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劇場用アニメソング鑑賞会(その2) BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を越えて〜

2020/06/20

 前回に引き続き、今回も劇場用アニメ主題歌を鑑賞してみたい。曲目は「BEYOND THE TIME〜メビウスの宇宙を越えて〜」。「機動戦士ガンダム・逆襲のシャア」の主題歌に起用された。最初にTM NETWORKによるオリジナル版が80年代に制作される。その後も、CDや配信で購入できるものだけでも森口博子・LUNA SEA・Aimerによるバージョンがリリース。さらにYou Tubeではコタニキンヤによるカバーも発表された。数々のアーティストに歌い継がれている名曲である。

5150yama「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」
You Tubeチャンネル・5150yamaに掲載。

 まずは男性ボーカルから。第一印象は「ああ、良い声だな」という感じで、聴き進めていけばいくほどに「自分もこんな風に歌ってみたいな」という思いが強まっていった。この曲のカバーはいくつも聴いているが、これはお気に入り。
 最後まで聴き終わった時点で、どんな方が歌っているのか気になったので、You Tubeチャンネルを少し深入りしてみた。この方、多分ギタリストだよね。ここからは推測になるが、一番得意なギター演奏をスッ飛ばして、添え物のボーカルの方に僕は感動していたわけだ。はあ〜、ため息出る!
 僕なんか、Fの和音もロクに押さえられないというのに。フルート奏者がたまに持ち替えて吹くピッコロの方を聴いて「これ凄い!」って驚いてるようなもんかな。
 最初は何の予備知識もないから、カラオケ伴奏に乗せた「歌ってみた」動画の延長線上で聴いていたけど、伴奏も自分で演奏した上での、この歌唱だ。これはギタリストの作品だという認識で聴くと、さらに感慨深くなる。
 というわけで、演奏も自前なんだという認識でリピートしてみた。アウトロのギター演奏がまたアツく、歌い終わってもまだ聴いていたくなるんだよね。これ、レコーディングのときは一応最後までキッチリ弾ききったのか、それともフェード・アウト前提で作ったから、なんとなく弾き終えたのか、どっちだろ。TM NETWORK本人たちのオリジナル音源も、2008年発売のベスト盤「THE SINGLES 1」収録分はフェード・アウト、1996年に発売のベスト盤「TIME CAPSULE all the singles」収録分はカット・アウトで、相違がある。可能ならフェード・アウト版、カット・アウト版と両方出せばいいのに。
 ギタリストによるカバー動画で、オリジナル音源のアウトロをガン無視して、好き勝手に自分を主張したテイクにたまに出会うが、これはリスナーとしては面白い。ドシドシやって欲しい。

加藤茜「Beyond The Time〜メビウスの宇宙を越えて〜」
You Tubeチャンネル・add westaria/加藤茜official に掲載。

 続いては女性ボーカル。先の掲載主同様、歌唱・演奏のどちらでも聴かせる二刀流。これはサムネイルだけで再生前から一発で分かるので、ボーカリストかと思いきや、実はピアニストでした!ということはない。
 魅せ場はやっぱり1コーラス目から2コーラス目に移行する際の間奏。鮮やか過ぎてウットリするね。冒頭や締めの部分で見せる、音をコロコロと転がすような運指も目を引く。バック・トラックの上をピアノ演奏で自由自在に舞っているかのようだ。こちらも先程同様、エンディングが要注目。日本語詞の部分をすべて歌い終わった後の、ボーカル・パートが断片的な英語詞のみになってからが、むしろクライマックスだ。オリジナリティー満載なアドリブに、すっかり虜になってしまう。
 この楽曲自体をしっかりモノにするのは勿論、それ以外の音楽的経験も交えての総括で生まれたテイクだと思う。きっと幅広くいろいろと聴き込んでいるに違いない。僕もこのアドリブをコピーしたくなるぐらいだ。

Jett Swole「Beyond the Time」
You Tubeチャンネル・Jett Swoleに掲載。

 最後に外国人ボーカルによる英語バージョン。最初聴いたときは思わず「エ!?」って目がまん丸になったね。TM NETWORKの「Get Wild」を外国人がわざわざ日本語でカバーしていたり、「Still Love Her」のイタリア語バージョンというのはあったけど、海外まで広まるのはシティーハンターだけには留まらないのか、と。時代も国境もないんだな、本当に驚かされる。
 まず歌をマスターした上で、強烈な個性を放つ小室哲哉のアレンジに引っ張られることなく、自由な発想で展開するオリジナリティー溢れる伴奏。これは聴き応え大アリ。通常ならここまでで十分だが、それより何より、英語詞はどうやって用意したんだろうか。
 1992年にavexから発売されたデイヴ・ロジャースによる全編英語詞のカバー・アルバム「TMN SONG MEETS DISCO STYLE」の収録曲およびTM NETWORK本人たちによるセルフカバー「Rhythm Red Beat Black」であれば、英語詞の歌詞カードつきの商品があったが、この曲はそれに頼るわけにはいかない。自分でどうにかしないと。この労力を考えると、驚きは増す一方だ。
 作詞を担当した小室みつ子本人が翻訳したら、同じ結果になるのかどうかも興味深い。
英語詞にしておくと海外へ拡散するのにも好都合だよね。ここはひとつ、1994年に発売した小室みつ子のセルフカバーアルバム「SIMPLE DREAMS」を英語詞で録り直す!なんてどうだろう。それをJASRACに登録した上で歌詞カード付でリリースしてくれたら、追従するベッドルーム・ミュージシャンたちにとっても、ますますYou Tubeでのコピーが楽しくなるのではないか。


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