女性が表現する「Get Wild」

2019/04/07


デビュー35周年を迎えるTM NETWORK。エンディングテーマ曲が話題となった映画「シティーハンター」のヒットや、映像作品『TM NETWORK THE VIDEOS 1984-1994』のリリース、1994年の東京ドーム公演が全国の映画館で公開など、今年に入ってからの彼らの周囲を取り巻く環境は、メンバーの小室哲哉が引退しているとは思えないほどの盛り上がりっぷりだ。この度は彼らの代表作「Get Wild」を女性がカバーしたバージョンのうち、執筆時点においてYou Tubeで視聴できるものの中から、3作ピックアップしてみた。TM NETWORKが好きで「GET WILD SONG MAFIA」を延々と聴いていられるという方は、こちらもチェックしてみてはいかがだろうか。オリジナルとはまた別の切り口で楽しめるなあ、と僕は思っている。

Lipselect「Get Wild」

アレンジは「Get Wild'89」を軸にしている。見せ所はイントロ。冒頭はTM NETWORK版と同じキーで鳴らして「おっ、始まったな」と思わせておいて、途中から女性用のキーへ強引に上げていく。ここの高揚感がハンパない。普通は女性用のキーに設定したら最初からそのキーで始めそうなものなのだが、このアレンジはキー設定がお見事!ボーカルは登場するタイミングやド派手な衣装が良い感じ。歌はハートだと分かってはいても、やっぱり見た目が武器になる人は得だなあと思ってしまう。




アカシアオルケスタ「Get Wild」

ジャズ風なGet Wild。2000年代の中ごろ、僕は少し小室哲哉の音楽から距離を置いていた。この時期はクラブサウンドとジャズの融合したコンピレーションCDが多発され、シーンを盛り上げていた日本人アーティストが多数いた。JazztronikやSoil & "PIMP" Sessions・Quasimode・STUDIO APARTMENTなどだ。それらに触れてから、また小室哲哉の音楽に戻ってきた今だからこそ面白く感じる。多分ずっと小室哲哉や日本のポップソングばかりを聞いていたとしたら、この凝ったアレンジもなんのこっちゃ分からなかったかも知れないぐらい、原曲とは別のアプローチで表現されている。歌い回しも相当大胆に崩してある。ロックシンガー(例えばB'zの稲葉浩志など)がシャウトで感情表現しそうな所を、このボーカリストは吐息をうまく使って楽曲を盛り上げている。これなら女性でも攻めた表現ができるなあ。新鮮に映ったし、クールでかっこいい。原曲に愛着の強い一途なファンの方には賛否あるだろうが、僕は気に入っている。



826aska「Get Wild」

エレクトーンのインストで女子高生が演奏する「Get Wild」。今の時点でこんな年代にも演奏曲目として取り上げられるほど、この楽曲自体が持つ波及力の高さに改めて驚かされる。カメラワークにも気を遣ってあって見ていて楽しいし、終盤には「エッ、そこを切り取るの?」という意外な展開で、コアなファンにとっても音楽的に面白く聴ける。歌ではなく演奏でのカバーだと、何をしたらアツイのかをちゃんと押さえてあるなあと思う。


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