カラオケ伴奏精度ランキング TM NETWORK編

※2020/03/29にamebaownedで掲載した過去記事を転載。



 カラオケを歌っていて、伴奏のクオリティーがイマイチで、どうにも感情移入できないなと感じたことはないだろうか。逆に、所詮カラオケだし、オリジナルとのギャップはあって当然だとタカをくくって歌ってみたら、本物に迫るクオリティーの高さに驚いたことはないだろうか。
 カラオケを歌って録音したものをインターネット上に公開する遊びも市民権を得てきているように思う。愛着のある曲に何度も挑戦して、納得いく仕上がりになったときの喜びは格別。ついつい練習にも熱がこもる。録音をうまく利用すれば、歌唱の方は伸ばせる。だが、歌い手にとって自分の努力だけではどうすることもできないのが、伴奏の再現度だ。どうせなら少しでもクオリティーの高い伴奏で思いっきり練習したいところ。

 第一興商提供のカラオケ録音・録画サイト・DAM★ともでは、これまで長きに渡り楽曲の公開範囲が同業他社よりも狭かったが、それも今年の春から拡大となる。より公開範囲の広い他のサービスを利用していたユーザーも、ちょっと乗り換えてみようかとなるかも知れない。
 そういう方や、カラオケ録音自体を初めて行う際に、たまたま最初に出会ったのがDAM★ともだという方へ向けて、選曲の参考になるような記事にした。今回は歌の入っていない状態の楽曲について深掘りしてみたい。

 スポットを当てるのはTM NETWORKが80年代に発売したシングル。シティーハンターのエンディングテーマに使用され、スターダムに躍り出た「Get Wild」から、ユニット名を改称する直前の「The Point of Lovers' Night」までの中から、以下9曲をじっくりと聴いた上で、それらのDAMにおけるカラオケ伴奏の出来栄えをコメントしていく。

 既にDAM★ともでTM NETWORKの曲をガンガン歌っている方でも「何言ってんだ、コレじゃなくてあっちの曲だろ」と茶々を入れながら読んでいただけたら、と思う。

 勿論、伴奏のクオリティーなんて気にしない。歌ぐらい自分で好きなように歌いたいという方もたくさんいるだろう。これはやめとけ、歌うなという話ではなくて、あくまでも数多くある選択肢の中から絞り込むための一助になれたら幸いだ。

今回のレコメンド対象楽曲一覧
注:カッコ内はリクエストナンバー。

Get Wild(1294-02)
Kiss You(1294-41)
Resistance(1294-25)
BEYOND THE TIME(1294-18)
SEVEN DAYS WAR(1294-05)
COME ON EVERYBODY(1294-01)
JUST ONE VICTORY(1294-08)
DIVE INTO YOUR BODY(1294-09)
THE POINT OF LOVERS' NIGHT(1294-03)


 この他にGET WILD'89やCOME ON EVERYBODY(with Nile Rodgers)もあるが、まず原曲の方を利用してから、もう一度歌いたくなったときにバージョンを変えて気分も新たに、という使い方も多いだろう。今回は外しておいた。


 まずはこの中から、イケてる方の伴奏を発表。

ベスト1・BEYOND THE TIME

 近年の進化した伴奏制作技術とは違って、古くから存在するカラオケ伴奏全般に言えるのは、ギターの再現性に難ありな点。当時の技術では限界があると言えるだろう。松本孝弘もB'z結成当初は、コンピューターでは再現できないパートとして、ヒューマンボイスとともにギターを挙げていた。
 この曲はアレンジの面からも、ギターの再現性が高くなくとも、全体的な印象には大きく響かないのがポイントか。

ベスト2・COME ON EVERYBODY

 歌が入っていようがいまいが、単に僕のお気に入りということで補正がかかってしまってはいるが、第2位はこの曲。プロ・ミュージシャンのH ZETT Mのフェイバリット・ナンバーのひとつでもある。
 DAMのカラオケ伴奏には同名曲の同一バージョンでも、曲名の後にカッコ生音がつくものとつかないものの2種類が存在する場合がある。おそらく制作技術の進化に伴い、後発で登場したのがカッコ生音がつく方だと思われる。だが、なぜかこの曲に関してはカッコ生音がつかない方が、僕は気分良く歌える。

ベスト3・JUST ONE VICTORY

 伴奏は安定している。目立った減点要素はない。イントロの尺が端折られているので、知らずに歌うと想定よりも歌いだしが早く訪れる。気をつけるのはそこぐらい。

 イケてない方の伴奏はこんな感じ。

ワースト1・THE POINT OF LOVERS' NIGHT

 他を大きく引き離しての、ダントツのワースト1位。何の曲だか分からないレベル。僕は初めて利用したとき、曲を入れ間違ったかと思ったぐらいだ。イントロが始まってから歌い出すまでの間に、これはTHE POINT OF LOVERS' NIGHTなんだ、と自分自身を無理矢理納得させる作業が必要。感情移入なんてとてもできない。できることなら全パート総取り替えで、イチから作り直して欲しいところだ。

ワースト2・SEVEN DAYS WAR

 第一興商が独自にこしらえたイントロに違和感を覚える。原曲がいきなり歌い出す始まり方をするから、何かしら音を前もって入れておく必要があるけど、ドラムスティックでカウントを叩くだけで十分なんだよね。スタッフとしては、それじゃあ味気ないだろうという配慮からかも知れないが、裏目に出ている気がする。
 利用歴の浅い方に向けてお伝えしておきたい。なぜ、この曲を歌う人ってみんながみんな後奏をスッ飛ばすんだろう?最後まで聴かせてよ。視聴していてそう感じるかもしれないが、伴奏がそもそも最後まで制作されていないのである。このフェードアウトするアウトロもマイナスポイント。最後まで歌わせて欲しいと思ったユーザーは、きっといる。歌の本編部分は悪くないのにね。浜崎あゆみのカバー版はキッチリ最後まで歌える作りになっているのに、どうしてこちらはお預け食らってしまうのだろう。

ワースト3・DIVE INTO YOUR BODY

 なんだか物足りない。決定的な間違いこそないものの、オリジナルとの距離感はそこそこ感じる。音色のエディットなど細かい部分の詰めの甘さが積み重なってのこの結果ではないだろうか。
 イマ一つな伴奏を自分の歌でどうにか引っ張らなきゃなあという、何か背負ってる感あり。伴奏に気分良く身を預けて思いっきり歌うという感覚にはなれないか。
 完成度の高い伴奏に引っ張られて、自然と自分の歌も良くなるというのが理想ではあるが。この伴奏ではそこまでにはならないだろう。

 どちらにもランクインしなかった曲は、可もなく不可もなくといったところ。ワーストの3曲については、ベスト3曲を聴いた直後に流しても落差を感じないぐらいにアップデートして欲しいものだ。SEVEN DAYS WARなんて、元はそんな悪くない。あのアウトロの続きを作るだけでかなり印象変わるのに。

 ちなみに僕が最近、伴奏のクオリティーの高さに感動した曲は、宇都宮隆「RUNNING TO HORIZON」。コーラス・パートこそ入っていないが、楽器隊の部分は何の違和感もない。完璧だ。これは気分良く歌える。それにコーラスは自分で作り上げる余地が残っていて楽しいという捉え方もできるし。