90年代の海外ダンスミュージック

2019/08/07


 90年代のダンスミュージックが再評価されているようだ。昨年のDA PUMPのヒット曲「U.S.A」の振り付け・シュートダンスの流行にも大きく関与している、La Boucheの「Be My Lover」のような、女性シンガーと男性ラッパーの2人組から成る、シンセサイザー全開のダンスミュージック。このような形態がヨーロッパで多数生まれた。日本でもこの動きに注目し、これらをユーログルーヴと名付けて売り出そうとしたのが、かの小室哲哉である。TMNが「Nights of The Knife」のリリースで、一旦その活動に区切りをつけ、trfや篠原涼子with t.komuroのヒットで、プロデューサーとして注目が集まりだした頃。trfのツアーと同時進行で、クラブイベント「EUROGROOVE NIGHT」を行い、後のglobeのボーカル・KEIKOを発掘していたときに、小室哲哉が聴いていたのが、今回取り上げる楽曲だ。globeも当初は、これら同様、男女2人組でデビューの構想だったんだよね。今回は1994年にavexのレーベルのひとつ・カッティングエッジから発売されたコンピレーションCD「EUROGROOVE#01、#02」収録楽曲を使用したダンス動画をピックアップした。

 まずはカペラの「ムーブ・オン・ベイビー」。日本国内で発売されたEUROGROOVEのアルバム5枚の中でも、当時最もよく聴いた楽曲。聴きどころは高音シンセサイザーのリフ。音運びにトゲがあって、聴けば聴くほど病みつきになる。日本語ライナーノーツ付きの国内盤も出ていたので、日本でもダンスミュージック通の方なら、押さえていたアーティストだろう。1〜2曲ならカラオケもあるかなと思ったが、さすがにそこまではない。洋楽はやっぱ、スキャットマン・ジョンぐらいドカーンと流行らないと、カラオケ化まではいかないか。

m.o.v.eの木村貴志が「残酷な天使のテーゼ」をカバーしたときに、「これ、めっちゃカペラやん!」と思うくらい、この曲を彷彿とさせるアレンジをしていた。狙ってやってるんだろうけど、リアルタイムで聴いていた僕には心ニクイ試みで、面白く聴けた。


 続いてはマックスの「ゲット・ア・ウェイ」。日本にも同じ読みの女性4人組がavexにいるが、こちらのスペルはMAXXで、女性シンガーと男性ラッパーの2人組だ。これがまた渋くてカッコいい。こちらはカペラと違って

、日本では輸入盤でしか入手できなかったので日本での知名度は低いが、海外の様々なコンピレーションで大抵は収録されているので、当時のヨーロッパ音楽シーンでは広く認識されていたと思われる。この映像ではリミックスを取りあげるが、元々のバージョンのオイシイ所を更に面白く切り刻んでいて、オリジナルを良く知っていればいるほど、より楽しめること間違いなしだ。製作者の原曲に対する愛着を深く感じるし、それを自分流に昇華させた、良いリミックスだね。(注・執筆当時の映像が取り下げられたので、同曲のほかの映像に差し替えています)



 最後に、リール2リアルの「アイ・ライク・トゥ・ムーブ・イット」。これはもう、力技ゴリ押しなダンス・ミュージック。歌メロとかはない。全編に渡って男性ラッパーが荒々しく暴れ回る楽曲だ。初めて聴いたときの感触は、「ウワッ、濃厚…」だったが、だんだん病みつきになった。映像にはスマートフォンが登場していることから、発売当時に作られたものではなく、後から製作されたものだと思われる。本人出演こそないものの、楽曲のイメージにピッタリ。これはこれで見応えのある仕上がりだ。先のMAXXの楽曲もそうだが、こちらの楽曲にもエディットが施してある。「EUROGROOVE#02」を既に所有しているという方でも、新鮮に響くだろう。



 本家本元のミュージックビデオやライブ映像の方が高品質だと思い込みがちだが、オリジナルのアーティストが介在しないところで新たに製作されたMVでも、見応えのあるものを最近よく見かけるようになった。

 You Tubeで「ダンパリチャンネル」を立ち上げたばかりのTRFが番組のネタを募集していたが、こういうのをTRFのメンバーにして欲しい。カッチリ作り上げた振り付けも良いけど、その場のフィーリングで気の向くままに踊る映像もたまには良いんじゃないか。本人たちにとっては、「こんなのは所詮ウォーミングアップ」という程度の動きでも、素人目に見たら「うお〜、スゲー!」ってなると思う。使用曲はもちろん、自分たちの持ち歌で!a-nationでよくやる曲ではなく、まだ映像化されてないレアな曲の方が燃える。「ONE MORE NIGHT」とかなら、これら洋楽の中に混ざり込んでも、全く見劣りしないと思うんだけどな〜。渋いところではデビューアルバムの「OUT THERE」。玄人受けしそうな動きが映える曲なんじゃないか。

 持ち歌以外にも、自分たちが過去に絡んだ楽曲を、今の解釈で踊るのも面白そう。Jazztronikの「Love Tribe」は、ミュージックビデオでのSAMの尺はそんなに長くはないが、森泉やキリンとかが映っている部分も全部TRFのパートにしてしまったらどうなるか興味ある。もう一つ、「King of Dance」って曲があるけど、これはSAMのことを歌った曲なんだよね。この曲でダンパリチャンネルで踊ってくれないかな。

他にもYU-KI (from TRF) & ELISHA LA'VERNE「Lady to Lady」も、女性陣2人でしっとりとやってもらいたい。TRFを知ったばかりの頃、僕が一番好きなメンバーはCHIHARUだった。YU-KI可愛いなと思うようになったのは、随分後になってからだったな。生ライブで再現となると、かなりいろんな障壁を乗り越えないと実現しなさそうだから余計に。安室奈美恵ともゆかりの深いミュージシャンが製作しているので、知らない方はぜひ探して当ててみていただきたい。

 一番盛り上がりそうなのは、やっぱりEUROGROOVEのオリジナル曲「MOVE YOUR BODY BABY」だろうね。これはDJ KOOがレコーディングに参加している。ゲストで呼んでダンパリチャンネルにご登場いただこう。いっそのこと、ボーカルも生歌で日本語詞バージョンを作ってしまうのはどうだろうか。アレンジも今風にして。ボーカル・YU-KI、編曲・浅倉大介、訳詞・小室みつ子で、今の時代に蘇ったEUROGROOVE聴きたいな〜。CULTURE BEATの日本人カバーが出るんだったら、こういうのもアリだろ。作曲・小室哲哉、編曲・浅倉大介なら、もうPANDORA名義で出してしまってもいい。PANDORA feat.TRF「MOVE YOUR BODY BABY」、MV付きでリリースされないかな。

EUROGROOVEと言えば、「寒い夜だから…」の英語版「WISHING YOU WERE THERE」もあったなあ。こっちの方が、すぐサッとできそうな気もするね。