった(その上でリリース冒頭で軽く説明できているとベスト)。
そうすれば見る人も疑問を感じなかっただろう。それを「(架空)」の4文字に圧縮しているわけだ。端折りすぎ。要するにシンプルに説明不足。
ついでに言うと、リリースの中に「ファンにはたまらない大人気ラーメン店」と書いてあるのも混乱を招いただろう。おそらく実在性の演出だったかもしれないが、見落とした情報があるように見える。これがあるだけで「麺処きずな」を検索する人が発生し、検索結果がほぼ出てこないため「検索したけどよく分からなかった」と言われる。
うまくやってればラーメン屋店主紲星あかりの二次創作がXで流行ったかもしれない。
コラボの構造が分からん
Xを見た感じ「コラボの構造が分かりにくい」って感想がそこそこあった。いったん「文章だけ見て情報を整理」してみよう。今回のリリースの内容は以下の2点。
これはリリース冒頭の2段落にほぼそのまま書いている。シンプル。優秀。ここまでは読めば分かりそう。ちなみに、オリジナルグッズとは食器類とTシャツや前掛けのこと。コラボグッズとはラーメンのこと。
「麺処きずなの件と気絶部じゃぐらコラボの件の関係が分からん」と思うかもしれない。これはマケッツさんの説明によると、気絶部じゃぐらコラボをHIKEさんが監修してるっぽいということらしい。
唯一分かりにくいのがアクリルスタンド。これは冒頭に記述がない。一応「特別コラボ」と書いてあるので、おそらく麺処きずなとドカ食い気絶部さんコラボ。
要するに今回のグッズ類を分類するとこう。
……のはずなんだが次でちょっと分かりにくくなる。
イラストの使い方で難しくなっている
今度は画像の情報も一緒に考えてみる。今回使われているイラストは以下の2点。
ここで問題になるのが、「デフォルメイラストはアクスタとどんぶりに描かれている」という点。「どんぶりにも書かれてるならどんぶりもコラボなのでは?」となる。
つまりイラストから得られる情報を見るとこうなる。食器の位置が移動した。
結果、外から見ると「麺処きずなという何かとYouTubeチャンネルのコラボに、ラーメン店が協力してくれた」ように捉えられるのではないか。実際はこれが正解に近いので、文章の方が微妙だったんだろう。
ちなみに、事実としては以下の形らしい。マケッツさんはコラボに参加してるってよりは以下のコラボの監修で参加したくらいの立ち位置っぽい。
なお、このデフォルメイラストは気絶部チャンネルでよく使われているあかり立ち絵に似ている。これもまた別件で「権利的にどうなの?」みたいな問題に派生している。これに関しては知らない。多分上手いことやってるんじゃないですか。できてないなら怒られてしかるべき。
まとめ
これをそれぞれのファン視点から見るとこうなる。
だから、おそらく今回のリリースを認識しただろう多くのあかりファンが一番蚊帳の外になっちゃってるんじゃないだろうか。それ自体は(企画目的に沿ってるなら)いいんだけど、その場合「俺たちが今回新しく考えた麺処きずなってのがあって、そのオリジナルグッズを出すよ」ってのが分かりやすくなってればめっちゃよかったんでしょうね。4文字に圧縮したのが致命傷の始まり感。
そこがはっきりしてるとこうなる。
かなり違う。リリースのベストプラクティスは検索すれば普通に出てくる。
今回なら、「麺処きずな」が二次創作であることが具体的で分かりやすいこと、1話題1本にすること、「ファンにはたまらない大人気店」とか見落とした情報がありそうに書かないこととか。
私は本職記者なのでプレスリリースを見て記事を書くことがあるんですけど、もしこれを見て記事を書くなら、「どんぶりは気絶部コラボではないんですか?」「アクスタは麺処気絶部コラボであってますか?」「デフォルメイラストの絵師は誰ですか?」「コラボラーメンはどういう立て付けですか?」くらいは聞くと思う。これってリリース出す前に自問自答して確認できることではあるんだよね。企画にかかわってない同僚なりなんなりに「これどう?読める?」って聞けば疑問点出してくれるだろう。
まとめると、今回は「非実在のラーメン店であるというコンセプトを実現するという特殊な状況において、コンセプト説明を4文字に圧縮するなど説明不足な箇所が複数あったこと、および事実として主体を明示できていなかった点が消費者の混乱を招いた事例」と言えそう。
解決策はシンプルで「コンセプト説明を端折らない」「それぞれのグッズが誰と誰のコラボなのか=主体を明示する」だけでかなり改善すると思います。
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