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クトゥルフ神話TRPG シナリオ「種富神社」

#同じ映画から作る千差万別TRPGシナリオ
#ムビシナ
ゲームシステム:クトゥルフ神話TRPG
シナリオ名:「種富神社」
舞台:現代日本
プレイヤー数:3名
想定プレイ時間:3~4時間

*イントロダクション
 優しい村人の住む美しい集落「種富村」。古くから19年ごとに行われてきたとある「儀式」のために探索者たちはこの村を訪れた。しかし、探索者たちは知らない。その「儀式」が彼らを狂気の深淵へと導くものであることを……。

*シナリオコンセプト
「ミッドサマー」のような善意に溢れた人々のコミュニティに垣間見える不穏さと常識とはかけ離れた独自の文化を感じてもらえるように作りました。それを意識したキーパリングを期待します。

*ハンドアウト
探索者(1)元派遣社員・女性
考古学部を卒業したが就職活動に失敗、派遣社員として糊口をしのぐ毎日だったが、運悪く派遣先の会社が倒産、失職したため慌てて求職中。このままでは来月の家賃も払えないかもしれない。
シナリオ中の展開:「鈴の担い手」に選ばれ、儀式への参加を余儀なくされる。苦しい元の生活と村の温かい暮らしのギャップを感じる。
探索者(2)新聞記者・性別自由
19年前に行方不明になった新聞記者の父親が最後に立ち寄ったとみられる当地を取材名目で訪れた。
シナリオ中の展開:父親と同じ名前の18歳の青年と出会う。彼は「自分の前世も新聞記者だ」と探索者(2)を歓迎する。青年は「前世の持ち物」として、探索者(2)の父親の遺品を所持している。遺品のメモに書かれた癖があり読みにくい父の文字を解読した探索者(2)は人身御供を伴う儀式について知る。
探索者(3)大学教授・男性
考古学の教授だが、世間から白眼視されているオカルト研究にのめりこんでいる。この村で行われる奇祭でかなり特殊な儀式が行われていること、村以外の出身の女性が歓迎されることを知り、折しもかつての教え子の探索者(1)が休職中であることから共にこの地を訪れることにした。大学内での人事改革により、早急に研究結果を出さなければ失職するかもしれないとの焦りがある。
シナリオ中の展開:村の危険性に気づくことができる一方で、自らの研究ため、儀式を見届けなくてはならない。

*ストーリー(あらすじ)
 日本の僻地に位置する寒村に訪れた探索者たちは、歓待され祭にも参加することになります。前夜祭で祭の要職となる「鈴の担い手」に選ばれた探索者(1)は、「井戸の儀式」と村人たちが呼ぶ儀式での大役と委ねられます。役目を果たすことで探索者(1)は正気を保てなくなるかもしれません。また、他の探索者たちは生贄とされるかもしれません。逃亡を図る場合には村人たちの怒りを買うことになります。シナリオは村人に従い儀式を果たす展開と、逃亡を図る展開があり得ます(探索者によって行動が分かれるかもしれません)。逃亡に失敗した探索者は儀式の前に井戸に投げ込まれ、瀕死の状態で儀式を迎えることになります。

*種富村について
村は人口200人にも満たない小さな集落ですが、一般的な寒村と異なり高齢化があまり進んでいないようで幅広い年齢層の男女が暮らしています。快活で友好的な村人たちは探索者たちを温かく迎え、宿泊場所や食事を用意して手厚く歓迎します。
村の子供たちは出生後、親元から離れ、村全体の子供として育てられます。子供たちにはそれぞれ「前世の名前」が引き継がれており、前世の記憶を継承できるよう遺品や写真等を身近に置いておく風習があります。
村は農作には適さないような坂や岩の多い地形にあります。携帯電話の電波は入らず、警察署や駐在所はありません。観察力のある探索者は病院や医院もないことに気づきますが、その割に村人は総じて肌艶もよく健康そうです。村の中心に高台があり、鳥居をくぐった坂道の上に「種富神社」があります。

*種富神社について
比較的小さなお社と、その裏側にしめ縄で祀られた枯れ井戸があります。古い神社ですが掃除も行き届いていて、村人が大事にしていることが分かります。お社にある扁額には筆文字が書かれており、母国語(日本語)成功者は「種富尼供羅守(たねとみのあまくらまもり)」と読むことができます。井戸のしめ縄から紙垂にも「天」を上下反転した文字が書かれています(これはシュブ=ニグラスの羊を表す形で、漢字ではありません)。
お社の周りでは子供たちが桶の水を柄杓で撒いていました。目星成功者は水が黒かったことに気づきます。アイディアロール成功者は、水が撒かれたところにいつの間にか花が咲いていることに気づき、SAN判定(成功1失敗1d5)を行ないます。確認しようにも桶は空になっていて、わかりません。子供たちは笑いながら帰っていきます。
お社の中に上がり込むと、祭祀書が祀られています。祭祀書には「井戸の儀式」の祈祷の言葉と、人身御供を要することが書かれています。
井戸については覗き込むとSAN判定(成功0失敗1d3)が発生します。失敗した探索者は井戸から途方もなく嫌な気配を感じ取ります。もし井戸を降りた場合には、一定時間経過毎にSAN判定を繰り返すことになります。

*祭りの前夜
 祭りの前夜、村の集会所にて宴会が行われます。宴会での乾杯前に、村の女たちで「宝探しゲーム」が行われます。宝がすべて見つからないと乾杯ができないので、村の男たちは早く見つけるように囃し立てます。探し物は「刀」と「ひょうたん」と「鈴」です。探索者(1)は村人の誘導もあり、「鈴」を見つけることになります。「刀」を見つけた女は、その刀で手のひらを切り、滲み出た血を両頬に塗ります(多産の祈願になります)。「ひょうたん」を見つけた女は、中に入っている蜜酒(ミード)を飲み干します(長寿の祈願になります)。「鈴」を見つけた探索者(1)は、翌日行なわれる「井戸の儀式」にて「鈴の担い手」となります。

*「井戸の儀式」と村人が呼ぶ儀式について
「井戸の儀式」は19年に一度、夏至の日の正午に、高台にある神社に祀られた枯れ井戸で行われます。「鈴の担い手」はシュブ=ニグラスの力を身に宿し、生贄を捧げることで井戸から豊穣の力を持つ黒い水を湧かせることができます。その黒い水は、痩せた土地にあるこの村を何百年も前から豊かな実りをもたらしてきました。生贄に選ばれることは土地や神との一体化とみなされており、指名された者は名誉と喜びを持って井戸に身を投げることが習わしですが、拒絶する者には村人たちによって説得が試みられ、それでも従わぬ者は井戸に投げ込まれます。生贄になった者の名前は、今後新たに生まれてくる子に名付けられます。なおこの儀式に参加できるのは20歳以上の者に限られます。
「鈴の担い手」は儀式の後、往々にして正気を失うことがありますが、神の化身として丁重に扱われます。
※19年は朔旦冬至の歴法(暦道)の名残。

*「井戸の儀式」のルール的進行
選ばれた探索者(1)は儀式において、宮司に「祝え、祝え、種富尼供羅守(しゅぶにぐらす)」と祈りを捧げながら鈴を鳴らすように指示されます。「鈴の担い手」の言葉に村人たちが唱和します。独特の旋律により、その祈祷の言葉は「いあ、いあ、しゅぶにぐらす」と聞こえます。井戸から黒い瘴気が立ち上り、探索者(1)にシュブ=ニグラスの力が宿ります(POW20への対抗判定を行ない、失敗した場合にはSANを1d6+6失います。成功した場合には1d6失います)。かつてない幸福感に包まれた探索者(1)はその後、SAN判定を行ない、成功した場合には意識を保つことができるので、「伴侶」を選ぶように宮司から指示されます。探索者(1)はPCもしくなNPCから伴侶を選ぶことができます。長時間選ばなかった場合、またはSAN判定に失敗した場合にはSANを1d5喪失した上で、よりAPPの高く、より若い男性のPCまたはNPCをキーパーが選びます。伴侶に選ばれた探索者は村人から井戸に飛び込むよう促されます。拒否した場合には神、土地との一体化するよう説得されますが、それでも拒否した場合には村人たちに担ぎ上げられて井戸に投げ込まれます(この状況から逃げられるかどうかはキーパーの判断次第です)。もし伴侶に逃げられた場合には探索者(1)は更にSANを1d10喪失し、新たな伴侶を選ばなくてはなりません。生贄を捧げる毎に探索者(1)はSANを1d6喪失し、全能力値に1d3-1、クトゥルフ神話技能を+1%します。生贄は一人で十分ですが、探索者(1)が望めば繰り返し生贄を捧げることができます。村人たちは、神の意志として探索者(1)の望みを尊重します。

*村人の宗教観・倫理観
交通の便が悪く、痩せた土地ながら代々「井戸の儀式」によって得られる黒い水によって飢饉や疫病の害から逃れてきた村人たちにとって、現代の倫理観に反する生贄のような儀式も当然のように受け入れられています。村外の価値観との違いは理解しているため、探索者たちが村に対して批判的な意見を述べた場合には穏やかに、だが断固として「私たちの村では誰もが競わずに穏やかに暮らしています。町では競い合い、奪い合い、騙しあいがあり、敗れた者は尊厳も命すら危うい。しかもそれが日常となっていて他人の不幸に目を向ける者は少ない。私たちはこの村の価値を理解しています。だから誰もがこの村のために身を捧げることを恐れません」と反論します。

*シナリオの展開
1. 出発前の探索者たちの導入。特に探索者(1)の不遇な境遇と、それにつけ込む探索者(3)についてシーン描写。
2. 種富村に到着する探索者たち。途中の公共交通機関(バスまたは船など)で乗り物酔いした探索者を介抱してくれる優しいNPC(村人)。
3. 探索者(2)の父親と同じ名前を持つ青年との出会い(上記シーンに登場するNPCを彼としても良い)
4. 美しい村と優しい村民の描写シーン
5. 宴会までの時間、村の散策する探索者たちは神社を訪れる。子供たちの水撒きのシーン。
6. 宴会にて宝探しが行われ、探索者(2)が「鈴の担い手」に選ばれる。
7. 「井戸の儀式」
8. エンディング

*エンディング
探索者(1)が正気を保っていれば村に残るかどうかを自分の意思で決めることができます。狂気に陥っていた場合には村に残ることになるでしょう。
他の探索者たちは生き残っていれば村を出ることができますが、次の「井戸の儀式」が行われる19年後までは生贄になる心配もないので、暮らしやすいこの村に残りたければ残ることもできます。

*あとがき
時間もないなかで即興に近い早さで作ったので、舞台を日本に置き換えただけのあまりヒネリのないシナリオになってしまいました。とはいえ、テストプレイ時には楽しめたので、短時間にコンパクトに遊ぶ分にはそれなりに遊べるのではないかと思います。
(ちなみにテストプレイ時には、ハンドアウトが異なり探索者(1)は女子大生だったのですが、「井戸の儀式」で狂気に陥って逃亡を図った探索者(2)を「伴侶」に指名し、自らも狂気に陥って誇大妄想と幻想に囚われてしまいました。村に残ることを選択しかけたのですが、探索者(3)が「レポートが未提出であること」を説得材料に精神分析を行ない、村から連れ帰るという結末に)

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