90年代・海外のダンスミュージック(その2)

2019/11/17


僕が洋楽の魅力に目覚める主要因ともなったのが、ユーログルーヴ。90年代に小室哲哉が立ち上げた海外進出プロジェクトだ。そのコンピレーションシリーズゆかりのアーティストや楽曲にスポットを当てて、最近「これは!」と思った動画をピックアップしてみた。今年の8月に同様の企画で一度執筆しているが、今回はその続編でいってみよう。

カペラ「ムーブ・オン・ベイビー(マイク・キャンディーズ・リミックス」

 EUROGROOVEのコンピレーションシリーズ全体を通して、僕が一番プッシュする楽曲でもあり、小室哲哉自身も歌詞カードに封入されていたライナーノーツで名指しで推していたのがカペラ。小室哲哉作曲によるEUROGROOVEのオリジナル曲「Scan Me」では、カペラがリミックスを担当しており、直接の縁もある。
 そんな特に思い入れの強い、何度聴いても摩耗しない彼らのナンバーが、リリースから長い年月を経た今年、マイク・キャンディーズの手によって音楽シーンに再登場。カルチャー・ビート「Mr.Vain」の日本人カバーの興奮も覚め止まぬうちに、またも名曲が生まれ変わった。
 リミキサーのマイク・キャンディーズの最新アルバムも聴いてみたが、どの曲も良かった。ビジュアルもユニークなんだよね。ダフト・パンクのヘルメット姿といい、SEKAI NO OWARIのピエロ姿といい、DJには被り物が似合うのだろうか。アーティスト写真を見るとTMNのリミックス盤「CLASSIX 2」が聴きたくなってしまう。
 たまたま上手くいった一作品が僕のツボにハマったのではなく、このアーティストの感性そのものが好きなのかな、きっと。でもこの「Move On Baby」のリミックスがなかったら、見つけられなかっただろう。


リミキサー・Mike Candysの画像は下記の記事にて紹介されている。

https://music-newsnetwork.com/?p=5333


パブリック・アート「リヴァー」

 先の「ムーブ・オン・ベイビー」と同じ盤「EUROGROOVE#01」に収録され、曲順も直結していたのが、この楽曲。こちらもかなりのお気に入りなのだが、同シリーズに収録されていた他のアーティスト、例えばアーバン・クッキー・コレクティヴなどと比べると、なかなか情報を得にくいところだった。そこまで広くは浸透してないか、シーンの最前線で活動していた期間がそれほど長くはなかったのか。どうなんだろう。僕はすごく良いなと思うんだけどね。
 楽曲は全体的にはクールな印象だが、途中から付点音符のリズムで、静寂を破るように入ってくる高音リフがすこぶるアツい!
 この映像はどう見ても、発売当時のものではなく、最近になって新たに製作されたもののように見える。globeでもこのように、発売当時はMVが作られなかった楽曲が、近年になって新たに映像が作られるケースがあった。こういう試みは嬉しい。


N-トランス「ステイン・アライブ」

 今年生まれ変わった「ムーブ・オン・ベイビー」。リアルタイムで原曲の方を聴いていた90年代当時に、過去のダンス・クラシックに手を加え、ヒットチャートに再登場させたのがn-tranceだった。EUROGROOVEのコンピレーションで収録された彼らの楽曲は「Set Me Free」だが、この記事では「Stayin' Alive」を取りあげよう。
 本家のBee Geesの方はサビのボーカル・パートにそこそこの量の歌詞が当てられているのだが、このバージョンで使われている言葉は、曲名の「Stayin' Alive」と「Ha!」の2つだけだ。この思いっきりの良さも痛快だが、一番のウリはやはり長尺のラップ・パート。僕はこれを聴いてしまってから、元のBee Geesの方には戻れなくなってしまった。



エマ・ヴェロニカ「ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラブ」

 最後に取りあげるのは、こちらの楽曲。「EUROGROOVE#04」にはニッキー・フレンチのバージョンが収録されたが、後に小室哲哉自身の手により、globeのナンバーとして蘇っている。これも globe版を聴いてしまったら、オリジナルのスプリームスには戻れない。そのglobe版のカバーでうまく歌っている動画を掘り当てた。
 特定の事務所とは契約していない、一般の方による歌唱なのだろうか。だとしたらとんでもなく上手いよなー。ラップパートは流石に女性としての限界はあるけど、決してイケてないわけじゃないもんね。エフェクトをかけて違和感を最小限に留める工夫もしてある。どんなにうまく歌っても、これがもしラップパートが無音のままだと、リスナーとしてはそこで一気にテンションが落ちていく。
 映像もカッコ良い。歌い手ご本人が登場するのが何にも勝るけど、それができなくても視聴者を楽しませようとする姿勢が好感持てる。楽曲名、アーティスト、作詞・作曲者のクレジットの文字表示のみの静止画に終始する動画も散見されるが、それよりはよっぽど良い。男性ラッパーが呼べず、姿が見せられないと制約のある中で、やれるだけのことはやってあり、詰めが甘くない。これも楽曲やアーティストへの愛ゆえだと思う。こういうのはファンとしても楽しんで聴いていられる。
 リスナーを喜ばせるのが第一の目的ではなく、最初からラップパートを男性に入れてもらう前提で、そのための空きスペースを設けて公開する場合もあるから、ラップパートが無音なのが駄目だというわけではない。

 そう言えば、僕がよく利用している第一興商のカラオケ録音・録画サイト「DAM★とも」でも、この曲の男性パートのみを歌ったテイクが今月公開されたばかり。歌い手はLive★エールさんというユーザーの方。小室哲哉ナンバーの男性パートを高い再現性で多数公開していて、僕もかねてから注目している。
 この曲は今年一度公開されたが、再度録り直すほどの熱の入れようだ。コーラスパートは毎回安定の高水準だし、ラップ・パートも前回より精度が上がっている。
Ema Veronicaさんがカラオケに遊びに行ってLive★エールさんの公開曲とコラボしたらどうなるか、ちょっと興味あるね。


 EUROGROOVEのコンピレーションシリーズは、小室哲哉作曲のナンバーが収録されていることが、当時の僕にとっての購入動機だった。もしこれが未収録で、単に日本とは縁の薄い、海外アーティストの作品集だったとしたら、この充実した内容であっても中身を知る由もなく、おそらく買っていなかっただろう。
 これを契機に全編英語詞の楽曲への壁が取り払われて、歌詞が分からなくてもサウンドが良ければドシドシ聴いていこう!と洋楽にも興味を持つようになった。feat.(フィーチャリング)という用語も、このコンピレーションで覚えたんだよね。

 この当時はその年に流行した洋楽をまとめ聴きできる「NOW」や「MAX」、「HITS!」といったコンピレーションが各レコード会社から出ており、僕も1枚持っていた。1994年ソニー発の「MAX」。シリーズ第一弾になるのかな。お目当てはリセット・メレンデスとC+Cミュージックファクトリー、それからドラマ主題歌で馴染みのあった、サイモン&ガーファンクル。
 知っているのはそれぐらいで、残りはサッパリという状態だったが、収録曲の中のひとつ、バーシアの「ドランク・オン・ラブ」にどっぷりハマった。コレは良いね!このコンピを1曲目から順に通して聴く、ということはあまりしなかったけど、バーシアのアルバムは通して聴いても面白い。それから、やはりこちらに収録のクレモンティーヌが、後々になってTM NETWORKの「Get Wild」を歌うとは、当時は夢にも思わなかったな。

 今までピンとこなかったジャンルにも、何がきっかけで興味を持つようになるのか、わからないものだ。