MINT SPECがIZAM司会の音楽番組にゲスト出演・後編
(前編からの続き)
Miiがショービズの世界に憧れて秋葉原に飛び込んだときのことにも話が及んだ。IZAMは、どんなグループでやっていたのか尋ねたが、Miiは「一人で歌ってました」と答える。アイドルと聞いたものだから、IZAMはグループの一員ありきで考えていたのが、まさかのソロ・シンガーだったのが驚きのようだった。
IZAM自身もバンドとソロ活動の両方を経験してきて、ソロ・シンガーにはメンタルの強さが必要なのを肌で実感している。それをやってきたMiiの凄さにも言及していた。バンドには、ふと横を振り向けば仲間がいるという安心感に支えられる部分もある。ソロ・シンガーでは、こうはいかない。
これを受けてMiiが次のように話し出す。「私は逆で、1人からの2人なんです。振り向けば(相方が)いるけど、目が合わないんですよ」。このように、演奏中もずっとうつむいたままのTsukushiの様子を語る。1人じゃないから安心できるというわけでもなさそうだ。
ギターのフレットをのぞき込むから目が合わないのであって、2人の立ち位置を逆転させたらいい。IZAMはこう提案した。ここでMiiがTsukusiに目を見るか訊く。Tsukusiは「たぶん合わせないと思う」と、照れ笑いを交えながら答えた。
疫病の蔓延で社会が自粛モードとなり、音楽業界がダメージを被ったここ数年、MINT SPECも配信に重点を置いて活動してきた。IZAMは、まずこの間にYouTubeのチャンネル登録者数を4万5000人にまで伸ばしたことを高く評価した。それから、いざライブを開催するとなったとき、このうち何人が実際に会場に足を運んでくれるのかが勝負とも言っていた。
Tsukushiによると、年内にMINT SPECのライブを行うという構想まではあるものの、具体的な日時の確定や会場を抑えるまでには至っていないとのこと。こう話すと、今撮影しているこの収録場所(Shinjuku Broadband Studio)をライブ会場にしてみないかとIZAMが持ちかけてきた。このスタジオは観客を収容することもでき、高画質での配信も可能だという(スタンディングで70人、着座だと40人程度)。腕利きのスタッフを抱えているので、カメラワークも申し分ないそうだ。
続いて、2人が音楽に目覚めるきっかけの話になる。Miiは自らのルーツのうち、SPEEDについて触れる。ソロ・シンガーとして活動している間も、アイドル・グループの一員になることには、おおいに興味があったようだ。TsukushiはBS放送で見た坂崎幸之助に衝撃を受けたのが始まりだという。視聴者からもMiiからも、「声が聞こえない」、「マイクを近づけて」と言われていた。雑談は苦手でも構わないから、自らの音楽のルーツの話は声を大にしてできるようになってもらいたい。持ち歌の解説をする機会も、これから新曲を出す度に出てくるだろう。こういう場面は作曲者自ら、リスナーにしっかりとMINT SPECの音楽の魅力を伝えられるようになって欲しいものだ。Miiの元気の良さに助けられる場面も多々あるとは思うが、専門的な知識はTsukushiにしかない。これからはギターの練習とは別に、MINT SPECの良さをサウンド面から言葉にして伝える練習も必要になってくるだろう。
Tsukushiがエレキ・ギターをきちんと弾き出したのは、MINT SPEC結成後だというから、エレキ歴はわずか3年程度ということになる。「最初は大変でした」という声には、実感がこもっていた。出演した現時点で3年だから、YouTubeに投稿した、『紅』のギターソロをどれだけ速く弾けるかチャレンジする動画は、今よりもまだ経験が浅いときに撮った動画ということになる。改めてその才能には驚くばかりだ。筆者も初めてMINT SPECを知ったとき、Tsukushiについては、アコースティック・ギターには1mmも興味がなさそうなイメージだったが、実際はまったく逆なのだ。
MINT SPECのYouTubeの生配信で、Miiが歌の他にもフラフープやツイスターなどで視聴者と一緒に盛り上がっている様子を話すと、IZAMも「今度見てみよう!」と興味を示す。昨年の坂崎幸之助との共演を振り返る話では、IZAMも坂崎幸之助の人柄の良さに触れ、キャラクターの異なるTHE ALFEEの3人が、長年に渡り活動を継続している点にも敬意を払っていた。
Tsukushiは昆虫のセミが大の苦手。Miiは、「夏になるとレディーファーストを装って私を先に行かせて、セミ除けにしてくる」とTsukushiのことを言う。Tsukushiも「前世でセミに食べられたんじゃないか」と、冗談交じりに苦手な理由を答えた。IZAMも、「食べられるって、どんだけ小さい虫だったの!?」と、話を広げる。ここで一同、「セミって、虫食べるのか?いや食べない。樹液だ」というのに気づく。Tsukushiの前世は生き物ですらなく樹液だったという、意外なオチがついた。IZAMは「MINT SPECのライブ会場に大量のセミを内緒で仕込む悪戯を仕掛けてみたい」という冗談も飛ばした。
レコーディングでは、MiiがTsukushiの考えるように歌えず、何度も失敗を繰り返すうちに悔し泣きをしてしまうエピソードも打ち明けられた。IZAMも彼のこだわりの強さに「泣くぐらいなんだ!?」と、驚きをみせる。一度泣いてしまうと気持ちが歌声に乗ってしまうので、レコーディングも中断せざるを得ない。初めて会って話すのに、IZAMは瞬時にここまで察していた。
さらに自身のレコーディングでも、歌い方について仲間と意見が合わない場合の対処についても話す。IZAMは、「じゃあ、一度手本を見せてよ」と、作曲者に切り返すそうだ。Miiもありがたい話だとばかりに、興味津々に聞いていた。「今度、勇気を出して言ってみます!」と言ったときは、満面の笑みだった。
それから、今のMINT SPECのレコーディングの進め方を聞いて、IZAMは「ボーカリストとしては成長するかもね」と、Miiに声をかけた。誰が聴いてもこれはMiiの声なんだとすぐわかるぐらいの個性を身につけるのが一番。Miiが自分なりの歌い方を見つけて、周囲を納得させられるボーカリストになり、歌については一任できるほどの存在になってくれるのを、Tsukushiも望んでいるようだ。
IZAMと話すうちに、レコーディング中にTsukushiが音楽面で一切の妥協をせず、歌に厳しい要求をする真の狙いを、Miiは悟ったもよう。さらに毎日プロモーション活動に明け暮れているのにも感謝していることも加えて、Miiにとっては初めての気づきが多い対談となった。Tsukushiが「ありがとう」と言葉にしてMiiに感謝の気持ちを伝えたのは、なんと今回が初めて。
ボイトレの話題になると、IZAMは過去の出演者・米倉利紀との対談を振り返る。「ボーカリストは毎日鍛錬していないと、喉の声帯の筋肉は本当に落ちていく。久しぶりに歌ったら自分の声が出せなくなって、歌えなくなる。」という具合に、年間130本のライブをこなしている彼の発言を紹介。日々の練習の積み重ねが大事だということを説いていた。
毎日のテイクをcubaseを使って送受信する話を聞き、IZAMはTsukushiのユニット愛の深さにも言及。Miiが録音を送ると、いつもすぐに返事が返ってくるということは、Tsukushiもギターの練習など自分のやることがあるのに、そちらの作業の手を止めて、Miiに合わせてくれているんだと言っていた。当人たちにとっては初めての気づきが多いのはもちろん、いち視聴者の筆者としても、生配信で自分で自分の活動状況を紹介するのとはちがって、こうして別にインタビュアーが立った状況というのは、彼らのようすがよく分かる。
今回はMINT SPECへの興味がますます深くなる機会になった。
MINT SPECはX JAPANのカバー『Rusty Nail』に加えて、本邦初公開のオリジナル曲『Jewel』を生歌で披露した。トークは笑いと驚きが頻繁に繰り返されるドタバタ劇のよう。これはこれで楽しかったが、スポットライトが当たると途端に、キリリと引き締まったクールなサウンドを、熱いパフォーマンスで視聴者に届けた。コメント欄の反響でも、確かな手ごたえを感じ取ったに違いない。筆者も今回の新曲には、秒で虜になった。
番組のアーカイブは一定期間残るので、ぜひご覧いただきたい。新曲の完成でさらに勢いづく彼ら。今後の動向にも要注目だ。
MINT SPEC『Rusty Nail』
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