【あなたは強い?弱い?】後悔しないためのお酒の教養
「タバコは百害あって一利なし」
「酒は百薬の長」
いづれも良く聞く言葉かと思います。
私はどうにも共感できませんでした。
「タバコは煙を通じて肺に作用する。酒はアルコールで、脳に作用する。脳に作用する方がどう考えても毒じゃないのか?」
・・・という訳で、お酒の毒性についてまとめてみました。
目次
・お酒の成分とその製法
・エタノールの分解工程
・エタノールの人体への働き
・アセトアルデヒドの人体への働き
・タバコとお酒
・お酒の効用
・お酒に強い人、弱い人
・お酒の適量とは
・最後に
お酒の成分とその製法
そもそも、一般的にお酒に含まれるアルコールは、厳密には「エタノール(エチルアルコールとも言う)」という物質からなります。
この物質は、手などの消毒でよく利用されます。
飲食店やスーパーマーケットなんかに行くと、入り口においてあるスプレー式のものがそれです。※飲まないでください。飲用の酒と違い科学的に合成されたものです。
お酒の製造方法は、大きく以下の3種類です。(Wikipedia「酒」より引用)
引用ここからーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・醸造酒:原料をそのまま、もしくは原料を糖化させたものを発酵させた酒。
・蒸留酒:醸造酒を蒸留し、アルコール分を高めた酒。
・混成酒:酒(蒸留酒が主に使われる)に他の原料の香り・味をつけ、糖分や色素を加えて造った酒。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%92 より)
引用ここまでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
つまり、お酒を造る原料には糖分または糖分になるデンプン分が存在していないといけません。
まとめると、
・お酒=飲用のアルコール=エタノールである
・飲用のエタノールは糖分または糖分になるデンプン分を含む材料を発酵させることで得られる。
エタノールの分解工程
次に、お酒を飲んだ時に体内でエタノールがどうなるか、という話です。
体内に取り込まれたアルコールは、無害化されて体外へ排出されます。
「無害化される」ということは、アルコールは人体にとって毒であり異物です。
(病気になると処方される薬も人体にとって毒であり異物なので、ここではまだ「人体に悪影響である」とは言えません。)
では、どのように無害化されるのか。以下のような流れです。
1.胃や腸で吸収されたエタノール(有害)が肝臓に達する。
2.アルコールデヒトロゲナーゼという酵素を分泌し、エタノールをアセトアルデヒド(有害)に分解。
3.アルデヒドデヒトロゲナーゼという酵素を分泌し、アセトアルデヒドをアセテート(=酢酸 無害)に分解。
4.アセテート(酢酸)は血液に乗って全身を巡る。
5.筋肉や脂肪組織でアセテートが水と二酸化炭素に分解され、尿に乗せて排出。
このように、体内に入ったアルコールはいくつかのステップを踏んだのちに排出されます。
まとめると、
・摂取したアルコール=エタノールは2種類の酵素によって無害化され、筋肉+脂肪組織によって水と二酸化炭素となり排出。
・エタノール→アセトアルデヒド→アセテート→水+二酸化炭素の流れ。
・エタノールとアセトアルデヒドの2種類が有害物質。
※「有害物質」と聞くと何かとても悪いもののように感じてしまいますが、ここではそのような意味合いではありません。風邪薬も人体にとって異物であるという意味では有害物質に当たるように、「人体に何らかの影響を及ぼす異物である」という意味合いで使っています。
エタノールの人体への働き
ここまで、お酒を飲むと体はどう分解するかというお話でした。
では、エタノールは人体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
1.酔い
エタノールには中枢神経系(=脳)を抑制させる作用があります。
これが一般的に言われる「酔う」原因になっています。
エタノールは、その血中濃度によって中枢神経系の抑制作用が強くなります。
結果、以下のような症状が現れます。血中濃度の上昇に伴いa→dへと移行していきます。
a.抑制系神経に対する神経抑制効果→興奮の助長
b.運動能力の低下(反射の遅れやまっすぐ歩けないなど)
c.記憶障害が現れる(翌日覚えていない)
d.瞳孔拡大、呼吸困難、死
「次の日に覚えていない」までは、体感したことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その量を超えてしまわないようにしましょう。
2.病気
エタノールによって引き起こされ得る病気は、以下です。
・脂肪肝
・アルコール性肝炎
・肝硬変
・胎児性アルコール症候群をはじめとする胎児への悪影響
さらに、脂肪肝やアルコール性肝炎、肝硬変は放置しておくと肝臓がんになるリスクもある為、間接的にがんを引き起こすとも言えるでしょう。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、ほとんど自覚症状がありません。
定期的な健康診断による早期発見のみが頼りです。
アセトアルデヒドの人体への働き
次に、アセトアルデヒドの人体への影響についてです。
アルコールを分解していく過程で生成されるアセトアルデヒド。
こちらの物質の方が、人体に対する悪影響の側面が強く見られます。
1.悪酔い
お酒を飲むと、酔う以外にも外見的変化や体調の変化が現れる場合があります。
顔が赤くなる、頭痛がする、吐き気がする、嘔吐するといった症状はアセトアルデヒドの毒性によるものであると言われています。
二日酔いによって引き起こされる作用も、多くはこのアセトアルデヒドによるものという見方が強いです。
※一部では、二日酔いはアセトアルデヒドが原因ではないという見方もあり、研究中のようです。
2.発がん性
国際がん研究機関(IARC)という機構が、「IARC発がん性リスク一覧」というリストを公開しています。
それによると、そもそもエタノール(アルコール飲料)は、「グループ1(ヒトに対する発癌性が認められる (Carcinogenic)、化学物質、混合物、環境)」という項目に分類されています。
グループ1に挙げられる物質には、他にもアスベスト、ヒ素、加工肉(ベーコンやハムなど)が挙げられています。
発がん性が認められているとはいえ、物質によってその毒性の強弱があるとは思われますが、アルコール飲料は発がん性を有するという点では危険であると言えます。
さらに、エタノールを分解する過程で生成されるアセトアルデヒドにも発がん性があるという研究結果があります。
しかしながら、「発がん性物質としての危険性の程度」「閾値」などの数値に関しては研究が出来ていないのが現状です。
タバコとお酒
「お酒」という話からは少し離れますが、ここでタバコについても少し触れたいと思います。
実は前述のアセトアルデヒド、タバコに含まれています。
効果は、1.タバコの燃焼速度を上げる。2.ニコチンの吸収を促進する。という2点です。
このニコチンは依存性という作用があることで有名ですね。
他にも、中枢神経の興奮作用、血管収縮作用、心拍数増加作用があり、動脈硬化の引き金にもなります。
さらに、タバコに含まれるタールという成分はアルコールによく溶ける性質があります。
タールは細胞に付着して体内に溜まる性質があり、これがタールの発がん性とつながります。
タバコの有害性についてはここでは詳しく深堀しませんが、ここまででなんとなくお酒とタバコを同時に摂取することがお互いの毒性を強める相乗効果を生んでしまうことが理解できるかと思います。
非喫煙者の方で心配なのが、居酒屋における受動喫煙でしょう。
お酒を飲む場では往々にしてタバコの煙が漂っていることが多いかと思います。
結論から申し上げると、受動喫煙による毒性は気にしなくても良いレベルであると言えるでしょう。
主流煙による喫煙と副流煙による受動喫煙には大きな違いがあります。
それは、取り入れる煙の濃度と、深さです。
一般的な喫煙は、煙をタバコのフィルターを通じて直接吸い、肺の奥まで煙を入れることで迅速にニコチンをはじめとする成分を吸収します。
それによって依存性や興奮作用を受け、「タバコを吸うことによる快感」を得るのです。
しかし、受動喫煙は空間の大気により薄められた煙です。
その上、肺の奥深くまで取り入れるといったことはありません。
なので、受動喫煙ではニコチンの依存性や興奮作用を受けることは無く済むのです。
仮に受動喫煙が一般の喫煙と同じ効果があれば、喫煙者は居酒屋などの煙の充満した空間に居るだけで喫煙効果を得られるはずですよね。
お酒の効用
かなりのスペースを飲酒による悪影響に割きましたが、逆に飲酒による好影響もあります。
1.血行促進・・・これにより脳梗塞の改善、冷え性の改善が見込まれます。
2.リラックス効果・・・いわゆる「ストレス解消効果」です。脳の理性を司る部位を働きを弱めることにより、相対的に本能を司る部分の働きが活発になります。また、お酒の香りによるアロマ効果がより一層リラックス効果を発揮すると言われます。
3.食欲増進・・・前述の脳の働きだけではなく、胃の働きも活発化させてくれます。胃の蠕動を活発化させることで消化を促進し、食欲を増加させます。
これらはアルコールによる好影響です。
なので、どのようなお酒を飲んだ場合にもこれらの効果は現れます。
他にも、お酒それぞれに特有の効果がありますが、それはまたの機会に紹介したいと思います。
お酒に強い人、弱い人
お酒を飲むと、すぐ顔が赤くなる人や、逆になんともなくたくさん飲める人などが居ます。
なぜこのような個体差が生まれるのか?という話です。
分解工程の説明で触れましたが、アルコールを分解するには段階的に2種類の酵素が働いています。
それらの働きの強さ、弱さは、個体差があります。
a.アルコールデヒトロゲナーゼ(以下、アルコール脱水素酵素)の働きが強い
b.アルコール脱水素酵素の働きが弱い
c.アルコール脱水素酵素が働かない
d.アセトアルデヒドデヒトロゲナーゼ(以下、アセトアルデヒド脱水素酵素)の働きが強い
e.アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い
f.アセトアルデヒド脱水素酵素が働かない
以上のa~c、d~fが掛け合わさることで、お酒が強いor弱いが作られます。
一般的にお酒に強いと言われる人はd(アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが強い)の要素を持つ人です。
毒性の強いアセトアルデヒドを迅速に分解できるため、その毒性を受けることが少ないです。
しかし、実際には前段階のアルコールの影響を多分に受けてしまいます。
アセトアルデヒドによる悪酔いをすることがない為、「酔わないからたくさん飲める」と勘違いし、ついつい飲みすぎてしまうのです。
結果的に、日本人のアルコール依存症の9割がこの要素を持つ人となっています。
強い=たくさん飲める ではなく、アルコールによる酔いの影響は受けてしまっていますので、ほどほどにしましょう。
e(アセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い)のタイプの人は、アセトアルデヒドの分解が追いつかず、長時間その毒性に晒されてしまいます。
結果、悪酔いをするだけではなく、咽頭がんや大腸がんなどの飲酒習慣と関連すると言われる病気にかかりやすいと言われています。
後述する「お酒の適量」を参考に、飲みすぎないようにすることが重要です。
f(アセトアルデヒド脱水素酵素が働かない)のタイプの人は、お酒を飲んではいけません。
アセトアルデヒドの毒性に、極めて長い時間晒されてしまいます。
分解する能力がない為、毒性を保有したまま体内を駆け巡り、結果的に尿として排出されるのを待つしかありません。
以上、e、fについては遺伝子の個体差からくるものなので「たくさん飲めば慣れる」という話にはならないようです。
「飲めば次第にお酒に慣れる」という声を耳にしても、信じてはいけません。
お酒の適量とは
最後に、適量とされる飲酒量についてです。
厚生労働省の定めたお酒の適量は、『1日平均純アルコール換算20g』です。
以下、引用です。
『酒のラベルには、中に含まれるアルコールの度数が書かれています。この度数は、体積パーセント(%)を意味します。
度数5または5%のビールとは、100ミリリッター(mL)に、純アルコールが5mL含まれているビールということです。
通常、純アルコール量は、グラム(g)で表わされます。5%のビールの中ビンまたはロング缶1本(500mL)に含まれている純アルコール量は、アルコールの比重も考慮して、以下のように計算します。
500(mL) × 0.05 × 0.8 = 20(g)
酒の量(mL) × 度数または% / 100 × 比重 = 純アルコール量(g)』
実際これではわからないので、目安量はこちらです。
・ビール・発泡酒 5% 中瓶1本500ml
・酎ハイ 7% 350ml缶1本
・焼酎 25% 100ml
・日本酒 15% 1合
・ワイン 12% 200ml ワイングラス2杯弱
想像していたよりも少ないですね。
普段、知らず知らずのうちに適量を超えてしまいがちということが理解できるかと思います。
極力この量以内に抑えることが理想です。
最後に
普段何気なく飲んでいるお酒には、意外にも毒性があるということを知りました。
人それぞれ適量があり、お酒に強いor弱いという体質もあることが分かりました。
ですが、「お酒は悪だ!」ということを結論としておきたいわけではありません。
このようなお酒の特性を理解した上で、お酒を楽しむことが一番の理想であると考えます。
仲間や上司部下と飲むお酒は美味しいですし、コミュニケーションも円滑に取れます。
自分の体がアルコールに対してどのようなタイプなのか知り、うまく付き合うことが重要です。
この記事がお酒の付き合い方を考える一助になればと思います。
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!