打楽器
事務室の奥の席、生真面目な課長がパソコンで何やら文書を必死に作っている。
〆切が近いのか鬼の形相だ。
そんな中、窓口に来ていたおばちゃんのスマホから、
おなじみの軽やかなマリンバの着信音が鳴り響く。
パラピッポピッポピッポパッポピッポパポポン♪
ピッピポピッピロパッポピロペロパッポポン♪
おばちゃんは窓口のデカい男との話に夢中で、着信音を中々止めない。というか鳴ってることに気づいていない。
パラピッポピッポピッポパッポピッポパポポン♪
ピッピポピッピロパッポピロペロパッポポン♪
おばちゃんはデカい男に食ってかかっている。
延々とマリンバの音が廊下に鳴り響く。
ついに課長の集中力は途切れ、たまらず舌打ち。
「チッ。うるさいの〜早く止めろや。
集中でけへんわ。うるさいって自分で思わんのか!
普通気付くやろ!」
ブツブツと文句を言う課長。
しかし彼はまだ知らない。
彼のキーボードを叩く音が打楽器のごとくやかましく、みんなの迷惑になっていることを…
そして「キー坊」と呼ばれていることを…
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