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山本希望さんと天野聡美さんと「UN-GO」の話

『推しを推していて本当に良かったと感じる瞬間』って色々ありますよね。
推しが大きな仕事を掴んだ時。推しが最高の仕事を見せてくれた時。推しのファンが増えた時。推しに認知してもらった時。私信をもらった時。
ここに書くのは、僕がこの1年3ヶ月で経験した『推しを推していて本当に良かったと感じた瞬間』の話なんですが、その話をする為、タイトルにあるように声優の山本希望さんと天野聡美さん。そして「UN-GO」というアニメの話もします。

2019年2月。僕の推しである声優の山本希望さんがMCを担当する声優お料理番組『のぞみとあやかのMog2 Kitchen(もぐキチ)』の3月放送分に、事務所の後輩の天野聡美さんがゲスト出演することが発表されました。
天野さんはこの年の元日に、「アイドルマスター シンデレラガールズ(デレマス)」の白菊ほたるの担当声優として発表された新人声優で、当時デレマスのオタクたちから注目をされており、僕もそのひとりでした。「デレマス」には山本さんも出演していること、そして「もぐキチ」への出演が天野さんにとって初の映像付き番組への出演ということもあり、共演の発表は純粋に「お~、楽しみだなあ~」という感じでした。

自分が予想もしていなかった展開が起きたのは、3月14日放送回の有料会員向けおまけパートでのことです。

MCからゲストへ「好きなアニメって何?」という声優番組としてはベタ中のベタな質問が出た際、天野さんが答えた作品が「UN-GO」でした。

「UN-GO」??????
2011年に放送された全11話+劇場版1作のアニメ?????????

耳を疑いましたね……。
何しろ、僕が山本希望さんのオタクになったきっかけが「UN-GO」なんですから……。
「え~~~~、もう少しで平成も終わるって時に、新人女性声優がUN-GOの話してる……!」と驚いていたら、山本さんの方も「私のアニメデビュー作!!」と驚いていました。そこに天野さんから更に衝撃の言葉が。

「それもあって、(山本さんが所属している)ヴィムスに行きたいなって思って」

え~~~~~~。そんなことあるのか。
驚きと喜びのあまり、山本さんは泣きだすし(こういうことを言われたのが初めてだったらしい)、PCの前のオタク(僕)は「え???え~~???」と夜中なのに近所迷惑になるような声を出す。
「声優に憧れている子が、ある声優の演技を見てその人と同じ事務所を志望した」という話は声優界ではよくある話だとは思いますけれど、その憧れとなる対象に自分の推しがなるということを僕は思いもしていなかったんですよね。推してるくせに失礼な奴だなと我ながら思うんですが、うちの推しはまだキャリア的にそういう存在になれる段階では無いと思ってたんでしょうかね。
先述した山本さんの言葉の通り、「UN-GO」は山本さんのアニメデビュー作です。この作品で彼女はヒロイン・海勝梨江としてレギュラー出演し、その演技を聴いたことから僕は山本さんのファンになっていきました。
山本さんのデビュー作。そして、自分が山本さんにハマったきっかけでもある「UN-GO」を見た女の子が声優になって、彼女と同じ事務所に所属した。しかも事務所を志望した理由は、山本さんがいるから。
「推しを推していて本当に良かった……」と、番組を見終わったあと、風呂に入りながらガチで泣いたのを覚えています。新人時代の推しが、右も左もわからない中で必死にもがきながらやっていた演技が、ひとりの女の子の人生に多大な影響を与えていたという事実がめちゃくちゃ嬉しかったんですね。「UN-GO」の放送から、天野さんが「もぐキチ」にゲスト出演するまで7年ちょっと。声優続けてきてホントに良かったなあ、と何様だという感じのことも思いました。

天野さんと山本さんはこの「もぐキチ」の放送以降、様々な場で共演する機会がありました。その多くは「デレマス」繋がりで、ラジオやライブ、トークショーと、ふたりが並ぶ姿を短い期間の中でいくつも見ることができ、とても嬉しかったです。(僕は「デレマス」では城ヶ崎莉嘉ちゃんのPくんなんですけど、9月に開催され、ふたりが共に出演したデレマス7thライブ幕張公演を観に行った時は山本希望さんのオタクとしての感情の方が大きかったような気がします……)

と、ここまでの流れだけでもすごく嬉しい体験だったわけなんですが、「推しを推していて本当に良かった」と泣いたあの日から約1年後。このオタクはあの日泣いた物語の「続き」を見ることになります。

2020年3月。天野さんがMCを担当する生放送番組「天野聡美のトロトロ王国(トロ国)」の4月放送回への山本さんのゲスト出演が発表されたのです。憧れの先輩の番組にゲスト出演した新人が、それから1年経って今度は自分の冠番組にその先輩をゲストとして招くということだけでもう感情がめちゃくちゃになり、感情がめちゃくちゃになったまま放送を待つことになりました。
が、実はこの放送、折からの新型コロナウイルス感染拡大防止の影響により放送が延期となり、5月までこの感情のまま過ごすことに。一度放送中止が発表された時はだいぶ凹んだのですが、続けて5月放送回へのゲストに呼んでくれたのは本当にありがたかったです。

番組の内容自体はふたりがわちゃわちゃトークをしたり山本さんがマイブームを天野さんに紹介したりする声優番組としてベタな感じだったのですが、このふたりの関係に尊さを見出しているオタクにとっては、天野さんと山本さんがわちゃわちゃしているだけでもう大満足なんですね。

と、油断をしていると思いもよらないパンチを喰らうのを1年前に経験しているのにオタクはまったく学習しない。

パンチを喰らったのは番組終了直前。
天野さんへのサプライズで、山本さんが天野さんへ書いてきたお手紙の朗読が始まったのです。
山本さんからの手紙は、1年前「もぐキチ」で天野さんに言われた、「UN-GO」に出演していた頃の自分を見てヴィムスを志望してくれたということがとても嬉しかったこと。この1年間、天野さんの活躍を見る度に誇らしく感じたこと。自分が憧れた声優たちと、自分も同じ道を歩めているのだと知れたこと。そのすべてへの感謝と、いつか天野さんにもこの気持ちを経験してもらいたいというものでした。
ここまでの番組の空気がガラッと変わり、「良い文章を書くなあ~~~」と感極まりながら放送を見ていたのですが、ここでもうひとつのパンチが。
実は、天野さんもサプライズのお手紙を用意していたのです。サプライズにサプライズで答えるレターバトル。トロトロ王国に発生したサイファー。


「UN-GO」に出会い、そこで聴いた山本さんの演技が、毎日をただなんとなく生きていただけの自分に「声優になりたい」という夢を与えてくれた。夢を叶え、今放送中の「球詠」で初めてアニメにレギュラー出演できるようになって、当時の山本さんのすごさを感じている。今、自分は自分に自信を持てない。新人時代の山本さんのように人の心を動かせる演技をできていないかもしれない。でも、いつか自分も誰かに夢を与えられるような声優になりたい。
天野さんからの手紙は、山本さんが書いた「この1年」の話に対し、彼女が「UN-GO」を通して山本さんと出会ってから今日までの想いが綴られていました。
1年前、僕が泣かされた物語の「続き」を見れました。良質な朝ドラを見てるような感覚。

実は山本さんは、「UN-GO」という作品についてかつては「タイトルを聞くだけで緊張感が走る作品」と色々な場で語っています(僕も7年ぐらい前の接近戦イベントで面と向かって言われたことがある)。収録時のエピソードを知ると、そりゃあそうなるよなあという感じで、当時の山本さんも今の天野さんのように「自信を持てない」、「反省をすることばかり」だったようです。

山本さんはヴィムスに所属してから2年間、「声優」の肩書を得ながらも何の仕事も無く、オーディションも受けられない時間を過ごしました。そんな中で掴んだ念願のテレビアニメ初のレギュラー出演作。が、それもけして晴れやかな思い出ばかりではない作品。
しかし、あの頃必死にやってきた演技は、ひとりの視聴者である女の子の心を動かし、夢を与え、人生を大きく変えた。そしてその女の子は夢を叶えた今、憧れた人が画面の向こう側で経験していたのと同じ道に立っている。その女の子の中では、今もかつて憧れた演技が形を変えて影響を与え続けている。

「推しを推していて本当に良かった」と感じる瞬間。

推し本人でなく、別の声優の言葉からこの瞬間を感じるというのはとてもレアなものなんじゃないかなあと思いました。1年前に経験したものに更に重みが増した感じ。
自分が惹かれた推しの演技には、やはりすごいチカラがあったのだ。あの時妙に心に残り、そのまま沈んでいった沼に住み続けて8年半。住み続けて良かった。
「声優オタクが見たら幸せになる光景」の中でも、とてもレアなものをこの1年3ヶ月で見れた気がします。そして、作品や役者が持つチカラってすごいなあとあらためて感じました。

今年、2020年は山本希望さんが声優としてお仕事をできるようになってから丁度10年になる年です(声優としてのデビュー作は2011年1月に発売されたXbox 360用ゲームソフト「ぎゃる☆がん」です。宣伝番組が2010年11月から配信されていました)。そんな年に、こういった良いエピソードを聞くことができて本当に嬉しいです。山本さんは「役者として創作をしてく上で、自信を持ちすぎても良くない」と「トロ国」の中で天野さんに語っていましたが、人の人生を大きく変える程の演技をしたということの自信はずっと持ち続けて行って欲しいなと思っています。

天野聡美さん。なんというかもう、どんどん羽ばたいて行って欲しい……。時代を代表するような声優になって欲しい……。それだけのポテンシャルを持った人だと思っています。
彼女の演技が誰かの心を動かし、近い未来に、自分が憧れた先輩と同じ経験をする日が来ることを楽しみにしています。



そして放送終了から8年半の時を経てこんなすごい光景を見させてくれた「UN-GO」。本当にありがとう。僕にとって、推しと出会わせてくれただけでなく、人生観にも影響を与えてくれたので、まさに自分の人生を大きく変えてくれた作品だよ……。「UN-GO」を作ってた人たちに、天野聡美さんと山本希望さんの関係のことが伝わったら素敵だなあ……。
あと、来年の秋で放送から丁度10年だし、なにか動きとかあったら嬉しいね……。



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