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にっぽん怪盗伝『正月四日の客』

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角川文庫「にっぽん怪盗伝」 『正月四日の客』本番 & 取材の模様など。
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#枕橋

彼方に浅草寺の大屋根がのぞまれると言った風景で…

池波正太郎作『正月四日の客』取材で、向島から馬道を通って浅草へ。 本作の主な舞台は、蕎麦「さなだや」。 (『正月四日の客』より)店は枕橋の北詰にあり、西は大川、東は水戸家下屋敷と言った静かな場所だし、源兵衛掘の対岸は中ノ郷の瓦町で瓦焼の仕事場が堀川に沿って並び、煙がいつも上っている。大川を隔てた対岸は、花川戸、山の宿、今戸の町並みの彼方に浅草寺の大屋根がのぞまれると言った風景で… 隅田川の向う、浅草方面を眺めても、今や浅草寺の大屋根は見えない。こんな思いをするごとに、都

ほれ、常泉寺という寺があるね…

1596年(慶長元年)創建の古刹。 池波正太郎作『正月四日の客』では、ここに大泥棒の手下が寺男に成りすまして住み込む。 作品に登場する寺が現存するのは有難い。登場人物が行き来する場所の位置関係もイメージしやするくなる。 昭和3年、言問橋の完成にともない新たに作られた言問通りは、常泉寺の境内の中央を分断する形となった。政府は常泉寺に対し、代替地を用意し寺院を移転するよう提案したが、常泉寺は歴史が古いことを重要視し寺域を縮小して現在地にとどまった。 『正月四日の客』の主たる

「さなだや」というその蕎麦屋は…

池波正太郎作『正月四日の客』の舞台は、本所の枕橋にある蕎麦屋。「鬼平犯科帳」の『蛇の眼』で覚えている方もいらっしゃるかもしれない。美味い蕎麦屋だ。亭主は庄兵衛。両作ともに同じ名前だが、キャラクターが異なる。 現存する枕橋へ向かった。 枕橋「古いなぁ」…思わずこぼれた一言。耳を傾けるとブツブツと昔語りをしてくれそうな趣がある。橋の袂にある石碑によると、 寛文2年(1662年)、関東郡代であった伊奈半十郎により、中之郷(現在の吾妻橋)から向島に通じる源森川に源森橋が架けられ