箱の世界〜愛が導いた奇跡〜③

World2 行方不明な気持ち

最近、香澄くんがおかしい。
「おはよう。」と声をかけたりすると、やたら顔を赤くして、まるで珍しいものでも見ているかのように驚いたような表情になり『おはよう』と小さめの声で言う。
今までは教室にいる人みんなに聞こえるくらい大きな声で挨拶しながら入ってきていたのに初めは私の顔色が悪くて心配しているのかと思っていたけど薬を飲んだか念入りに確認するようになっていたが、きちんと確認をしていた日も尚、香澄くんの様子は変わらなかった。悩みがあるなら......聞いてあげたい。友達だから。
でも考えてみれば勉強した時少しだけ密室に2人っきりって状態だったことが原因なのかもというせつもある。
苗字呼びを続けようと言われたので、学校では今まで通り"宮槻くん" "松森さん"と呼びあってはいるけど......やっぱりあの時に意識させちゃったのかな。
意識させちゃったなら、申し訳ないけど......。
私は病気だから。
恋とかしたって相手に迷惑かけるだけだし。
これ以上迷惑かける人を増やしたくないよ。

「それでね、香澄くんの様子が最近ちょっと変で......」
ひとまず私は華鈴ちゃんに相談してみることにした。
華鈴ちゃんは「確かに。少しおかしいかもね。今まで通り接してあげれば、すぐ戻るんじゃない、?」
そう言ってくれた。
私は深く考えることをやめて、次から普通通り接していこうと決めた。
これが先週の金曜日の話。
固く決意を決めて登校した月曜日。
今週の土曜日には定期検診がある。
定期検診は月に1回行くことになってて薬をもらいに行くことと最近のことなどを話すカウンセリングなどをお医者さんと行う。
このまま状態が安定すれば病名だけの症状が無いものになるかもしれないと言われている。

今のところ不安なことなんてないし、出来れば普通の子として接して欲しい気持ちもないと言ったら嘘になる。
当たり前だけど、症状がなくなることを常に願っていた。
定期検診のことを考えていたらあっという間に学校が見えてきて......
いつも通り教室に向かう。時間を確認して薬を飲んだことも同時に確認する。
教室に入るといつも私より遅い香澄くんの鞄が隣の席にあった。
何か用事があったのだと思い、私はいつも通り授業の準備を始めた。
その時、机の中にいつもなら感じない違和感を覚えた。
中を覗くと1枚の紙が入っていて、そっと私は開いた。

「「放課後、部活の時間に1階にある図書室に来てください。話したいことがあります。」」宮槻 香澄

えっ?香澄くん......からだよね?
なんだろう。話って。まぁ、いいや。言われた通り放課後、図書室に行こう。

授業中はいつも通り......ではないけど、ちょっとおかしい香澄くんのままだけどあの紙については何も言わなかった。
みんなに聞かれるのが嫌な内容なのかな?
そう思うと少し怖いけど......。
香澄くんの名前を使ったいたずらでは無いことを必死に祈っていた。
香澄くんが何も話してくれないからモヤモヤは消えずに放課後を迎えた。
先輩には先生に呼ばれていると嘘をついたけど罪悪感でいっぱいになってしまった。
でも今は、香澄くんのところに行こう。
私はそう思って1階にある図書室へと向かった。
いつもなら勉強している生徒もいるけど、今日はいなかった。用のある香澄くんは当然いたけど。

「香澄くん」と言って近づくと、『瑚々ちゃん』と呼ばれた
『よかった......来てくれて。』
「だって呼んだの香澄くんじゃん。来るよ。呼ばれたら。それで、話したいことってな.
『君が好きだ』
話って何?と聞こうとした私の疑問は香澄くんがいちばん私に言わなそうな言葉でかき消された。
「えっ?すき?私を?香澄くんが?」
まさかそんなと思って香澄くんに聞くと林檎のように赤く染った頬をした香澄くんが目の前にいて、私に向けられている言葉なんだと理解した。
「えっと、友達として好きってことだよね?」
『そんなわけない!!きちんと君をっ......瑚々ちゃんを恋愛対象として言ってるんだよ!!?』
「れ、恋愛って......//」
私は照れたりするよりも先に、あの時意識させてしまっていたことを申し訳なく感じてしまった。
『ごめん。わからない?じゃ、じゃあ、もう1回言うね?』
そう香澄くんは言うと、深呼吸をして
『瑚々ちゃんが好き。俺と付き合ってください!!』
香澄くんは顔を真っ赤にしながら恋愛に疎いという肩書きがついてもおかしくない私にもわかるような言い方で言った。
「あ、あの......お付き合いって何をするお付き合いのこと?」
勘違いしていたら嫌だから確認するために私はそう聞いた。
『デートとかする方のお付き合い。』
香澄くんはあっさり答えた。
『あと、告白してお付き合い申し込むやつで何があるのw?』
と、苦笑しながらも
『返事、今すぐじゃなくてもいいから考えておいてくれる?』と優しく言ってくれた。
「うんっ!考えてみる。あ、じゃあ部活、戻るね。」
と言って私は図書室を出た。
私はその後部活に戻ったものの、体調が優れず早退させてもらうことにした。

ジリリリリリ......耳の上で目覚まし時計が振動しながら私の部屋に鳴り響く。
もう、朝......か。
私はそれをすぐに止めて、布団から起き上がった。
昨日のことがあったからか、質のいい睡眠をすることは出来なかった。
私だって、あの時は部活に戻ることを口実にあの場を去れたけど恋愛経験は皆無以下だと言えるレベルでしてこなかった。
自分から恋に落ちることもなかったし、誰かから告白されることも。
仮に病気のことを言ってまだ前の学校に通っていたら、皆私に気を使ってきていたはず。
そんな関係で私は友達を作りたくなかった。
生きてられればそれでいい。そう自分に言い聞かせて。
今日。どんな顔で香澄くんに会えばいいんだろう。
その時、部屋の外からお母さんの声が聞こえた。

「瑚々ーー?起きてるなら支度してご飯たべちゃってぇー」

そうだった。いくら学校まで徒歩10分で行けるからと言ってこんなことをして時間を過ごしていると遅刻してしまう。
私のお母さんは引っ越してから今までより朝早い仕事になったから私たち家族はそれに合わせるように早起きを心がけることにした。
部屋を出てすぐ、私にはあるものの香りが鼻をくすぐった。
この香りは......ハニーバタートースト!!!

1人心の中で飛び跳ねながら階段を下りると、キッチンにいるお父さんと目が合った。
「お父さん、おはよう!今日はハニーバタートーストだよね?」
『瑚々おはよう。今日は好きなものにしといたよ。 』
私が大好きなハニーバタートーストは親戚の中でも好みのとおりに焼けるのがお父さんと従兄弟のお兄ちゃんしかいない。
久しぶりに従兄弟のお兄ちゃんのも食べてみたいなぁ。
そんな、トーストのことを考えながらトーストを頬張っているとあっという間に目の前のお皿がからになった。
そろそろ出発の時間が近づいてきたので私は髪を結って家を出た。
ハニーバタートーストのおかげで昨日のことなんてすっかり頭には残っていなかった。

教室に着き、机にカバンを置くなどいつも通りの動作を繰り返していると少しずつあることが思い出されつつあった。
「おっはよー!瑚々。」
「あ、華鈴ちゃん、おはよう。」
ちゃんと笑えてたかな。でも良かった。香澄くんじゃなくて
『松森さん、おはよう。』
安心したのもつかの間、隣からは明るくて昨日のことをなんとも思ってないような香澄くんが話しかけてきていた。
「あ、お、おはよう。宮槻くん......」
やばいいいいい!こんなあからさまにおかしなへんじ!
「どしたの。瑚々。何かあった?」
まだ、ホームルームまで時間がある。昨日のこと、華鈴ちゃんに話してみよう。
「華鈴ちゃん!ちょっと!!きて!!」
「え!?ちょ、瑚々......!?」
少々、強引に逃げるような態度しちゃったけど、後で誤魔化しとけば大丈夫だよね。
「ねぇ、瑚々?どうしたの?」
気がつけば私は体育館に繋がる通路に来ていた。
「あのね、話したいことがあって......」
「うん。」
「実はね......」
それから私はゆっくりと昨日のことを話した。
華鈴ちゃんは、時々相槌を打ちながら私のペースで聞いてくれた。
「それで、さっき、話しかけられて戸惑ってしまった。と。」
「う、うん。」
「まず、瑚々、あなたは少し落ち着いて。今はホームルームが始まっちゃうとあれだから教室に戻ろ。で、今日はできるだけ宮槻と関わらない過ごし方をしてみて。」
「わ、わかった。」
今日は英語がなかったはずだからペアで学習することはなかったはず......。
いつも、香澄くんに話しかけられてる女子のように今日は過ごそうと決めた。

教室に戻ると同時にチャイムが鳴り、その30秒後くらいに担任の先生が入ってきた。
「今日のホームルームは虹中祭についてです。」
先生がそういった途端に教室がざわめき出した。
体育祭と文化祭どっちだろ!と話している声も聞こえてきた。
「さっき、あった朝の会議で、今年の虹中祭は......文化祭に決まりましたーー!」
先生のその一言でまた教室が騒がしくなった。
体育祭が良かったぁぁぁー。と悔やんでいる子もいれば、出し物について話を始めている子もいる。
「それで、今日は出し物のアンケートを取ります。周りの人と相談せずにあくまで、意見として書いてください。うるさくなったら、先生が勝手に決めます。」
そう言った途端にコソコソ話しているグループも静かに書き始めた。
そして、ホームルームはあっという間に終わり、先生が教室から出ていった。
1時間目の授業準備をしていると華鈴ちゃんが駆け寄ってきた。
「瑚々ーー!瑚々はなんてかいたー?」
アンケートのことかな......??
「私は、無難にカフェって書いたよ。」
「すごい!私もカフェって書いたよ!まぁ、コスプレってのもついてるけど♡」
以心伝心してるーー!って騒ぎながら1時間目の移動教室へと向かった。
それからの一日は毎日が早く過ぎていって、私が告白されてから2週間が経過した。
さすがにそろそろ返事待たせすぎだろうか。
でも、なんで、私なんだろう。というそもそも論に辿り着きつつあるから返事を考え始めた。

..................もりさん!!松森さん!!
トントンと肩を叩かれて気づいた。
「えっ!?あ、はい!!」
「大丈夫?なんか顔色悪いよ?」
「あ、はい。大丈夫です。」
「一生懸命準備してくれるのはいいけど無理はしないでね」
「はい。気をつけます。」
先生に注意されちゃった......でもたしかに最近頭痛感じることが多い。
つぎの定期検診で話してみようかな。
「瑚々!!次こっち手伝って!!」
「はぁいーー!」
ただいま、虹中祭の準備中。
2年2組の出し物は、メイド&執事喫茶です。
接客する人はもちろん、お客さんと直接関わらない人も可愛い衣装を着ることができる。
そして、虹中祭の日に告白の返事をするつもり。
「松森さーん!衣装試着してー!」
「はーい!」
「じゃあ、ここで。私たち更衣室の外にいるから着れたら出てきてね。」
「うん。わかった。」
そう言って、私は更衣室になっている教室に入った。
早速試着しようと袋から取り出した瞬間。
私は絶句した。
だって、中に入っていたのは......
で、でも、皆同じもの着るし、他の人も待ってるから。
そう自分に言い聞かせて素早く試着して外に出た。
「え、松森さん?」
「は、はい。」
みんな唖然と私を見てるけど、やっぱり似合わないよね。
「め、めちゃくちゃかわいいいいいい!!」
「え、ほ、ほんとに??」
「うん!自信もって!!あ、宮槻くーん!ちょっと!」
え、ちょ、香澄くん呼ぶの!!!?
『え.......っと、松森、さん?めちゃくちゃかわいい。』
え?
そんな、どストレートな。
『あ、ご、ごめん!か、可愛くてつい。』
「ほら!宮槻くんもそう言ってるし、大丈夫!」
「う、うん。」
「じゃあ、着替えてきてもらって大丈夫だよ。これで、作るね。寒い中ごめんねえ!」

そう、私が今着ているのは、袖が八分丈くらいなのに肩がぱっくりと出ていて、スカートが制服より短い膝上くらいのミニワンピース。
そりゃ寒いよwww
再び更衣室に戻り、衣装を脱いだ。
そして、教室に戻り、私は準備を進めた。
いよいよ、明後日の土曜日!


あっという間に土曜日になり、楽しみにしていた虹中祭当日
私はいつもより早く来て、香澄くんに手紙を書いていた。
"今日の放課後"

「「香澄くん、ずっと返事を待たせてごめんなさい。今日。虹中祭終わったあとの放課後、図書室で待ってます。」」
松森 瑚々

これで、よし。
香澄くんが来る前に机に入れておこう。
まずは、今日の虹中祭!!思いっきり楽しむぞ!

香澄side

驚いた。学校に来て準備を進めていた時に思いっきり椅子に足をぶつけてしまった。
いや、そんなことはどうでもいい。
それよりも......
俺にとって、いちばん愛しい存在からの手紙が机の中に入っていたのだ。
どうしよう。気持ちが追いつかない。
いい返事がもらえるか、ではなく俺と同じ方法で呼び出そうとしてくれることが可愛くて仕方なかった。
今日は、瑚々ちゃんが転校してきた時にも言っていた虹中祭。
俺の任務は、ただ1つ。
"校外から来る人から可愛い瑚々ちゃんを守ること!"
同じキッチン担当になるために女子からのおねがいを必死に断ったんだ。
キッチンでさえ、危ないことで溢れているのに、そこに俺以外の奴といるなんてもってのほか。
包丁で手を切らないように。とか、火やお湯で火傷しないように。とか。
目に見えるところにいるだけでもしもの危険から瑚々ちゃんを守れるのだ。
あんな、か弱そうな瑚々ちゃんに傷ひとつ付ける訳にはいかない。
だから、全力で守るんだ!!
そして、楽しく今日の虹中祭を終わらせる!!
返事を聞くためにも!!!

よし。気合い入れていこう。
瑚々ちゃんが、大好きな俺にしか出来ない任務。
全うしてみせる!!!
                                                                      香澄side fin

ピンポンパンポーン♪♪
校内放送のアナウンスが鳴るといっきにお客さんが教室に入ってくる。
「いらっしゃいませー!喫茶すまいるにようこそ!何名様ですか?」
接客担当の子達がお客さんをどんどん教室に案内していく。
と同時に、
「カフェオレとミルクレープ1つずつ!」「5番席にいちごムースとストロベリーティー!」
などと、注文の声が殺到する。
「あわわわわ......えっと、まず私はどうしたら。」
どんどん目の前に置かれていく注文内容が書かれた紙を見て気が遠くなりそうになる。
『瑚々ちゃん、大丈夫?無理してない??』
目立つことが苦手な私を気遣って小声で香澄くんが言った。
「あ、うん。なんとか。でも、何したら......」
せっかく、開店準備とかしてたのに。
『じゃあ、瑚々ちゃんは飲み物を作ってくれる?俺が食べ物をつくるね。』
「えっ、いいの?迷惑じゃ......」
『迷惑なわけないって!!瑚々ちゃんのことで迷惑なことなんてないよ。むしろ、大歓迎!』
「ありがとう。」
こんな時まで私のことを考えてくれる香澄くん。優しいな。
そう思って、じっと見てると、香澄くんの顔がみるみる赤くなっていく。
「香澄くんこそ、大丈夫??顔赤いけど。」
『瑚々ちゃんが見てくるからでしょ。忘れてもらっちゃ困るけど、俺は瑚々ちゃんが好きで告白してる身なんだよ?可愛い顔で見つめてこないで。』
「かっ、かわいくなんか......ないもん  」
『はぁ。だからそういうところ。』
「あ......ぅ、ご、ごめんなさい」
『ダメだ。これじゃ自分で自分の首を絞めてるみたい』
「よし、頑張ろ!!」
『うん。そうだね。』
「えへへ。よろしくお願いします。」
『やっばい。その顔は反則......』
消え入りそうな声で言った声は私の耳に入る前に空気となって消え去った。

そして、放課後。
「どう話していいか分からない。どうしよう。なんて言ったら」
呼び出しておいて遅れるのは常識外だから早めに来たは言いものの返事をどう伝えればいいかが分からない。
病気のこと......は、教えたくない。
『瑚々ちゃん』
「み、みやつき......く、ん。」
急に名前を呼ばれてびっくりしちゃった。音立てないで入ってきたのかな。
『ごめんね。待たせて。』
「う、ううん!」
『そっか、なら良かった。そ、それで、返事もらえるんだよね?』
「あ、うん。」
『じゃあ、後悔しないようにもう1回言わせて欲しい。好きだよ。瑚々ちゃん。』
「ありがとう。香澄くん。......でも、ごめんなさい。私、香澄くんの気持ちには応えられない。」
『好きな人がいるの?』
断られて少し涙声の弱い声で香澄くんは聞いてきた。
「ううん。そうじゃないの。私、恋愛経験ほんとになくて、人のこと好きになったことも無いの。香澄くんは私のこと好きって言ってくれてるのに、私はそうじゃない。同じ気持ちじゃないのに付き合うなんてできないって思ったの。」
『そ、それはっ......』
付き合ってしまったら、すぐ病気のことはバレるだろう。そう思った私なりの考え。

目の前にいる香澄くんはいかにも。そうだよね。みたいな顔で私を見ていた。
『正直に言ってくれてありがとう。』
こんな時にもお礼言うなんて......香澄くん心広すぎるよ。
『でも、俺はこれからも君のこと好きでいると思う。それでも......いいですか?』
「うん。ありがとう。」
『じゃあ、俺帰るね。』
「バイバイ。香澄くん。来てくれてありがとう。」
お互いに挨拶をして私たちはどちらも涙1つ流すことなく......香澄くんは涙目だったけど、図書室をでた。

そして、振替休日を終えた火曜日。
香澄くんの告白を断ったことは華鈴ちゃんにちゃんと伝えた。
初めは驚いてたけど、分かってくれて。
香澄くんも今まで通り接してくれてる。
今日はいつもより遅く家を出たからギリギリだった。教室に入ってすぐチャイムなって先生が入ってきたから。
ふぅ、危なかった。

「おはよう。みんな。今日は大事な話があるからよく聞いてね。」
大事な話......?
「来週から1週間月曜日から先生、遠いところに出張に行くことになって、1週間非常勤の先生と過ごしてもらうことになったの。それで、その先生が明日自己紹介に来てくれるので覚えておいてくださいね。」
いつもより長めの先生の話を聞いて朝の会が終わると、みんなが一斉に喋りだした。
「瑚々ーー!!」
「どうしたの?華鈴ちゃん。」
「明日めちゃくちゃ楽しみだねーー!」
「どうして?」
「非常勤の先生ってめちゃくちゃイケメンって噂なのー!」
「そうなの!?華鈴ちゃん見たことあるの?」
「ううん。見たことはないんだけど、私が入学する前から噂で聞いてた!!まさか、会えるなんて......」
目がハートになってる......。
「そう言われると明日が楽しみだね!」
「めちゃくちゃ楽しみぃぃ!」
他校に彼氏さんいるのに......華鈴ちゃん。
でも、そんな華鈴ちゃんも言うんだから、相当なのかな。

「「さようなら!!」」
学級委員の声でみんなが一斉に挨拶をし教室を出ていく。
今日は部活がない日なので昇降口が混むだろうと、私はすぐに帰らず教室に残っていた。
「瑚々ーー!そろそろいこー!」
「わかった、!」
部活が別々の華鈴ちゃんとは滅多に一緒に帰れないから部活のない日がすごく楽しみ。
「華鈴ちゃん。最近、彼氏さんとはどう?」
「え?珍しいね。瑚々が、恭(きょう)くんのこと聞くなんて。もうめちゃくちゃ幸せだよ!喧嘩なんてしないし、毎日大好きって伝えてくれるし、最近なんて、ハグしてもらった!!毎日ラブラブよ!!」
華鈴ちゃんの彼氏さんは、恭弥(きょうや)さんって言うらしい。前に聞いた。
前は、恭弥くんって言ってたのに......そうとう楽しそうで話を聞いてる私も嬉しくなる。
「それよりさ!!楽しみなのは明日だよね!!」
「非常勤の先生?うん!!楽しみ!!」
どんな先生が来るんだろう......楽しみだなぁ。

                                                                        次章へ続く......