注目の洋楽カバー

2019/05/26


最近、僕が注目している洋楽のカバーが、「Mr.Vain」という楽曲だ。元は90年代にCULTURE BEATがリリースしたもの。僕はリアルタイムで聴いていて、アルバム「serenity」も入手した。シングルだけではなく、全編に渡って濃厚なダンスミュージックを味わえる、素晴らしい作品だった。それが10年以上の時を経て、遠い異国の地・日本でカバーされるとは、本人たちも思っていなかったのではないか。というわけで、この度取り上げるのが、DJ TORA,Shadw「Mr.Vain feat.KANAE ASABA」。



 オリジナルの発表からかなり年月が経っているため、現在の機材で制作されたこのカバーは音がとんでもなくぶ厚くなっているが、肝心なフレーズはキッチリ継承されている。最近リリースされたダンスミュージックの中に混ぜても、そこだけ「んん?」と違和感を感じないような、まさに、今の時代に聴く「Mr.Vain」になったと言えるだろう。

 この曲のカバーと言えば、Alex Christensenのこちらも要注目だ。執筆時点では実演動画も見られたので、視聴できるのであればそちらの方が迫力があると思うが、長く残っている可能性の高い、オフィシャルと思われるものの方を上げておく。



 Anastaciaの歌う、「Mr.Vain」。バックに控えるのはなんとオーケストラだ。CULTURE BEATの原曲をご存知の方や、先の日本人カバーを見た後だと、この曲にオーケストラが入るといってもピンとこないかも知れない。だが、実際にやってみるとコレはコレで全然アリだなあ!と驚くばかりだ。こちらは弦楽器の特性を活かすべく、フレーズに原曲にはないちょっとした飾りもつけられている。ラストの大胆な歌いまわしの変更も爽快だ。どんな形態で演奏しようとも問題ないほど、いかに元々のフレーズが秀逸だったか、改めて思い知らされる。

 このCULTURE BEATのオリジナルを入手した当時の僕がハマっていた洋楽のカバーといえば、グロリア・エステファンの「Turn The Beat Around」だ。日本国内でも洋楽通の方にとっては名の知れた存在だろう。



 もともとはTRF(当時trf)のFMレギュラー番組「Cokeイントゥー・ザ・グルーヴ」で流れていた「Conga!」という楽曲で、僕はこのアーティストを知った。DJ KOOの気合の入った曲名コールが印象深い。あの「Conga!」を歌うアーティストの新作ということで、リリース前から注目していた「Turn The Beat Around」。歌が始まる前から、イントロだけ(それもほんの数秒だけど)でもツカミはOKなこの曲。globeの「FREEDOM」なんかもそうだけど、本当に良い曲は始まったその瞬間から気持ち良い。前奏なんか退屈だ、飛ばしてしまえというようなことがない。最新悦のシンセサイザー・サウンドに生演奏の菅弦楽器が調和した、ハイレベルなダンスミュージックだ。シンセサイザーを使えば一人ですべてを構築できてしまう利点もあるが、この曲は制作にすごい手間暇も人数もかかっていて、一流どころが揃わないと成り立たない。

 グロリア・エステファン懐かしい!とか言われてもピンとこない。今現在進行形で彼女の曲もマイアミ・サウンド・マシーンも聴き続けているし、この「Turn The Beat Around」も骨の髄まで染み込むほど聴き込んだという方には、こちらのバージョン・ATONE Dance Club Remix 2012の方が楽しめるだろう。



 You Tubeで家庭用のスピーカーから再生しても、本来の効力は発揮できないかも知れないが、ダンスフロアでかかったときは効果テキメン!お酒も入ってイイ感じになってきてからの、絶妙なタイミングでDJがこの曲にスイッチしてくれたらブチ上がるなあー!一度クラブに訪れたことがあって、「もう一度行きたい」と思った方(家であんな爆音鳴らして怒られない環境にいる人はそうそういない)には響くだろう。原曲からの変わりっぷりを楽しむ作品だと思うので、原曲を知らない方は、いきなりコレに飛びつくよりは順を追って聴くのをオススメする。TM NETWORKの「Get Wild'89」でのGet GeGeGeGeGet…Wildや、Jazztronik「七色」での熱い鼓動ードードードードドドド…、近年だとDA PUMPのカッカカッカカカッ…カーモンBaby、ユユユユU.S.Aみたいな表現方法が好きな方にはたまらないミックスだ。アウトロも、終わったかと思いきや最後にもうひと盛りしてあるのが心ニクイ。

 僕もポップスを聴き始めた頃は、外国の歌手が全編英語で歌う曲なんて、それがどんなにクオリティーの高いものであってもサッパリ分からなかった。でも、Winkの「Sexy Music」は先に日本のヒットチャートで聴いていたので、ノーランズが流れてきても、他の洋楽と違って、だんだん楽曲から注意が逸れていくということはなかったように思う。

 その後時代が経過して、安室奈美恵「WHAT A FEELING」、globe「Stop! In The Name of Love」、観月ありさ「Don't Be Shy」、hitomi「Venus」といった、エイベックスゆかりのアーティストからワクワクするような洋楽カバーが次々と産まれてくることになる。カバーの話から少し脱線になるが、TRFのユーキは、過去にエリーシャ・ラヴァーンとの共演も実現している。Don't Be Shyはカバー元のJAMIE DEEの方も好きだけど、他の3曲はカバー元の方(それぞれアイリーン・キャラ、ザ・スプリームス、バナナラマ)にはあまり興味が沸かない。同じ曲でもアレンジとか、シンガーがこれまでやってきたことなんかで印象がガラリと変わってくるから、アプローチを変えてみれば、これまで関心のなかった層を振り向かせることもできる、ということだ。

 僕が今ハマっている、第一興商の録音・録画機能DAM★ともで公開曲を聴いているときも、音楽を聴き始めたばかりの自分とフラッシュバックするような現象が起きている。先の「Sexy Music」の例に漏れず、一度自国のアーティストが母国語でヒットさせているから、全編英語のノーランズでも最後まで聴いていられるように、サッパリ分からない曲でも、以前聴いていてピンとくる声のユーザーさんや、自分の好きな曲を多く歌ってきたユーザーさんの曲であれば、知らない曲でもなんか聴いてみようかという気になってくる。リスナーのどこに引っかかるか、やってみないと分からないことがいろいろあるものだ。