【Hack To 8x9】#05 辻先生をハック
8×9のあらゆるものをハックしていく『Hack To 8×9』第5回目は辻先生にお話を伺います!
“プログラミングのしくみは現実世界に似ていて面白い”
ー本日はよろしくお願いいたします。それでは簡単に自己紹介をお願いします!
辻 よろしくお願いします。辻 雅啓(つじ まさひろ)と言います。主に六甲道校でインストラクターをしています。職業はエンジニアでプログラミング歴は今年で34年になります。
ーありがとうございます。プログラミング歴34年は凄いですね!なぜプログラミングを職業にされたんですか?
辻 うーん…なんでしょうね…。強いて言うなら就職活動がきっかけだったと思います。大学在学中に特に就きたい仕事や希望の就職先もなく、仕事どうしようかなと迷っていた時にふとプログラミングが頭を過ぎって。当時授業で週1ぐらいの頻度でSmallTalkやCOBOLを習っていたのが少し面白かったんです。
なので、あらためて振り返ってみると「当時面白いと思っていたことで仕事を選んだ」という感じかもしれません。
ーなるほど〜、では最初からプログラマーの道を選ばれたんですね。
辻 はい。ただプログラマーで就職したと言って良いかは微妙ですね・・・。私が通っていた大学は理系や情報系ではなく商業系でプログラミングはちょっとかじった程度ですし、真剣にプログラミングの勉強をはじめたのは新卒入社後でしたから。
ーそうなんですか!辻先生がプログラミングできない姿は想像できません(笑)
辻 妙な話ですが、当時は今と違ってプログラマーになりたい人は誰でもなれたんです。今でこそ小学生が1人1台パソコンを使う時代でプログラマーは人気職業ですが、私が就職した80~90年代は自宅にパソコンを持っていたらオタク扱い、仕事でプログラマーを目指すなんてよっぽどにマニアックな人だけだったんです。
それに今のようにオープンソース(※)やSaaS(※)が当たり前の時代でもなかったので、必要とされる技術や知識は企業毎に違ってクローズドなものでした。だから企業側もエンジニアが必要なら未経験者を一から育てるって感じで誰でも就職できたんです。
オープンソース … ソースコードを商用・非商用問わず利用・修正・配布ができる開発手法。誰かが作成したプログラムを他の誰かがより良いものへと改良し、さらにそれをまた誰かが改良といったように共創しながら技術向上が見込める
SaaS … Software as a Serviceの略で特定の業務作業をサービス化したもの。Office365、WorksSpace、Teams、freee、Zoom等、近年のWebサービスはほぼSaaS。
ー確かに…。家にパソコンなんてなかったですね。さきほど大学の授業でプログラミングが面白いと仰ってましたが、どの辺りに魅力を感じたんですか?
辻 数値の計算などが「自動」で「繰り返し」処理され続けるところですね。今の時代はエクセルを使えばセルが自動計算されたり、複雑な計算であっても用意された関数で簡単に処理できますが、当時は計算しようと思ったら計算機で毎度入力していくのが普通でした。それがプログラミングだと書き込んでおいた通りに自動で計算されていくので見ていて奇妙で楽しかったんです。
ちょうど今の時代で例えると、AI技術で自動車が自動走行したり、スマホで自撮りした写真を加工アプリで違和感なく修正できるのを目の当たりにする感覚に近いかもしれません。
ーなるほど〜!AIで例えられると分かりやすいです!盛れるカメラとかは使っててホントどうやってるんだろうって思いますね…。
辻 あとはオブジェクト指向(※)の考え方が面白いというのもありましたね。オブジェクト指向は、、どう説明すれば良いのかな…。
オブジェクト指向 … プログラミングをデータやまとまりに応じて抽象化して扱う概念。データをProperty(プロパティ)、処理をMethod(メソッド)、そのまとまりをClass(クラス)としてプログラミングを分かりやすく効率的に作成していく
伝わるかわかりませんが、例えば港に貨物船が停まっていてクレーンがコンテナを運んでるというのを見たことがあると思います。荷物を運ぶのにコンテナがなければものすごく不便っていうのは想像つきますよね?
ーわかります!コンテナに入ってなかったら荷物の積み方変えないといけないから大変そうです…!
辻 ですよね。運ぶものが車、自転車、家具、その他なんであってもコンテナという同じ形に揃えることで同じ方法で運ぶことができます。オブジェクト指向もそういうところがあって、Class(クラス)って言うんですけど「すべて同じ型に入れておけばまとめて扱える」というロジックが、効率化を考える時の現実世界とリンクして面白かったんですね。
ーなるほど〜!プログラミングを学ぶと普段の生活の考え方も変わってきそうですね〜。
“利用者に喜んでもらえることがやりがい”
ー辻先生がエンジニアとして普段されているお仕事を教えてください。
辻 最近だとお寺のスマホアプリ開発をしていました。毎朝特定の時間になったら説法が鳴ったり、アプリからお寺関連の情報にアクセスできたりするアプリです。
ーお寺のアプリなんてはじめて聞きました…。誰をターゲットに作られてるんですか?
辻 主にお寺とその檀家さん向けでしたね。檀家さんに伝えたい事がある場合、お経を上げに来るタイミングや電話でのやり取りをするのが主流だと思いますが、今は世代も変わって密な付き合いは離檀にも繋がるようで…。その代替手段としてアプリで情報共有し檀家さんとつながりを維持していくという使われ方をしていました。
ーへ〜!お寺さんもIT化する時代なんですね!
そうですね。あとはIT化というお話で言うとおしぼり配達会社の配送システムも作りましたね。配達ルートの記録や配達量の集計、請求書の発行など全てアナログで行っていた業務を自動化して生産効率を上げるといった感じで。
ーいろいろなお仕事をされているんですね!辻先生のご専門は何になるんですか?
辻 専門と言われると難しいですね…。特定の分野に特化してやってきたわけではないですから。経験が多いということなら企業の社内システムの開発とかでしょうか。配送システム、販売管理システム、決済システム、リース関係のシステム等いろいろやりましたね。
ー今まで手掛けられたお仕事の中で「これはすごい!」というのはありますか?
辻 凄いの基準が難しいですね…。規模で言うなら開発費10億円の案件に関わったこともありますが、プロジェクトの規模よりも、利用者の方々にどれだけ喜んでもらえたかの方が記憶に残っています。
そういう意味では販売管理業務で職場で事務員がすぐに辞めてしまうような問題のある業務をシステム化することで業務改善することができた案件は今でも自慢の仕事です。利用者の方にすごく喜ばれて職場の雰囲気も良くなったとお礼の言葉までいただいて。
なので私としては、利用者の方と直接お話をしてフィードバックを得られるようなプロジェクトの方が魅力を感じるし楽しいですね。
ーありがとうございます。辻先生のお人柄がこのエピソードだけでも分かりますね!
“学ぶこと自体を目的にして楽しむこと”
ー話は変わりますが、辻先生が学生の頃にもっと勉強しておけば良かったと思う教科はありますか?
辻 ないですね。生徒からも聞かれますが、勉強は大人になってからでもできるので。必要だと思った時に必要なことを勉強すればいいかなと。ちなみに今は数学の勉強をしています。
ーやりたい時が始め時ってやつですね!勉強したくないなと思っている子ども達にとっても「やろうと思ったらいつでもできる!」という良いお話だと思います。
辻 そうですね。こういう話をすると子供達に向けた内容に聞こえてしまいますが、私は大人子供関係ないと思っています。絶えず時代は進んで社会は変化していくので、大人になってからも勉強すればするほど分かることが増えて、楽しみが増えていくと思いますね。
ーそう言えば辻先生が数学を勉強しているのは意外でした。以前から数学プログラミング講座を開講してらっしゃるのでご専門なのだと思っていました。
辻 専門ではなかったです。ここ数年AIに興味を持ったものの機械学習のアルゴリズムを理解するのに数学の知識が必須で…。勉強しているうちに、数学のほうが面白くなってきたりして(笑)。
ー素晴らしいですね!学ぶ目的を明確に持つと学ぶモチベーションも変わってきそうですね。私は今から数学を勉強するのは無理そうです…。
辻 学生のうちはゴールが必要なのでどうしても受験や資格のため、あるいは特定の仕事につくために勉強することが多いと思います。でも何かのために勉強するのではなく勉強すること自体を目的にしたほうが楽しくなるように思うんです。登山で例えると登頂したからといってお金が稼げたり偉くなれるわけでもないです。でも登頂したら、その人にしか見えない景色を見ることができます。学習もそうで何かを学習したら今までに見えなかった景色が見えるようになります。そうして世界の見え方が変わっていきます。
ー確かに目の前の物を1つまた1つと学び続けると、知識がだんだん繋がっていって鳥瞰図みたいに広く見渡せる感じになる時ありますね!
目の前に受験や就職が迫っていると詰め込むような学習が必要になるときもあると思いますが、少しでも勉強する楽しさや理解できた時の感動を味わってほしいです。人生うまくいくためとかではなく、楽しむために勉強が必要捉えることができると理想ですね。
“仕事を心から楽しいと思えるようになったのは子供達のおかげ”
ー好きこそ物の上手なれって言いますもんね。ところで辻先生の好きなものや趣味はなんですか?
辻 散歩は好きですね。ポートアイランドに住んでいるんですが、海と山がよく見えて歩くだけで癒やされます。道路は綺麗に区画分けされているし電柱も少なく緑や公園が多いので散歩していて気持ち良いんです。
ー毎朝散歩されてるんですか?
辻 ほぼ毎日1〜2時間くらいしていますね。同じ場所でも季節や日によって景色が変わるのが好きで、特に朝や夕方の日光が変化する時間帯が好きです。あ、雨の日なんかも好きですね。傘をさして海や船を眺めてるだけでも波や雨音で癒されます。
ー風流で良いですね〜。今現在、趣味やお仕事以外で注力されていることはありますか?
辻 月に1回ですがCorderDojo Nadaを開催して子どもたちにプログラミングを教えています。8x9はカリキュラムがある「授業」で、CorderDojoは「クラブ活動」ととらえて活動しています。
ープライベートでも子供達にプログラミングを指導してらっしゃるんですね!8x9では現在どのコースで指導されていますか?
辻 六甲道校を中心に初級Ⅰから中級Ⅱコースまで全て担当しています。あとはスポットですがAIプログラミングや数学プログラミング講座も主催しています。
ー幅広く指導されてらっしゃるんですね!エンジニア専業だった頃と今とでご自身に何か変化はありますか?
辻 やっぱり一番は私自身がプログラミングを心から楽しめるようになったことですね(笑)。
子供達のプログラミングが上達をしていくのを見ることができるのは嬉しいですし、学校で今日何があったとか、ここが分からないとか、子どもたちの話を聞くのも楽しいです。仕事でも利用者さんの声を聞きながら開発していくのが好きだったので、私にあったプログラミングのお仕事はこれだなと思えるようになりました。
ーうわー、素敵です!逆にプログラミングの授業で難しいなと思うことはありますか?
辻 いつもですね。授業終わってからああすればよかった、こう言えばよかったと思いながら駅まで歩いています。子供は年齢によって基礎学力に差がありますし、性格も一人一人違うので教えるのが本当に難しいなと感じます。なので普段の反省を活かしながら指導方法や対応力を日々改善していくしかないなと思ってます。
ー授業をされている時に大切にしていることはありますか?
辻 生徒の事をできるだけ多く覚えるようにしています。顔、名前、習熟度だけではなく性格や話をしてくれた内容なども覚えるようにして、出来る限り生徒一人一人に合った指導ができるように意識しています。そうやってその子と向き合った結果、これが今必要な学びだと感じたらカリキュラム外のことでも指導したりしますね。
ーこれから何か挑戦されたいことはありますか?
辻 これからというか昔からずっと変わらないですが授業を1回1回「楽しかった!」と思ってもらえるようにしたいですね。「役に立つから」「将来のためになるから」と老婆心で指導するのではなく「今」が面白くて楽しいと思ってもらえる授業にするように心がけていきたいです。
“自分にとって楽しめるもの、幸せなものを探してほしい”
ーそれでは、これからの子どもたちに必要だと思うことを教えてください。
辻 プログラミングと関係ない話になってしまって恐縮ですが優しい気持ちを育むことだと思います。「人の話をきちんと聞く」「自分の気持ちを言葉にして伝える」「人の気持ちを想像できる」そんな思いやりや優しさを持っていたら、必ず社会の中で必要とされる人間になります。
勉強はもちろん大切ですが、本気で取り組む気持ちが芽生えれば後からでもできます。だから子供の時にしかできないような、友達と遊ぶとか、なにかに没頭するだとか、そんな体験をたくさんしてほしいですね。
ー学力以前の人として大切な部分ですね!プログラミングの分野ではいかがですか?
辻 そうですね、8x9ではいろんな授業があるから色々やってみて面白いなと思えるものを見つけてくれると嬉しいですね。プログラマーどうこうはあまり考えなくていいと思います。夢中になれることを見つけて、アイディアを形にしたい時にパソコンやプログラミングを駆使したり、先生達を頼ってくれるなら言うことはありませんね。
ーありがとうございます。では、最後に子どもたちに向けてメッセージをお願いします。
辻 先程の話と重複しますが何でも良いので「これだ!」と夢中になれるものを見つけてほしいですね。いろんな経験をしていくうちに、面白くないこと、飽きることも出てくると思います。面白くないことは無理に続けなくていいので、どんどん他のことをやってみて「お、これは続くぞ」というのを探してみてください。
それで時々振り返ってみて、今やっていることを続けていったら、楽しい人生になるかな?幸せになれるかな?と考えてみてください。周りの人の意見もききつつ、しっかり自分の頭で考えて、ときには方向転換したり、試行錯誤していってください。
ー温かいメッセージをありがとうございます!それでは先生方からいただいている決め台詞をお願いします!
❝「面白さ、楽しさ」をハックする!❞
辻 何事も上達すると面白くなってくるもので、前はできなかったことができるようになると急に楽しくなりますよね。8x9ではプログラミングに限らず「面白い!」「楽しい!」「もっとやりたい!」を見つけて興味を持ってくれると嬉しいです。
ー辻先生、本日はどうもありがとうございました!
今回は辻先生のインタビューでした!次回のHackTo8x9は代表取締役の森田をhackする予定です!どうぞお楽しみに(^-^)ノ
(取材:藤田 /執筆:大原・藤田/ 撮影・デザイン:岩崎)